セカンドステージ第7節 マッチサマリー(ヤマハ発動機 26-18 パナソニック)
ヤマハ発動機ジュビロ 26-18 パナソニック ワイルドナイツ セカンドステージ・第7節 グループA 開幕して5ヶ月のトップリーグ2014-2015、さらに11月末から始まったセカンドステージもいよいよ大詰めの最終節。前節でキヤノンイーグルスに快勝していち早く『プレーオフトーナメント LIXIL CUP 2015』への進出を決めたパナソニックと、セカンドステージでそのパナソニックに唯一土をつけている東芝ブレイブルーパスとの接戦(29-28)を制して、プレーオフ進出に首の皮一枚繋がったヤマハ発動機の戦い。勝ち点3差の中に4チームがひしめく2~5位グループからヤマハ発動機が勝ち抜けるためには、勝利が最低条件となる。ファーストステージではパナソニックが14-9と接戦の末、ヤマハ発動機を振り切っている。ポストシーズンの行方を大きく左右することになる重要な一戦は、1月の底冷えにも関わらず、先日までの高校ラグビーの熱気の冷めやらない花園ラグビー場に駆けつけた7,000人近い熱いラグビーファンの見守る中、ヤマハ発動機SO大田尾竜彦のキックオフにより幕を開けた。 開始直後にスタジアム中の度肝を抜いたのはパナソニックSOベリック・バーンズ。2分、5分にいずれもハーフウェイライン付近でのヤマハ発動機のペナルティから超ロングPGを見事に決め、0-6とパナソニックが先制した。しかしこの日のヤマハ発動機は積極的にBKに展開して、FWを交えたサイドチェンジやバックスリーが大きくゲインするというパターンでエリアを優位に支配する。ヤマハ発動機が再三ゴール近くに攻め込み、パナソニックがバーンズのキックで凌ぐという展開で試合が推移する。 そして19分、左右に大きくフェーズを重ねた後にゴール前30m付近の中央ラックから右に展開、最後は右WTB伊東力が右隅に押さえて反撃を開始、FB五郎丸歩のゴールも決まって7-6と逆転した。さらにヤマハ発動機は25分にゴール前10mの右ラインアウトモールを押し込んだ後、左に展開して最後はCTBマレ・サウがパワーでポスト下にトライ、ここも五郎丸が容易にゴールを決めて14-6とリードを広げた。風はスタジアムを回っているとは言え、比較的風下のヤマハ発動機がキックに頼らない積極的なライン展開でエリアを支配し、パナソニックに満足に攻撃の機会を与えず前半を終えた。 後半先制したのはヤマハ発動機。6分に左ラインアウトモールから連続して奪取したゴール直前左中間ラックから左に展開、No.8堀江恭佑が左中間に押さえて19-6と得点差を広げた。なかなか攻撃の機会を掴めないパナソニックもその直後の11分、ゴール直前左サイドのラックからバーンズが右サイドにピンポイントのキックパス。No.8ホラニ龍コリニアシがヤマハ発動機左WTB中園真司と競り合って奪取、この試合パナソニック初のトライを挙げ19-13と反撃を開始する。 しかしこの試合、ブレイクダウン、ディフェンスで常に主導権を掴んだヤマハ発動機は19分、ハーフウェイライン付近で伊東がパナソニックのライン攻撃のパスをインターセプト、50mを走り切りボーナスポイントとなるトライを挙げて26-13とする。そしてパナソニックの反撃を終了間際の右WTB北川智規の1トライに抑え、ヤマハ発動機が26-18と最終節見事にパナソニックに勝利して勝ち点5を手にした。 この結果、ヤマハ発動機は8シーズンぶりにプレーオフ進出を果たした。この日のような接点の強さと鋭い出足で攻守を展開できれば、上位進出の各チームにも決して引けを取らず台風の目となることが期待できる。一方のパナソニックも総合力ではやはりNo.1クラスであり、得意のトーナメント戦に向けてきちんと仕上げてくることは確実である。 ● 記者会見ダイジェスト ●
パナソニック ワイルドナイツ ロビー・ディーンズ監督 「このリーグを2位で終えたが、ただ、我々にとって大切なことはプレーオフセミファイナルのスタートに立ったこと。プレーオフのスタートラインに立てることは非常に嬉しいことだし、素晴らしいチームでもそこに立てないチームもある。今日のヤマハは素晴らしいプレーがあった。我々としては、自分達が望んだ結果ではなかったが、セミファイナルに向けて素晴らしい準備ができたと思っている」 ──ヤマハはフォワードでプレッシャーをかけていたが、パナソニックはイージーなエラーがあった。全体に印象は? 「両チームの差は小さかったと思っている。この試合にも勝てるポジションにいた。ただヤマハはこの試合にかける気持ちが出ていたと思う」 ──堀江選手が途中出場となったが意図は? 「今シーズン彼はプレーを続けているので、彼の使い方はマネジメントしている」 田中史朗ゲームキャプテン 「今日の試合結果は残念だったが、最終的にあと2試合勝てればチャンピオンになれるので、今日は負けてしまったが次の東芝にもリベンジできるし、もし決勝に出ればまた、リベンジできるので今日の試合を落ち込むことなく次に繋げるようにしたいし、これでまた頑張っていきたい」 ──1位通過のこだわりはあったか? 「1位のこだわりはあるが、すごいこだわりではなく、試合に勝ちたい思いが強かった」 ──最後にキックが入れば1位通過だったが判っていたか? 「判っていた」 ──差を感じたプレーは? 「ブレイクダウンが激しかったし、相手の方がコミュニケーションがとれていたと思う」 ──接戦となったシーズンだったと思うが、どのような印象か? 「日本ラグビー全体として、レベルは上がっていると感じている。どのチームもしっかり戦い方を理解してワンランク上がっている。これからスーパーラグビーも来年から(日本チームが)入ってくるので、それがあるので準備もできていると思っている。一つ一つのスキルが私が(トップリーグに)入った8年前よりレベルアップしている。 ヤマハ発動機ジュビロ 清宮克幸監督 「試合前から今日も(勝点)5ポイントを獲りに行くラグビーをすると全員がしっかり体現してくれた。上から見ていても選手たちが頼もしく思えた。4節を終えてから5ポイントを連続で獲って、3連勝しなければ自力でのトップ4が無くなる状況からチームが本当に生まれ変わった。今日3連戦の3試合目でヤマハは、先週もコメントしたが、大きく殻を破ったと見ている。選手達は今日、いいプレーをしてくれたと思う」 三村勇飛丸キャプテン 「今日しっかり5ポイント獲って昨年進出することができなかったプレーオフに出ることができて本当に嬉しく思う。前節の課題であった残り20分集中力を切らさなかったことが良かった。自分達の目指すのはプレーオフ進出ではなく、そこで優勝することなので、次に良い準備して臨みたい」 ──4位でプレーオフ、神戸製鋼と対戦することになるが前回神戸に負けて非常に悔しい思いと燃えるものがあるのでは? 清宮監督 「試合の映像を振り返って見て、より悔しい思いをした。自分達の力が全く出せていなかった。どうしようもないのであれば諦められるが、あの時の会見で、『ここまでやられたらスッキリする』と言ったが、本心ではなくて、映像を見ると次になれば、『いける』感覚になったので最後の(パナソニックの)キックは、入ればパナソニック、外れれば神戸と(対戦すると)判っていたので、私は『外れろ』の思いだった」 ──先週から大きく殻を破ったと言っているが、具体的な戦術は? 清宮監督 「5ポイントを獲るラグビーがヤマハの強みを引き出してくれたと思う。敵陣でペナルティーを五郎丸の3点ではなく、トライを獲って帰ってくる。相手も嫌だったと思うし、自分達が獲って帰ってくると自信もつく」 ──今日の試合で一番良かったことは? 三村キャプテン 「スクラムとラインアウトの獲得が良かった。5ポイントを獲ることの迷いがなかった」 ──五郎丸選手1,000ポイントは意識をしていたか? 清宮監督 「意識はしていた。4トライ、8点と試合前に話していたが、あの簡単な2ポイントのキックを外したので(笑)1,000ポイントは来シーズンの楽しみにする」 マン・オブ・ザ・マッチはヤマハ発動機ジュビロ14番、伊東力選手選手
(記事:石川悟、蜷川善夫、玉川育夫 写真:小巻真司 広報担当:村島博) |