トップリーグ2015-2016 第7節 マッチサマリー(サントリー 14-25 東芝)
トップリーグ2015-2016 第7節 グループA 12月とは思えない暖かな日差しに快晴微風。トップリーグ過去最高の2万5164人が詰めかけ、超満員の秩父宮ラグビー場で宿敵同士がぶつかり合う。 東芝FBフランソワ・ステインの22m奥へのキックオフでスタート。サントリーは持ち味の短いパスを確実に繋ぎ、ラックの連取からボールを動かし、停滞するとSHデュプレアのキックで前進を図る。この日の東芝はこの時間帯に無理なコンタクトを避けて、キックの蹴り返しによるエリア獲得からサントリー陣でのセットプレーに勝負をかけた。 東芝はサントリー陣25m中央のファーストスクラムで強烈なプッシュ。三上、湯原、浅原のフロントローの圧力がサントリーに襲いかかる。互いの意地が譲らずに左右にスクラムが揺れる。やや前に、東芝スクラムが動きかけた瞬間にコラプシングの反則。開始3分で東芝SH小川が難なくショットを決める。 波に乗る東芝はさらにFWを前に出し、スクラムでの勝負を徹底。サントリーゴール前でのペナルティにもPGを狙わずにスクラムを選択。一気に勝負を決めにかかる。しかし、サントリースクラムの固いパックがここでは押し返し、密集からボールがこぼれた。開始早々に訪れた緊張。このゲームの勝敗がかかった緊迫の時間を誰もが感じる。ついに18分、スクラムに執念をかけた東芝は、またも固い8人の前進からサントリーの反則を奪い、認定トライ。(0-17) サントリーは自陣での圧力から脱出した20分過ぎに、やっといつものリズムを思い出す。FLスカルク・バーガー、NO8ツイの突進からボールが動き出す。FW、BK一体となったクイックハンズの連続、SO小野のランとループプレーが東芝DFにズレを生みだし、そこにプレーヤーが走りこむ。開始23分、SO小野を軸としたシェイプに東芝DFが的を絞れず空いたスペースを、小野が切り裂いてトライ。(7-17) 後半、セットプレーを修正し、リズムを取り戻したサントリーはアンストラクチャーからの攻撃を繰り返し、東芝陣深くで攻め続けた。どのチームよりも短く、早く、連続されるパス攻撃。破格のボールタッチ数とサポートの早さ。しかし、フィニッシュ寸前に繰り返すミスが勢いを奪い、得点に結ぶことができなかった。終了間際の40分にWTB長友がゴールに飛び込むが、使いきった時間がこの勝負には重すぎた。(14-25) この日の東芝は、前半で3トライ、2PG、反則ゼロの理想的なゲーム。強みのセットプレーに賭けて、エリア獲得で相手陣でのプレーを徹底した。また、特筆すべきはタックルの強さ。ボールキャリアの上半身に激しく襲いかかり、タックルと同時にボールを奪う力強さを何度も見せた。どれだけ激しい練習を繰り返したのか。このゲームへの見事な準備と東芝ラグビーのコンタクトでの執念が輝いた。 訪れた観衆はゲームの結果だけでなく、もう一つのマッチアップにも湧いた。ワールドカップで国内ファンを熱狂させた代表選手たちの直接対決を、秩父宮が固唾を飲んで見守った。ツイとリーチ マイケルの真っ向からのぶつかりあいに音が聴こえる。松島とリーチのハイボールの闘いでは、小柄な松島が逃げずに競り勝つ。日本代表のリズムを奏でた小野を襲う大野の強烈なタックル。ワールドカップを戦った日本のラグビーの激しさ、スピードの進化を確かなものに感じられる時間だった。 ● 記者会見ダイジェスト ●
サントリーサンゴリアス フレンド ヘッドコーチ(右)、真壁キャプテン アンディ・フレンド ヘッドコーチ 「ありがとうございました。残念です。東芝さんにセットプレーの強いところを生かさせてしまったところが残念です。特に前半は自分たちのディシプリンを守れず、8本ものペナルティをしてしまいました。後半は良いファイトができましたが、自分たちのシンプルなエラーが多かったです」 ──今年のチームづくりでうまくいかなかったところは? 「今年は、近鉄戦で負けて、常に勝たなければいけない状況に追い込まれました。今日も安定したセットピースが生命線なのに、最初の40分でペナルテイを与えてしまい、(フォワードが)7人になってしまいました。ワールドカップから9名の選手が帰ってきたのですが、サントリーのシステムの中にうまく入れないところもありました」 真壁伸弥キャプテン 「お疲れ様です。東芝さんの強みとサントリーの強みをお互いに出そうとした試合でした。セットピース、スクラムの東芝さんの強みを出させたくなかったのですが、やりたいことをやらせてしまいました」 ──予想外の点は? 「しっかり、アンストラクチャーの場面を多く作り、自分たちのテンポを出そうとしたのですが、ミスが多く、停滞してしまったところです」 ──前半から反則が多かったが? 「北出と森川は良くやっているのですが、レフリーとのコミュニケーションが悪く、こちらがスクラムを回したと悪い印象を与えてしまったかもしれません。何回もフェイズを重ねるのがサントリーのラグビーなのですが。ボールの扱いなど、ベースの部分でムリに行こうとしてしまいました」 ──カップトーナメントに進めないが? 「リーグ戦3敗を現実として受け止め、モチベーションとしてアタッキングラグビーを究めていきたいと思います」 東芝ブレイブルーパス 富岡監督(右)、森田キャプテン 冨岡鉄平監督 「お疲れ様です。最初の10分が全てだったのかなと思います。準備してきた80分で、最初の10分が重要と臨みましたが、選手がしっかり試合に入ってくれました。後半、ウチが少しペナルティをしてしまって、サントリーさんのペースにもっていかれました。森田キャプテン中心に良く守ってくれました。LIXIL CUP に向けてしっかり準備していきたいと思います」 ──あまり、後半はセットピースで出ていかなかったが? 「最初に感情論で行ってしまうと、手を出したりしてラッキーパンチを食うこともあります。サントリーさんは素晴らしいチームなので、そういうチームにはラッキーパンチが怖いのです。小川もランが好きだし、マイケルも森田もしっかり傍を固めて、ボクシングの第一ラウンドのようにいくことを選手が理解していました。しかし、自分たちで防げるペナルテイが3つ出ました。規律、我慢がまだまだなので、LIXIL CUPへの課題としていきたいと思います」 ──NTTコム戦後の立て直しは? 「我々にとってはショッキングな敗戦でした。僕のせいで負けたから。要は、僕が相手の色を見て、こちらの色を変え過ぎたのです。いじり過ぎたのに、選手は信頼してくれて。チームの一番上の人間として、『負けて反省』は許されないことです。それから、自分たちの色、強みは何か徹底的にやってきました。東芝は断トツに失点が少ないです。失点100点以下を目指して98点、これがウチの色です」 ──トヨタ自動車戦に向けて? 「イヤですね~って言うわけないじゃないですか。今日の松田選手を見ていても、最後の40分で成長していて、すごくハッピーです。どこのチームより、伸びしろがあると思います。前回、プレシーズンマッチで負けていますから、どれだけ成長できたか示したいと思います」 森田佳寿キャプテン 「LIXIL CUPに上位で進めるか、プレッシャーがかかる中で、府中のライバルであるサントリーさんと勝負を楽しめて、超満員の秩父宮で試合できてとても嬉しいです。冨岡さんの言う伸びしろを信じ、今日後半の反省を生かして、しっかり準備して次に向かって行くだけです」 ──リーグ戦を振り返って? 「第2節でNTTコムさんに負けてから、上位を目指すプレッシャーは常にありました。2週間前、パナソニックさんと大変高いレベルの試合をすることができて、緊張はありましたが、東芝らしい強いラグビーができています。サントリーさんとの試合は、純粋に没頭できたのが良かったと思います」 ──2009年からトップリーグのタイトルを取れていないが? 「この短期決戦の中で、どう勢いに乗っていくか、その都度、分析をするのが我々の強みです。自信をもってやっていけるかが全てです。我々のスタイルで1戦1戦、やっていくだけです」 ──トヨタ自動車には旧知の滑川君がいるが? 「あんまり意識していません。彼、ゲームの日には、すごく無愛想になるんです。集中していくだけです」 マン・オブ・ザ・マッチは東芝ブレイブルーパス3番、浅原拓真選手
この日に「リーグ戦100試合出場」を達成した小野晃征選手・畠山健介選手(共にサントリー)を囲んで
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