トップリーグ 2016-2017 ウインドウマンス座談会3
12月のリーグ再開後に注目すべきチーム、選手は?
ホームゲームの多いヤマハ発動機は日程も味方?
直接対決をものにしたいサントリー、神戸製鋼
大西将太郎、村上晃一両氏を迎えてのウインドウマンス座談会第3弾は、12月3日に再開されるトップリーグ後半戦の注目カード、個人賞の行方、日本代表の活動が各チーム、選手にどんな影響を与えるのかなどを語り合ってもらった。
(司会・構成:出村謙知、撮影協力:Yahoo!チケット)
──ウインドウマンス開けの第10節は、いきなり興味深いカードが組まれています。一番の注目は花園で行われるサントリー – NTTコム戦でしょうか(12月3日14:00、東大阪市花園ラグビー場)。
大西「NTTコムのアップセットに期待したいところですが、司令塔である小倉順平が1ヶ月不在なのは痛い。ただ、金正奎主将が帰ってくるとしたら、それは大きなプラス」
──名古屋では、トヨタ自動車とキヤノンというウインドウマンス前にチームのいい形が見えてきた同士が対戦(12月3日14:00、愛知・パロマ瑞穂ラグビー場)。
大西「確かに、これはいい試合になりそう」
──前半戦を盛り上げた宗像サニックスは地元グローバルで神戸製鋼と対戦します。
村上「今シーズンの宗像サニックスはとにかくグローバルで勝つことを目標にしているし、勝負の試合になりそう」
大西「パフォーマンスが素晴らしかったFBジェイミー・ジェリー・タウランギがキヤノン戦のレッドカードで出られない(第12節まで出場停止)のは痛い。でも、田代(宙士)を10番にして、スウィーニーが15番というのも面白い」
──首位のヤマハ発動機は第10節では豊田自動織機と対戦(12月3日14:00、静岡・エコパスタジアム)。FW陣がごっそりと日本代表で不在なのは、かつてのヤマハ発動機にはなかったことなので、やはり影響はあると見ないといけないでしょうか。
村上「清宮監督も『2、3週間はかかるかも』と言っていた。ただ、代表選手のコンディションに関してはジャパンで何試合出るかにもよるし、初めて代表に選ばれる選手が多いので、逆に良くなる可能性もある。テストマッチで自信をつけて、よりパワーアップするかもしれない」
大西「代表で試合に出られなくて、その悔しさから、すごいプレーをするようになるパターンも考えられる」
村上「ヤマハ発動機は後半戦、静岡での試合が多いのは大きい」
大西「スケジュール的にもヤマハ発動機の流れという気も……」
──確かに、豊田自動織機戦の翌週はヤマハスタジアムでNEC戦(10日13:00)ですし、12月24日に予定されているサントリーとの決戦もヤマハスタジアムで戦える(13:00)。
村上「サントリーはアウェーだけど、このヤマハ発動機戦は絶対に勝たないと」
大西「どちらがメリー・クリスマスと言えるのか(笑)」
──後半節、ホームゲームの多いヤマハ発動機ですが、アウェーでポイントになりそうなのが12月18日の神戸製鋼戦(兵庫・ノエビアスタジアム神戸=13:00)。
村上「神戸製鋼としてはスクラムをまずしっかりする」
大西「セットピースでボールを確保でききれば、神戸製鋼BKも決定力はある」
── 一昨季のトライ王のWTB山下楽平もキレが戻っています。
大西「確かに、注目の一戦ですね」
──ヤマハ発動機同様、代表に多くの主力を輩出しているパナソニックですが、こちらは選手層の厚さもあるし、影響はあまりなさそうですね。
村上「対戦カードを見ても、パナソニックはこのまま調子を上げていくのでは」
──10節は地元・太田でのクボタ戦(12月4日13:00、群馬・太田市運動公園陸上競技場)。通算100トライにリーチかけているWTB北川智規もそろそろ決めたいところでしょう。
一方、11月の1ヶ月間の過ごし方が問われる東芝は鹿児島でのコカ・コーラ戦からのリスタート(12月4日14:00、鹿児島県立鴨池陸上競技場)。
大西「ここで東芝らしさを取り戻せれば、一気に火がつく可能性もある」
村上「コカ・コーラも課題の規律の部分でちゃんとできれば、東芝が不安を抱えているだけにチャンスはありそう」
大西「今シーズンは、ビックリするようなアップセットも起こっているので、後半戦も番狂わせは期待できる」
──アップセットという意味では、後半戦で気になるカードなどありますか?
村上「トヨタ自動車がサントリーに勝つとか(第12節=12月17日14:00、豊田スタジアム)」
大西「その日の豊田スタジアムは豊田自動織機とHondaという自動降格にも影響を与えそうな熱いカードもある(同日11:30)」
村上「最終節の東芝−パナソニック(1月14日14:00、東京・秩父宮ラグビー場)、ヤマハ発動機 – トヨタ自動車(同日13:00、静岡・ヤマハスタジアム)、神戸製鋼 – サントリー(同日13:00、兵庫・ノエビアスタジアム神戸)あたりは、優勝争いだけではなく、日本選手権進出を賭けた3位争いも関係してきそう」
──後半戦は個人賞争いも注目されます。
村上「トライ王は中づる(雨冠に隹・鳥の順)隆彰(サントリーWTB)がこのまま突っ走るのか」
大西「あとは、山下楽平(神戸製鋼WTB)か松橋(周平=リコーNO8)か」
村上「松橋はまだ量産する可能性がある」
大西「日本人FWに取ってもらいたい気もします」
村上「日本人がトライ王争いしているのはいい。得点王はコディ・レイ(神戸製鋼FB)がリード
大西「小野晃征(サントリーSO)も可能性はある」
──ファンデンヒーファー(ゲラード=ヤマハ発動機FB)も。キックだけではなく、五郎丸歩の穴を完全に埋めている。
大西「松橋は完全に新人賞当確では」
村上「あとは合谷(和弘=クボタFB)かな」
大西「ただ、インパクトでは松橋ですね」
──個人賞には絡まなくても、後半注目してほしい選手がいれば。
村上「ヤマハ発動機のタヒトゥア(ヴィリアミ=CTB)は拾い物。向こうで試合していて、人数足りなくて、人数合わせにきてもらったら良かったので契約した」
──インパクトのあるタテ突破でヤマハ発動機のアタックの幅を広げていますよね。
村上「東芝の田村熙はチームの調子が上がらない中では光っている」
大西「本当は10番ではないかな。大学時代もFBが長かったので、内側からプレッシャーをかけられたりすると、まだ厳しい面があったり。東芝ではマルジーン・イラウア(FL)がいい」
──いまやジャパンでもすっかり主力です。
村上「松橋だけじゃなく、リコーの3列はみんないいですよね。武者(大輔=FL)も柳川大樹(FL/NO8)もいい」
大西「パナソニックの森谷(圭介=CTB/FB)はようやく霜村誠一(元パナソニックCTB)の後継者が出てきたという感じ」
村上「今シーズンは日本人のSOが活躍している。田村優(NEC)、大田尾(竜彦=ヤマハ発動機)、重光(泰昌=近鉄)、小野(サントリー)、山沢(拓也=パナソニック)、小倉(NTTコム)、田村弟(東芝)。あと、個人的にはHondaの小西(大輔)のプレーが好き。Hondaには朴成基もいる」
大西「やはり、いいSOがいるチームは安定している」
──初戦(対ヤマハ発動機)で洗礼を浴びたパナソニックの山沢も、試合を重ねるごとにトップリーグでの戦いに慣れてきて、しっかりしたゲームメイクができるようになってきている感じがします。
大西「ロビー・ディーンズ(パナソニック監督)が育てたダン・カーター(元NZ代表SO)のようになってきている。カーターも最初はマーテンズ(アンドリュー=元NZ代表SO)の横につけたように、山沢もバーンズの横でプレーさせた。最初は結果は出なかったけど、試合を重ねるごとに自信もついてきて、最後の豊田自動織機戦(60—7で勝利=第9節)では、とても大学生には見えない落ち着いたプレーぶりで貫禄のあるトップリーガーという感じだった」
村上「山沢は足が速いのがいい。日本人のいいSOというと、そんなに足が速くないタイプが多かった。小野だったり、重光だったり。うまさで補っているタイプが多い中で、山沢は根本的に足が速い」
──確かに、サッカーでも将来を嘱望されていた山沢の身体能力はもの凄いものがあります。
村上「小倉順平も意外に速いけど」
──今シーズン、日本人SOの活躍が目立つ理由としては、どのようなことが考えられますか?
村上「トップリーグがスタートした頃は、外国人選手はパワフルなCTBとかFW第三列が多くて、パワーを補ってもらっていた。それが、ある時からコントロールしてもらう方向になって、SOやSHに外国人選手が来るようになった。そういうトレンドってあるかもしれない」
大西「それがまた戻ってきているのかも。各チームのDFが整備されて突破役が必要とされているのかな。あるいは、小さい頃からレベルの高いラグビーを見ている選手が増えて、戦術眼が発達してきているのかも」
──元々、日本人が活躍しやすいポジションでもあったはずだし、SOに日本人選手が増えているのは望ましいことですね。
村上「ジャパンもそうなるといい。日本ラグビーのレベルが上がった証拠でもある。コントロールするポジションは日本で育った選手が占めて、パワー系を補ってもらえれば。あと、今回ジャパンに新たに選ばれた選手はトップリーグでもみんな活躍している選手ばかりなので、11月に日本代表でプレーした選手にはトップリーグでも注目してもらいたい。代表でプレーすることによって、どう成長したのか、あるいは来年は誰が選ばれるのかを予想しながら見てもらっても面白い」
(了)