トップリーグ 2016-2017 ウインドウマンス座談会1

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12月のリーグ再開後に注目すべきチーム、選手は?

“全勝”ヤマハ発動機とサントリーの好調要因はどこに
パナソニックは復調気配。“5敗”東芝の復活はあるのか

10月29、30日に行われた第9節をもって1ヶ月の休止期間に突入したジャパンラグビー トップリーグ2016-2017。
今シーズンは全15節の長丁場だが、すでに6割が終了。順調に勝ち星を重ねるチームの一方で、思わぬ取りこぼしを続ける強豪も。
ここまで2ヶ月間の各チームの戦いぶり、さらにはリーグ再開後の展望について、お馴染みの大西将太郎、村上晃一の両氏を迎え、語り合ってもらった。
連載1回目は、明暗が分かれたかっこうの昨季の3強(パナソニック、東芝、ヤマハ発動機)、そして復活サントリーの夏から秋にかけてのパフォーマンスを振り返ってもらった。

(司会・構成:出村謙知、撮影協力:Yahoo!チケット

五郎丸の抜けた穴を補って余りある活躍を見せるヤマハ発動機FBファンデンヒーファー photo by Kenji Demura

五郎丸の抜けた穴を補って余りある活躍を見せるヤマハ発動機FBファンデンヒーファー
photo by Kenji Demura

──9節を終わって、ヤマハ発動機とサントリーの2チームが全勝で折り返すことになりました。

村上村上「他のチームに比べてアタックが整理されているのが、この2チーム。意図通りにトライが取れている。
サントリーは相変わらずパスは多くて、でもその特徴を残しながらも、今季はSO小野晃征がキックを使ったり、効率的に攻めるようになった。ベースの部分は変わらないけど、空いているスペースもうまく攻められるようになった印象です。
ヤマハ発動機はセットプレーからの準備されたアタックでトライを取っていく。スクラムに関しては、他のチームとの差が出てきたし、コンタクトの部分でもどこのチームにも引けを取らない。清宮(克幸)監督になってから長年積み上げてきた成果が出てきている。着実に地力をつけてきた結果として、いまの成績がある」

大西大西「この2チームに関しては、全ては初戦だったかなと。サントリーは近鉄に危なかった(14—13でサントリーが勝利)。逆に近鉄が勝っていたら、近鉄が波に乗っていたかもしれない。初戦の勝ちというのが自信につながって、いい流れを呼び込めた。
元々地力自体はあったし、昨シーズンの成績(9位)がおかしかったくらいで」

──ヤマハ発動機も開幕前に清宮監督が「パナソニックに勝てなくて優勝なら、パナソニックに勝って優勝できない方を選ぶ。それくらいパナソニックに勝ちたい」と、ブチ上げるくらい賭けていた開幕戦で勝ったことで完全に勢いに乗った。

大西大西「ヤマハ発動機に関しては、チームができ上がっているという感じがします。さらに若手も育ってきて、ベテランと若手の力がうまくミックスされている。雰囲気の良さが凄く伝わってくる」

9節までに12トライを挙げてトライ王へ邁進するサントリーWTB中づる(雨冠に隹・鳥の順) photo by Kenji Demura

9節までに12トライを挙げてトライ王へ邁進するサントリーWTB中づる(雨冠に隹・鳥の順)
photo by Kenji Demura

──両チームともに、自分たちの強みをうまく生かす戦い方をチームとして身につけた気がします。無理しなくなったというか。サントリーは昨シーズンまでなら、もう少し近場でのフェイズにこだわっていたような場面で早めにスペースに運んだり、ヤマハ発動機もここで外を攻めれば取りきれるという時にボールが動くようになっている。

村上村上「サントリーは初戦の出来がすごく悪くて、調子が悪い中でも勝つことでどんどんまとまってきた」

大西大西「暑い季節のサントリーというのはいつもあまり良くない。パスを出すチームなので、どうしてもボールが滑ってミスが多くなる」

──この2チームは個々の選手の成長も多く見られました。サイズはないのにトライを取りまくっているサントリーの中づる(雨冠に隹・鳥の順)隆彰、竹下祥平の両WTBとか、日本代表のFWがヤマハ発動機の選手ばかりになったり。
その一方で、パナソニックは開幕戦でヤマハ発動機にスクラムで圧倒され、第4節ではサントリーにもショッキングな大敗を喫した(15—45)。若い有能な選手がたくさん入ってきたけど、まだチームとしての戦い方を身につける前にシーズンに入ってしまった感じでしょうか。

トップリーグのレベルにも慣れ、落ち着いた司令塔ぶりを見せるようになったパナソニックSO山沢 photo by Kenji Demura

トップリーグのレベルにも慣れ、落ち着いた司令塔ぶりを見せるようになったパナソニックSO山沢
photo by Kenji Demura

村上村上「いい選手がいっぱい入ってきて、能力は高いし、経験積ませながら新旧交代を図っていく、というのが今シーズンのパナソニックのテーマのひとつ。その辺はパナソニックの懐の深さでもある。
開幕戦に関しては、ヤマハ発動機の出来が良かった。それでも、最後はパナソニックが3点差まで追い上げた(21−24)。当たり前ですが、パナソニック弱くないなと思ったし、その後の戦い方でもそれを証明している。サントリーにだけはやられたけど」

大西大西「初戦のヤマハ発動機戦でもフミ(田中史朗=SH)を入れて、バーンズ(ベリック=SO/CTB)をSOに戻せば、いつでも勝てますよ、という感じでプレーしていた気さえします」

村上村上「パナソニックは主力の西原(忠佑=FL)とか劉永男(FL)など、主力にケガも多かった。昨シーズンまで軸になっていた選手が戻ってくれば間違いなく強いという雰囲気は序盤戦から漂っていた」

大西大西「森谷(圭介=CTB/FB)や山沢(拓也=SO)などを使いながら、チーム力を上げていくことを意識した戦いをしてみせたり。WTBに関しても本当に有能な若い選手がたくさんいて、田邉淳コーチが言っていたのは、その週、一番調子のいい選手を使うし、ちょっと悪かったらすぐに出られなくなるということ。厳しい競争を経て試合に出ることで成長を促している」

──前半戦の終盤の7〜9節くらいは、WTB北川智規やCTB林泰基といったベテランがうまく仕切り出して、まとまりが出てきた感じがすごくありました。

村上村上「後半戦もパナソニックはこのまま調子上げて行くのでは」

早くも5敗。東芝SO/CTB森田主将が信じられない失速ぶりのチームを立て直すことができるか photo by Kenji Demura

早くも5敗。東芝SO/CTB森田主将が信じられない失速ぶりのチームを立て直すことができるか
photo by Kenji Demura

──もう1チーム、序盤戦で躓いた東芝ですが、なんと4節以降の6試合で5敗。この大失速の原因はどのあたりにあると感じていますか?

大西大西「少しだけ新聞報道でもありましたけど、S&C(ストレングス&コンディショニング)のところでアプローチを変えたのが影響しているのかな?と思う」

村上村上「練習方法を変えて、ユニット練習を少なくしたり、東芝らしいガツガツした練習を少なくして、コンディショニングを整えることを優先しているということだと思うんですが、そのあたりがあまりうまくいっていないのがグラウンドでも見えている。ガツガツした東芝らしい部分が全然強くない」

大西大西「そのあたりの影響を受けてか、後半に失速しているように感じる」

村上村上「ゲームフィットネスも明らかに落ちている」

左:村上氏、右:大西氏

左:村上氏、右:大西氏

──日本代表やサンウルブスなどのスーパーラグビーでプレーし続けた選手が多かったことは。

村上村上「影響はあったと思いますが、他のチームを見ると言い訳にはならないのでは」

大西大西「カフイ(リチャード=CTB)のケガも痛かった。他の海外出身の選手が昨シーズンまでのようには機能していないのもある」

──なかなか結果が出ないシーズンが続いていることで、新しいスタイルを模索している部分もあるのかもしれませんが、本来強くあるべきところでガツガツいけない東芝は怖くない。

村上村上「リコー戦(28—33で敗戦=第8節)などは、いい攻めもありながら、互角の勝負で負けた印象があります」

大西大西「豊田自動織機戦(22−27で敗戦=第7節)、リコー戦と、続けてロスタイムでの逆転負け。それも、粘りなく、あっさり取られての敗戦」

──以前の東芝は、流れが悪くなった時に立ち返れる部分があったと思うのですが、それこそ接点の攻防では負けないとか、ドライビングモールとか。いまはその根幹の部分で自信を失っていて、流れを引き戻せない。

村上村上「これまでやってきた練習の成果が後半戦に出るのか。11月の1ヶ月間で課題を修正できるかどうかでしょうね」

大西大西「ウインドウマンス開けの第10節がコカ・コーラ戦。11月をうまく過ごせたら、後半戦は一気に走る可能性はある」

(以下、連載第2回に続く)

座談会はヤフー本社内「LODGE Studio」で行われた

座談会はヤフー本社内「LODGE Studio」で行われた

 

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