ファーストステージ第1節 マッチサマリー(NEC 24-3 クボタ)
![]() ファーストステージ・第1節 プールA この試合の見どころはいろいろあったが、まずは日本代表のNECグリーンロケッツ田村優選手とクボタスピアーズ立川理道選手の日本人SO対決。両選手とも、SOとインサイドCTBのどちらでも起用されるので、日本代表では併用されることが多い。それ故お互いあまりライバルという意識はないのかもしれない。キックでゲームを作る田村選手と隙あれば自らランプレーに転じる立川選手は、そのプレースタイルにも大きな違いがある。 そして、スーパーラグビー準優勝のクルセーダーズのWTBとして大活躍したネマニ・ナドロ選手がまた日本に凱旋してNECのCTBで出場した。キヤノンから移籍したニュージーランド代表キャップ36を誇るクボタのCTBアイザイア・トエアバ選手も、昨季苦しんだ日本の夏場のコンディションは今季どうか、など出場選手に焦点をあてるだけで話題は尽きない。 またチームとしても、昨季のトップリーグでの最終順位が8位(NEC)と9位(クボタ)の対決で、両チームとも開幕から波に乗りセカンドステージはグループAに進出したい。昨季グループBトップで最終順位は9位になったクボタ、トップリーグ9年連続開幕戦で勝利のないNEC、両チームともに勝利を掴んで上位進出に弾みをつけたいものだ。 試合開始。クボタのその意気込みとは裏腹に、SO立川選手のキックオフのボールがタッチラインを越えてしまい、いきなりNECボールのセンタースクラムになった。 試合後の記者会見でクボタの今野達朗ゲームキャプテンが語ったように、クボタは前半ミスとペナルティが多かった。初めて相手の22メートルラインに入ったのが、ようやく前半33分になってからで、しかもこのラインアウトもNECのSH櫻井朋広選手のイーブンボールへの素早い働きかけでチャンスをものにできなかった。 試合最初の得点は、前半14分NECのSO田村選手の一瞬の閃きのゴロパントから生まれた。FWが22メートルラインを越え、SOの位置に入っていたCTBナドロ選手からパスを受けた田村選手であったが、クボタのディフェンスが目の前に迫り体勢を崩しかけていた。そこでゴール左隅にゴロパントを蹴り込んだ。 クボタのWTB伊藤有司選手が処理をもたつく間に、ボールを追ったNECのWTB大東功一選手の手中におさまり、先制トライが生まれた。田村選手のゴロパントも、伊藤選手と大東選手のプレーもどれも紙一重で、まさにボールゲームであるラグビーらしいトライであった(田村選手のGも成功、NEC7-0クボタ)。 「クボタの強いランナーに差し込まれていた」(LO村田ゲームキャプテン)NECのFWであったが、前半の中盤に差し掛かると徐々に本来の姿を取り戻してきた。 このトライ前後から、クボタのFWが「(こちらも)早く取りたくて焦った」(今野ゲームキャプテン)というように、スクラムでの反則が目立つようになる。「取られたらしょうがない。早く10メートル下がって次に備えるしかない」(クボタ石倉監督)というように、クボタは焦りとスクラムでのルール解釈の違いに戸惑っていたのかもしれない。 前半38分、往年の強さを感じさせるNECのFWが、相手22メートルライン付近でターンオーバーした。そしてそれまでキックとパスでゲームをコントロールしていたNECのSO田村選手が、初めてランプレーに出た。ここは勝負所だったかもしれないが、クボタの選手たちは田村の突然のランプレーに意表を突かれたような展開だった。最後はLO小野寺優太選手が右隅に飛び込んでトライ、難しい位置だったがここも田村選手のゴール成功で21-0となる。 ここまで3本のトライとも左隅、左隅、右隅となっていたが、田村選手が難しい角度からのゴールを3本ともすべて成功させることによって15-0ではなく21-0にしたことは、クボタにはこの上ないプレッシャーになったのではないか。 ハーフタイムでは、クボタの石倉監督は「ディフェンスがうちの強みでもあるので、その再確認を行った」。NECの相澤総監督は「同じような実力のチームなので、最後まで気を引きしめていこう」と選手にハッパをかけている。 後半の最初の時間帯は、クボタの攻勢が続いた。しかし「ここで取れなかったのが痛かったし、これが今の実力かもしれない」(今野ゲームキャプテン)というように、NECの粘り強いディフェンスの前にクボタは得点ができない。 NECもNECで、「前半21点差であと4~5点でセーフティリードなので、焦って攻め急いだ」(村田ゲームキャプテン)、「もう1トライをしてボーナスポイントを取りたかった。強気で攻めるのは良いがミスは反省材料」(相澤総監督)というように、両チームともなかなか点が入らない膠着した展開となった。 試合結果は、後半は両チームともペナルティゴールを1つずつ加えてノーサイドとなった(NEC24-3クボタ)。 この試合で無名の素晴らしい選手が活躍した。登録はWTBとあるが、この日はナドロ選手とCTBを組んだNECの後藤輝也選手である。177cm80kg、山梨桂高→山梨学院大出身の新人で、男子セブンズ学生日本代表である。 「後藤が期待以上の動きだった」(相澤総監督) 反撃のできないまま終わった感のあるクボタであるが、敵将相澤総監督も「改めて良いSOであると思った」という立川選手には、気の毒なゲーム展開でもあった。それほどこの日のNECのFWの頑張りが目立つ試合だったのである。 ● 記者会見ダイジェスト ●
クボタスピアーズ ![]() 石倉監督(右)、今野ゲームキャプテン 石倉俊二監督 「今シーズンもよろしくお願いします。NECさんの厳しいディフェンスを打ち破れず、80分間を通じてミスやペナルティが多く、自分たちのラグビーができませんでした。ただ、非常に良いディフェンスもできたので、下を向いていても仕方ないですし、次の試合に向けて頑張っていきたいと思います」 ──ペナルティに関しては? 「ペナルティの時は、すぐに起きて次のフェイズに備えるよう指示しています。本来、レフリーに話しかけるのはキャプテンのみですが、他の選手がコミットしたようです。ペナルティを取られたのは仕方ないと感じています」 ──ハーフタイムの指示は? 「まず、ディフェンスはしっかりできていて、ペナルティ、シンビンで獲られていたので、ペナルティを取られたら、すぐに起き上がって次のプレーに備えようと。なかなか自分たちの思う形が作れていないので、キックの多い試合だが、できるだけ外で回そうと指示しました」 ──立川選手のポジションは? 「外国人選手とのからみがあり、インパクトプレーヤーを入れたときは、元々練習してきた形を何回か出せたと思います。ディフェンスは非常に激しくできましたし、我々の強みである、このディフェンスは継続していきたいです。日本代表で立川と一緒のNECの田村選手も、キックが素晴らしい選手で、昨年のワイルドカードの試合でも大きくゲインされましたが、今日も良かったです。立川のパスも良い部分もあったと思います」 今野達朗ゲームキャプテン 「本日はどうもありがとうございます。ミスとペナルティが多く、アタックが全然できず、前半の失点をそのまま引きずってしまって、良いラグビーができませんでした。修正して、来週の試合に臨みたいと思います」 ──前半のスクラムでのペナルティは? 「やられた部分もペナルティを取られた部分も、レフリーの判断ですから、仕方ないと思います」 ──ラインブレイクして獲りきれなかった要因は? 「前半、リードされて、早く獲り返そうと焦って、人数が足らなくても行ってしまったり、バックスに早く出そうとするあまり、ダウンボールが苦しい形になったり、その部分のミスが続いてしまったと思います」 ![]() NECグリーンロケッツ ![]() 相澤総監督(右)、村田ゲームキャプテン 相澤輝雄総監督 「率直に、今日は勝って嬉しいです。選手全員が頑張ってくれました」 ──ゲームプランとハーフタイムでのメンバー入替は? 「暑くて、風を利用してエリアを取っていくつもりでしたが、風がやみ、プランの変更をせざるを得ませんでした。前半はFWが頑張って球出しして、田村が素晴らしいキックをしてくれました。途中から、流れも良くなって、シンビンから獲れました。ハーフタイムで選手を替えたのは、同じような実力をもっているので、その力をフルに使いたいという思いからです」 ──今日のセンターの出来は? 「今年はバックスもゲインを切っていきたいと、センターをナドロと後藤で組ませましたが、今日は、うまく行かなかった面もありました。ただ、後藤の動きは素晴らしかったと思います」 ──日本代表SOを争う二人の対決だったが? 「素晴らしいSO二人の対決は楽しめました。NECのFWも頑張ったが、優のキックは想像以上に素晴らしかったですね」 ──ナドロ選手は? 「センターのコンビは柔軟に考えていますが、ナドロはコンディションがすごく良いです。ウィングも考えています。昔の自分とは違う、自分の本当の姿を見せると言ってくれているので、期待しています」 ──あと1トライでボーナスポイントだったが? 「勿論、ボーナスポイントは取りたかったが、勝ち点だけでもよいところを、途中から選手が強気で行ってくれました。良い経験になったと思います」 村田毅ゲームキャプテン 「まず、すごく暑い中、沢山のお客様の前で試合ができて嬉しかったです。皆様にありがとうと言いたいです。チームとして、開幕戦を勝てていなかったので、ただの1ゲームではないと臨んだ試合でした。良い部分もたくさんありましたが、まだまだのびしろがあるなと感じたゲームでした。みんなが感じていると思うので、月曜日から気を引き締めてやっていきたいと思います」 ──後半はまったく獲れなかったが? 「はい。ただ、去年、一つも獲れなかったモールからのトライが前半に獲れたのは良かったと思います。課題として、相手の速いランナーを一人で止めきれず、オフロードされて、相手のノックオンに助けられた場面がありました。これから、秋口になってボールが滑らなくなるので、必ず一人で止めないといけません」 ──この春からの取組みは? 「新しい体制のラグビーで、フィールドポジションもアタックも変わりました。FWはユニットとして強化して、僕は4年目ですが、今までで一番厳しいことをしていると肌で感じています。FWのプライドとして5mラインからの攻撃は絶対に獲りたいと思っています。これまで日本一にもなり、強かった時代のNECの人たちがFWのプライドを持っていただけで、僕らは自信がもてるほど練習してきませんでした。だから5mからの攻撃も何となくフワフワしていました。それを、今年はFWの僕らから、きつい練習でも良いからとやり始めました。それでトライが獲れたのは大きいと思っています」 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |