ファーストステージ第1節 マッチサマリー(NEC 24-3 クボタ)

NECグリーンロケッツ
NECグリーンロケッツ
24 合計 3
21 前半 0
3 後半 3
4 勝点 0
4 総勝点 0
クボタスピアーズ
クボタスピアーズ

NECグリーンロケッツ 24-3 クボタスピアーズ

ファーストステージ・第1節 プールA
2014年8月23日(土)19:00キックオフ/東京・秩父宮ラグビー場

この試合の見どころはいろいろあったが、まずは日本代表のNECグリーンロケッツ田村優選手とクボタスピアーズ立川理道選手の日本人SO対決。両選手とも、SOとインサイドCTBのどちらでも起用されるので、日本代表では併用されることが多い。それ故お互いあまりライバルという意識はないのかもしれない。キックでゲームを作る田村選手と隙あれば自らランプレーに転じる立川選手は、そのプレースタイルにも大きな違いがある。

そして、スーパーラグビー準優勝のクルセーダーズのWTBとして大活躍したネマニ・ナドロ選手がまた日本に凱旋してNECのCTBで出場した。キヤノンから移籍したニュージーランド代表キャップ36を誇るクボタのCTBアイザイア・トエアバ選手も、昨季苦しんだ日本の夏場のコンディションは今季どうか、など出場選手に焦点をあてるだけで話題は尽きない。

またチームとしても、昨季のトップリーグでの最終順位が8位(NEC)と9位(クボタ)の対決で、両チームとも開幕から波に乗りセカンドステージはグループAに進出したい。昨季グループBトップで最終順位は9位になったクボタ、トップリーグ9年連続開幕戦で勝利のないNEC、両チームともに勝利を掴んで上位進出に弾みをつけたいものだ。

試合開始。クボタのその意気込みとは裏腹に、SO立川選手のキックオフのボールがタッチラインを越えてしまい、いきなりNECボールのセンタースクラムになった。

試合後の記者会見でクボタの今野達朗ゲームキャプテンが語ったように、クボタは前半ミスとペナルティが多かった。初めて相手の22メートルラインに入ったのが、ようやく前半33分になってからで、しかもこのラインアウトもNECのSH櫻井朋広選手のイーブンボールへの素早い働きかけでチャンスをものにできなかった。

試合最初の得点は、前半14分NECのSO田村選手の一瞬の閃きのゴロパントから生まれた。FWが22メートルラインを越え、SOの位置に入っていたCTBナドロ選手からパスを受けた田村選手であったが、クボタのディフェンスが目の前に迫り体勢を崩しかけていた。そこでゴール左隅にゴロパントを蹴り込んだ。

クボタのWTB伊藤有司選手が処理をもたつく間に、ボールを追ったNECのWTB大東功一選手の手中におさまり、先制トライが生まれた。田村選手のゴロパントも、伊藤選手と大東選手のプレーもどれも紙一重で、まさにボールゲームであるラグビーらしいトライであった(田村選手のGも成功、NEC7-0クボタ)。

「クボタの強いランナーに差し込まれていた」(LO村田ゲームキャプテン)NECのFWであったが、前半の中盤に差し掛かると徐々に本来の姿を取り戻してきた。
「僕たち若い世代は、日本一になった頃の強かったFWを知りません。ここ最近は、網野さんも浅野さんもいなくなって、プライドを持っていなかったような気がします。みんなで決めて、今はその当時のようなきつい練習をしていて、(相手ゴール前)5メートルを取りきることを練習しています。それだけにモールから取ったトライが嬉しかった」トライスコアラーであるLO村田ゲームキャプテンが試合後に話したように、前半の26分にNECがモールでトライを奪う(田村選手のG成功、NEC14-0クボタ)。

このトライ前後から、クボタのFWが「(こちらも)早く取りたくて焦った」(今野ゲームキャプテン)というように、スクラムでの反則が目立つようになる。「取られたらしょうがない。早く10メートル下がって次に備えるしかない」(クボタ石倉監督)というように、クボタは焦りとスクラムでのルール解釈の違いに戸惑っていたのかもしれない。

前半38分、往年の強さを感じさせるNECのFWが、相手22メートルライン付近でターンオーバーした。そしてそれまでキックとパスでゲームをコントロールしていたNECのSO田村選手が、初めてランプレーに出た。ここは勝負所だったかもしれないが、クボタの選手たちは田村の突然のランプレーに意表を突かれたような展開だった。最後はLO小野寺優太選手が右隅に飛び込んでトライ、難しい位置だったがここも田村選手のゴール成功で21-0となる。

ここまで3本のトライとも左隅、左隅、右隅となっていたが、田村選手が難しい角度からのゴールを3本ともすべて成功させることによって15-0ではなく21-0にしたことは、クボタにはこの上ないプレッシャーになったのではないか。

ハーフタイムでは、クボタの石倉監督は「ディフェンスがうちの強みでもあるので、その再確認を行った」。NECの相澤総監督は「同じような実力のチームなので、最後まで気を引きしめていこう」と選手にハッパをかけている。

後半の最初の時間帯は、クボタの攻勢が続いた。しかし「ここで取れなかったのが痛かったし、これが今の実力かもしれない」(今野ゲームキャプテン)というように、NECの粘り強いディフェンスの前にクボタは得点ができない。

NECもNECで、「前半21点差であと4~5点でセーフティリードなので、焦って攻め急いだ」(村田ゲームキャプテン)、「もう1トライをしてボーナスポイントを取りたかった。強気で攻めるのは良いがミスは反省材料」(相澤総監督)というように、両チームともなかなか点が入らない膠着した展開となった。

試合結果は、後半は両チームともペナルティゴールを1つずつ加えてノーサイドとなった(NEC24-3クボタ)。

この試合で無名の素晴らしい選手が活躍した。登録はWTBとあるが、この日はナドロ選手とCTBを組んだNECの後藤輝也選手である。177cm80kg、山梨桂高→山梨学院大出身の新人で、男子セブンズ学生日本代表である。

「後藤が期待以上の動きだった」(相澤総監督)
田村選手やナドロ選手の影に隠れていたが、ボールを持てば必ずゲインして、ディフェンスにもよく行っていた。試合終了間際はWTBにポジションを変えていたが、いくつもポジションができることはチームにとっても貴重な存在になろう。
SOとしてゲームを作り、難しい角度からのゴールをすべて決め、アタックにディフェンスに大活躍の田村選手のマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)には文句の付けようがないが、この後藤選手もケガなくシーズン終了まで出続ければ、いつかMOMを取る日もそう遠くないかもしれない。なにより戦術の理解度は、新人離れしている。

反撃のできないまま終わった感のあるクボタであるが、敵将相澤総監督も「改めて良いSOであると思った」という立川選手には、気の毒なゲーム展開でもあった。それほどこの日のNECのFWの頑張りが目立つ試合だったのである。
(久米 司)

● 記者会見ダイジェスト ●

クボタスピアーズ


石倉監督(右)、今野ゲームキャプテン

石倉俊二監督

「今シーズンもよろしくお願いします。NECさんの厳しいディフェンスを打ち破れず、80分間を通じてミスやペナルティが多く、自分たちのラグビーができませんでした。ただ、非常に良いディフェンスもできたので、下を向いていても仕方ないですし、次の試合に向けて頑張っていきたいと思います」

──ペナルティに関しては?

「ペナルティの時は、すぐに起きて次のフェイズに備えるよう指示しています。本来、レフリーに話しかけるのはキャプテンのみですが、他の選手がコミットしたようです。ペナルティを取られたのは仕方ないと感じています」

──ハーフタイムの指示は?

「まず、ディフェンスはしっかりできていて、ペナルティ、シンビンで獲られていたので、ペナルティを取られたら、すぐに起き上がって次のプレーに備えようと。なかなか自分たちの思う形が作れていないので、キックの多い試合だが、できるだけ外で回そうと指示しました」

──立川選手のポジションは?

「外国人選手とのからみがあり、インパクトプレーヤーを入れたときは、元々練習してきた形を何回か出せたと思います。ディフェンスは非常に激しくできましたし、我々の強みである、このディフェンスは継続していきたいです。日本代表で立川と一緒のNECの田村選手も、キックが素晴らしい選手で、昨年のワイルドカードの試合でも大きくゲインされましたが、今日も良かったです。立川のパスも良い部分もあったと思います」

今野達朗ゲームキャプテン

「本日はどうもありがとうございます。ミスとペナルティが多く、アタックが全然できず、前半の失点をそのまま引きずってしまって、良いラグビーができませんでした。修正して、来週の試合に臨みたいと思います」

──前半のスクラムでのペナルティは?

「やられた部分もペナルティを取られた部分も、レフリーの判断ですから、仕方ないと思います」

──ラインブレイクして獲りきれなかった要因は?

「前半、リードされて、早く獲り返そうと焦って、人数が足らなくても行ってしまったり、バックスに早く出そうとするあまり、ダウンボールが苦しい形になったり、その部分のミスが続いてしまったと思います」


NECグリーンロケッツ


相澤総監督(右)、村田ゲームキャプテン

相澤輝雄総監督

「率直に、今日は勝って嬉しいです。選手全員が頑張ってくれました」

──ゲームプランとハーフタイムでのメンバー入替は?

「暑くて、風を利用してエリアを取っていくつもりでしたが、風がやみ、プランの変更をせざるを得ませんでした。前半はFWが頑張って球出しして、田村が素晴らしいキックをしてくれました。途中から、流れも良くなって、シンビンから獲れました。ハーフタイムで選手を替えたのは、同じような実力をもっているので、その力をフルに使いたいという思いからです」

──今日のセンターの出来は?

「今年はバックスもゲインを切っていきたいと、センターをナドロと後藤で組ませましたが、今日は、うまく行かなかった面もありました。ただ、後藤の動きは素晴らしかったと思います」

──日本代表SOを争う二人の対決だったが?

「素晴らしいSO二人の対決は楽しめました。NECのFWも頑張ったが、優のキックは想像以上に素晴らしかったですね」

──ナドロ選手は?

「センターのコンビは柔軟に考えていますが、ナドロはコンディションがすごく良いです。ウィングも考えています。昔の自分とは違う、自分の本当の姿を見せると言ってくれているので、期待しています」

──あと1トライでボーナスポイントだったが?

「勿論、ボーナスポイントは取りたかったが、勝ち点だけでもよいところを、途中から選手が強気で行ってくれました。良い経験になったと思います」

村田毅ゲームキャプテン

「まず、すごく暑い中、沢山のお客様の前で試合ができて嬉しかったです。皆様にありがとうと言いたいです。チームとして、開幕戦を勝てていなかったので、ただの1ゲームではないと臨んだ試合でした。良い部分もたくさんありましたが、まだまだのびしろがあるなと感じたゲームでした。みんなが感じていると思うので、月曜日から気を引き締めてやっていきたいと思います」

──後半はまったく獲れなかったが?

「はい。ただ、去年、一つも獲れなかったモールからのトライが前半に獲れたのは良かったと思います。課題として、相手の速いランナーを一人で止めきれず、オフロードされて、相手のノックオンに助けられた場面がありました。これから、秋口になってボールが滑らなくなるので、必ず一人で止めないといけません」

──この春からの取組みは?

「新しい体制のラグビーで、フィールドポジションもアタックも変わりました。FWはユニットとして強化して、僕は4年目ですが、今までで一番厳しいことをしていると肌で感じています。FWのプライドとして5mラインからの攻撃は絶対に獲りたいと思っています。これまで日本一にもなり、強かった時代のNECの人たちがFWのプライドを持っていただけで、僕らは自信がもてるほど練習してきませんでした。だから5mからの攻撃も何となくフワフワしていました。それを、今年はFWの僕らから、きつい練習でも良いからとやり始めました。それでトライが獲れたのは大きいと思っています」








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