トップリーグ 2017-2018 ウィンドウマンス座談会2
中編=第9節までのホワイトカンファレンスを振り返る
圧倒的な完成度を見せたスター軍団パナソニック
3位リコーは2位ヤマハ発動機に肉薄できるか
瓜生靖治、後藤翔太両氏を迎えてのウィンドウマンス座談会コラム。中編は、ホワイトカンファレンス8チームの9節までの戦いぶりを振り返る。
(司会・構成 出村謙知)
──第9節でサントリーに勝って全勝を守ったパナソニック。そのサントリー戦以外は全試合で勝ち点5を挙げるなど、完璧と言っていい戦いぶりを見せているのではないでしょうか。
後藤 スター軍団ですよね。サッカーで言えばレアル・マドリード的。でも、そのスター選手がスターのようにプレーしないのがパナソニックの凄さ。ロビー(ディーンズ監督)さんの凄さかも。
ひとりひとりがチームの中で役割をしっかり果たすことができる。そういう統率力をひとりひとりが持っている。
瓜生 個人の能力の高さは言わずもがな。ひとりの選手がボール持った時の他の選手のリアクションがしっかりしている。他のチームでは2人か3人くらいしか反応していない状況で、4、5人は反応している。
キックを蹴られてカウンターに行く時でも、チームによってはFBとWTBくらいでどうしようかと考えるところも多いが、パナソニックでは他の選手も反応している。だから、カウンターアタックが凄い。
トヨタ自動車との試合では、キックチェイスでのトライが2本ほどあったと思うのですが、本当にしっかり追いかけている。
山田(章仁=WTB)があんなにしっかり追いかけるなんて信じられない、というのは冗談ですが(笑)、ま、後輩なので……そういうプレーをしないと勝てないし、勝つために何をしなければいけないかを23人が楽しみながら実行している。
後藤 ラグビーで勝つということがどういうことか、全員がわかっていますよね。
瓜生 たぶん、責任のボーダーラインが高いのだと思います。極端な話、試合でそれを全うできれば練習しなくてもいいくらい。責任感のあり方がパナソニックとサントリーでは正反対という感じがします。
──そういうクラブカルチャーの違いがあるチーム同士が高いレベルで競い合っているというのも興味深いですよね。
ホワイトカンファレンスの2位はヤマハ発動機です。サントリー、神戸製鋼に敗れての2敗。
後藤、ちょっとヤマハ発動機の武器に他のチームが慣れてきたという感じを受けます。ラグビースタイルがシンプルであるゆえの弱さもあるような。わかっていても止められないくらいなら、シンプルなことが強みになるが、わかっていることが止められるようだと、シンプルだというのは諸刃の剣でもある気がします。
瓜生 スクラムという強みが圧倒的じゃなくなった。
後藤 たとえば、スクラムでリコーにやられたり、神戸製鋼にもイーブンに組まれたり。
少し変化に乏しいかな。こういうことを言うのは怖いんですが(苦笑)。
ある程度、動きが確立されていて、いわゆるポッドラグビーなので、変化させずらい部分はあるような。
それでも、SOに清原(祥)くんを入れたり、外国人の使い方も変わってきているので、もちろん清宮(克幸監督)さんも、そういう部分はこちらが言うまでもなく認識しているとは思います。
──終盤戦に向けて、強い部分をさらに強くしていくのかなという気もするのですが。
後藤 そこはブレないでくるでしょう。
──現在、3位のリコーは神戸製鋼を破るなど、トップ4入りしてもおかしくない実力をつけてきていると言ってもいいのではないでしょうか。
後藤 リコーに関して面白いのは、外国人コーチがたくさんいるし、選手の数も多い。その中で、いろんなアイデアがあって、意見がずれていく可能性のあるところをきっちりと神鳥(裕之)監督がコントロールしているんだろうなという感じは受けます。
瓜生 これまでのリコーは、強いチームにも肉薄するけど、下位にも負けてしまうというような出来幅の大きいチームという印象がありましたが、今年はそれがあまりない印象。セットプレーが安定してきたことで、安定して自分たちの力を出せるようになってきた。
後藤 スクラムに関してはまっすぐ組むという信念のもとやっているようですね。
瓜生 メンバー自体がすごく仲が良くて、そういう部分もいい影響が出てきているのかなというのは思います。
──ヤマハ発動機とは現在の勝ち点差が6。今季ここまで好守が光るリコーですが、ベスト4入りのため、最後の4試合は勝ち点5ずつを取っていくような戦い方をする必要が出てくるかもしれませんね。
後藤 トップ4の勢力図が変わるのは見たいですね。
スタープレーヤーが抜けて“らしさ”を取り戻したNEC
豊田自動織機、サニックス、コカ・コーラの巻き返しは?
──日本代表組のハーフ団が抜けた影響などが懸念されたNECですが、逆にチームがまとまって頑張っている感じが伝わってきます。
後藤 真面目によく頑張っている。ベテランという域になっている瀧澤(直主将=PR)、臼井(陽亮=HO)、権丈(太郎=FL)、吉廣(広征=FB)、みんな頑張っている。
瓜生 元々、NECってまじめなラグビーをしていた。派手なプレーもできた選手が抜けたりして、元のNECに近くなった印象。
──確かに、NECらしさを取り戻した感じがします。なんか、応援したくなる。
後藤 うん。応援したい。本当に頑張っている。みんな普通の人ですからね。特殊能力なし(笑)。
──シーズン開幕直前に新しいヘッドコーチが退任するという厳しい状況でのスタートとなったキヤノンですが……。
瓜生 ヘッドコーチがシーズン開幕直前に変わるというのは選手たちとしてはキツかったと思います。どうしても雰囲気がフワフワしてしまう。春からやってきた環境と変わるという不安もあっただろうし、そのような状態でシーズンインしてしまうと、ああなってしまうだろうなとは思います。
個人的に今村ヘッドコーチ代行は、マイナス要素をプラスにしていく事ができる指導者だと思うので、期待しています。
──第8節では神戸製鋼を破るなど、シーズンが深まるにつれて調子を上げてきたようにも思います。
瓜生 神戸製鋼戦は良かった。しかし今シーズン見ていて思うのは、ディフェンスの場面であまりにも簡単に抜かれてしまうような場面が目立つこと。
昇格後から昨シーズンくらいまでは、自分たちはトップリーグに入ってきたばかりのチームだから必死にプレーしないと勝てないというような危機感があった。今シーズンはそういう危機感みたいなものがなくなっている感じがします。
しばらく中位と言っていい成績が続いて、自分たちはその場所に定着し、いつでも上を狙えるというような変な過信みたいなものがあるような気がして……そうじゃないんだ、常に必死にプレーしないといけないんだという姿をこの11月にいいリセットをして、後半は勝ち星を重ねていってほしいですね。
──庭井(祐輔)主将が開幕から不在なのも痛かった。
瓜生 彼がチームの勢いの象徴みたいなところがありますから。サンウルブズや日本代表ですごく成長していて、そのプレーをトップリーグで見られる事が楽しみでした。あのまま戻ってきてくれていたら、チームとしても良かったですね。
──レッドカンファレンスの下位3チームはまだ勝ち点がひと桁です。
後藤 豊田自動織機はけっこう頑張っている。もうひと皮向けて、さらに結果を出していくには、チームとしての経験しかないのかなという気がします。
両CTB(松本仁司、ヴァカジョセフウィルソン、
坂井克行)とかもすごくいいタックルするし、倒れてから起き上がるまでの時間とかもものすごく早い。やらなければいけないことが落とし込まれている。
80分間いいプレーを続けるフィジカルや能力が少し足りない。それで、どの試合も最後に力尽きている印象です。
──サニックスは昨シーズンは再昇格して、いきなり勝ちまくったりしたんですが、今年は苦しい試合が続いています。
後藤 BKとかフレアーな選手が多い、カーロス・スペンサー(元NZ代表SO)がコーチにいたり、そういうラグビーを追求しているんだと思うのですが、勝たなきゃいけないということを考えると、自分たちのスタイルを追求する一方で、現実にならないといけない部分も出てくる。
でも、あのラグビーをすることで、見に行こうというファンも出てくるだろうし、終盤戦はそれが結果に結びつくことを期待したいですね。
瓜生 昨シーズンよりももう少しFWの頑張りが欲しい気がします。BKは毎年すごく面白いアタックをする。やはりサニックスはBKのチームだとは思うのですが、それを支えるFWが泥臭く、ひたむきにターンオーバー狙っていったり、自陣からでもゴリゴリとファイトをしたり・・・それが今シーズンは少し元気がないかなという感じがしています。
福坪(龍一郎=LO)くんとかも怪我していますしね。ああいう泥臭いタイプが出場してくれば、BKももっとイキイキする気がします。
──唯一、勝ち星のないコカ・コーラは。
瓜生 キヤノン戦は勝ちそうな試合でした。
後藤 東芝ともいい試合はした。
後藤 両CTBが外国人でなんとか持ってこられるけど
瓜生 ケガ人も多いですからね。外国人選手の出場も安定できていません。
──ただ、同カンファレス6位との勝ち点差が5しかないので、1ヶ月間で立て直し、後半戦一気に盛り返して、レギュラーシーズンで残留を決める可能性もあるので、そういうサプライズを期待したいですね。
(以下、連載第3回に続く)