トップリーグ 2016-2017 第1節 記者会見レポート(パナソニック 21-24 ヤマハ発動機)

トップリーグ2016-2017 第1節
2016年8月26日(金)19:30キックオフ/東京・秩父宮ラグビー場
パナソニック ワイルドナイツ 21-24 ヤマハ発動機ジュビロ

スクラムで圧倒、ヤマハ、王者パナソニックに勝利し、好スタート

昨年度までトップ・リーグ3連覇のパナソニックは、豪州代表のデイビッド・ポーコック、タンゲレ・ナイヤラボロをはじめ、藤田慶和、福岡堅樹、森谷圭介らの期待の大学卒新人、そして最後には未だ筑波大学在学中の山沢拓也も加入と、過剰ともいえる大型補強を行って今シーズンを迎えた。一方、ヤマハは五郎丸歩の抜けたFBにゲラード・ファンデンヒーファーを補強したが、春シーズンからこの日に賭けて、スクラムに集中して時間をかけて練習を積んできたフィフティーンの力を発揮できるかが見どころである。
開幕3日前に行われたトップ・リーグのプレスカンファレンスで、ヤマハ清宮克幸監督は「パナソニックに勝って優勝を逃すか、パナソニックに負けて優勝するか。どっちを取るかと言われたら、前者を選びます」とコメントし、ヤマハのこの試合にかける意気込みを示していた。

この日のパナソニックはバックラインを、SO山沢に両CTBはベリック・バーンズと森谷、WTBは児玉健太郎と山田章仁という注目の布陣で迎えた。

試合開始後からヤマハFWのスクラムでの意気込みが伝わってきた。前半2分、パナソニックのノックオンでスクラムを得ると、8人がプッシュ。パナソニックFWはたまらずコラプシングの反則をとられた。その後もヤマハボールのスクラムになる度に同じシーンが繰り返され、試合はヤマハのペースで進んだ。15分にはハーフウェイライン付近でのヤマハボールスクラムでヤマハFWがプッシュ。No.8の堀江恭祐が左ブラインドサイドを突きWTB中園真司がゴール前に。ゴール前で何回かポイントを作ると、SO大田尾竜彦がインゴールへ向けショートパントを上げる。このボールに飛び込んだCTB宮澤正利はボールを確保できなかったがマレ・サウがインゴールで押さえてトライ、ヤマハが0-7とリードした。

この日のヤマハはスクラムだけでなく、パナソニックの選手によくタックルをしており、パナソニックの選手がノックオンをしてしまうというシーンが何度も見られた。ヤマハボールのスクラムになると、パナソニックがコラプシングの反則をとられる。バーンズのPG失敗も2回あったが、パナソニックにとっては悪い試合の流れになっていた。
ヤマハはFWがスクラムで勝って、バックスはSO大田尾のキックで試合を組み立てる。24分には大田尾のキックで敵陣に進めると、これをキャッチしたSH内田啓介をタックルで止める。ボールをターンオーバーしバックス・FWの選手が一体になってボールをつなぐ。ゴール前に迫ると、最後にはNo.8堀江 – FLトゥイアリイ – LOクリシュナン – PR伊藤からWTB中園真司へとつなぎ、中園がトライ(ゴール成功)。0-14とした。

しかし、パナソニックもこの試合の流れを変える力はある。28分、敵陣に入りスクラムでボールを確保すると、SO山沢 – CTBバーンズと素早く展開。バーンズからのオフロードを受けたCTB森谷がゴールラインに駆け抜けた。(ゴール成功、7-14)
しかし、パナソニックはスクラムでの劣勢は修正できず、前半だけでスクラムコラプシングでの反則数は少なくとも5。39分にもコラプシングの反則から、ヤマハにPGで加点され、7-17でハーフタイムとなった。

後半もヤマハFWのスクラム優位は続いた。8分、ゴール前5mでのラインアウトからのモールを押し込み、TMOでトライは認められなかったが、その直後、スクラムを得たヤマハFWが8人でプッシュすると、パナソニックFWはこれを止めきれず、ヤマハにペナルティトライが与えられた(7-24)。

しかし、パナソニックもこのままでは終わらせない。勝利の望みをパナソニックに引き戻したのは日本代表WTBの山田章仁だった。
17分、パナソニックはラインアウトからナイヤラボロ・藤田・森谷らの新戦力でフェイズをつなぎ、右に展開。ボールがバーンズからWTB山田に渡ると、山田はヤマハWTB中園とFBファンデンヒーファーをかわし、中央へ回り込みトライ、ゴールも成功し、パナソニックが14-24と追い上げる。
さらに、21分、後半途中からCTBからSOにポジションを変えているバーンズの大きなキックで敵陣に攻め込み、ボールを確保してアタックのフェイズを重ねて出たボールを更にバーンズが右の真横にキックパス。このボールをキャッチした山田にヤマハCTB宮澤がよくタックルしたが、山田は一旦、ボールをグラウンディングして、すぐに持ち直してインゴールに駆け込んだ。ゴールも決まりスコアは21-24と最後までわからなくなった。

しかし、この日のパナソニックは最後までスクラムに悩まされた。32分、前半の終盤から入替えでPRに入っている川俣直樹がスクラムコラプシングでイエローカードを受け、パナソニックは最後の8分間を14人で戦わざるを得なくなり、バックスにチャンスボールを渡すことができないままノーサイド。ヤマハにとって「今後の試合へのエネルギーが2倍にも3倍にもなる」(清宮監督)、フィフティーンが自信をつけることができた試合となった。マン・オブ・ザ・マッチはスクラムでの勝利に貢献した170cm、34歳のPR仲谷聖史が獲得した。
(正野雄一郎)

◎パナソニック ワイルドナイツ
○ロビー・ディーンズ監督

パナソニック ワイルドナイツの堀江キャプテン、ディーンズ監督(右)

パナソニック ワイルドナイツの堀江キャプテン、ディーンズ監督(右)

「素晴らしい開幕戦でした。結果は勝利できませんでしたが、どちらのチームも持ち味を出して戦ったと思います。パナソニックはセットピースで負けていたことが最終的にこの点差になった要因だと思います」

──山沢選手の評価は?

「今日出た新人の選手のパフォーマンスはとても良かったです。山沢はこれから長いキャリアを積むはずですし、森谷も非常に大きな怪我からグラウンドに戻ったことは素晴らしいです。しっかり戦ってくれました。今日の6人の選手がトップリーグのキャップを得ました。これからコンビネーションも合ってくると思います。開幕戦はタフでしたが! 勝ち点1を獲って、しっかりスタートできたと思います。こういう経験値が大事です。山沢選手にはおめでとうと伝えたいです」

──後半の選手交代は?

「非常に長く厳しい戦いが続くので、新しい選手を注入する必要がありました」

──バーンズ選手がスタンドオフに入ったらパナソニックらしい動きになったが?

「我々としては準備の段階で組んだコンビネーションでやりました。自陣で前半プレーし過ぎました。しかも相手スクラムではね」

○堀江翔太キャプテン

「まあ、負けた理由はスクラムでしょうね。向こうの方がまとまっていて、練習で組み込んで来たなと思いました。こちらは海外から帰って来て合わせていないので。その中でも、暑い中、頑張った選手を誇りに思って良いと思います。その分、何が足りないかしっかり分析して、負けた悔しさだけしっかり残してやっていきたいと思います」

──スクラムで予想外にやられたが?

「プロップが外から入ってきました。前3人が対処できませんでした。アンラッキーで滑ってイエローを出されました」

──スクラムが苦しかったわけは?

「対策はしてきたが、向こうはそれ以上に組み込んでいました」

──終盤、追い上げたが?

「スクラムのことだけ抑えれば、こっちに流れが来ると思っていました」

○◎ヤマハ発動機ジュビロ
○清宮克幸監督

ヤマハ発動機ジュビロの三村キャプテン、清宮監督(右)

ヤマハ発動機ジュビロの三村キャプテン、清宮監督(右)

「ヤマハはヤマハらしい戦いができました。セットピースでプレッシャーをかけて、ディフェンスからターンオーバーと、非常にヤマハらしい。対してパナソニックさんは、らしくないラグビーでした。あれほどボールを動かすパナソニックさんは予想外でした。だいたい、1試合に30から40本くらいは蹴るのですが。新しいパナソニックスタイルを作ろうとしているのかもしれませんね」

──勝てると思ったのは?

「55分くらいで観ている方はヤマハが楽に勝てると思ったかもしれませんが、パナソニックさんのリザーブに素晴らしい選手がいて、後手を踏んでしまいました。パナソニックさんはやはり強いという印象です。もちろん最後まで分かりませんでしたね」

──パナソニックに負けて優勝するより、優勝できなくてもパナソニックに勝ちたいとおっしゃっていたが?

「もう一つ、言ってなかったですが、パナソニックさんに勝って日本一になるというのもあるんです。あまりにも強欲なので言いませんでしたが(笑)」

──優勝を引き寄せたが?

「どうなるか分かりません。次の試合はキヤノンさんで、難しい試合になります。良い準備をして、ヤマハのラグビーをやるだけです」

──スクラムをどう強化したのか?

「磐田(ヤマハ発動機ジュビロの本拠地)に来てください」

──今シーズンはプレーオフがないが?

「今日は伊藤、西村がメンバーで、その後ろに田村、山村がピンピンしていまして、彼らをノンメンバーに追いやって、何よりも自信になったと思います。若い選手が成長して底上げしてくれています。トップリーグでは、もうパナソニックさんとやらないということです。ヤマハは他チームのように選手層が厚くないので、序盤戦に元気なうちに上位チームと試合できるのは良いんじゃないでしょうか」

──戦前の準備は?

「対戦相手で準備は変えません。ヤマハのラグビーをやるだけです」

○三村勇飛丸キャプテン

「まず、開幕戦で勝利することができて良かったと思います。一昨年の決勝以来のパナソニック戦でしたので、スクラムも圧倒できてお返しができました。次はキヤノン戦ですが、リーグ戦は波がないようにヤマハらしくやっていきたいと思います」

──ペナルテイを得た時の判断は?

「スクラムより敵陣でのプレーを優先しました」

──スクラムをどう強化したのか?

「純粋に組んできた時間が違うと思います。その差だと思います」

──スクラムの手応えは?

「最初からすべて出し切ろうとFWで決めていました。最初はペナルティを取られても仕方ないくらいの気持ちでやって、手応えはありました」

──パナソニックに勝った影響は?

「いや、もう彼らのエネルギーがヤマハの持っている力を引き出してくれたと思います」

RELATED NEWS