トップリーグ2018-2019 第3節レポート(サントリー 20-36 神戸製鋼)

ジャパンラグビー トップリーグ 2018-2019 第3節
2018年9月14日(金)19:30キックオフ/東京・秩父宮ラグビー場
サントリーサンゴリアス 20-36 神戸製鋼コベルコスティーラーズ

サントリーサンゴリアス

サントリーサンゴリアスの沢木監督(右)、流キャプテン

サントリーサンゴリアスの沢木監督(右)、流キャプテン

沢木敬介 監督

「お疲れ様でした。今日は、試合の『入り』に自分たちのラグビーができず、神戸の強いパッションと、サントリーが勝つ気持ちが伝えられなかったため、久々の敗戦となりました。久々に敗戦の悔しさを思い出させてもらったことで、『次は必ず勝つ』『絶対にチャンピオンになる』という強い意識をもらいました。選手達にはこの悔しい気持ちを忘れずに練習をしてもらうようにします」

──10番の田村煕を早い時間(前半23分)に22番マット・ギタウに入替しましたが? また、今日は多くの観客がダン・カーターを見に来たと思いますが、あの入替によりダン・カーターとマット・ギタウとのマッチアップが早く実現したのですが?

「あの点差(注:入替した時点で3-20)であれば、流れを変えるためにも代えなければいけないと思いました。ヒカルのプレーが悪いわけではありませんでした。ダン・カーターにマット・ギタウをマッチアップさせるというようなことは全く考えていません。3-20と大きな点差をつけられていましたが、自分たちが崩されて取られたトライはなく、あの点差になってしまったのでいい勉強になりました。この敗戦を今後の試合に生かしたいと思います」

──特に前半にボールをターンオーバーされることが多かったと思いますが?

「神戸がいい判断をして、いいプレッシャーを掛けていました。サントリーの選手達にそのような意識づけをできなかったことはコーチのミスです。『絶対にあきらめない』というサントリーのプライドを見せるような試合をしなければいけません」

──沢木監督ご自身も現役時にはSOでしたが、今日のダン・カーターのプレーについてどう感じましたか?

「『素晴らしい』の一言です。教科書が日本に来てくれたということです。ちびっこのラグビープレーヤーにとっても、また、日本のすべてのラグビー選手にとっても見本になります。日本の選手にとって、プレーヤーとしてのスペースの判断だけでなく、キック・パス・ランのどれもがすべて素晴らしい選手です」

流大 キャプテン

「今日は神戸製鋼さんに『おめでとう』と申し上げます。プレーとしてサントリーより神戸の方が良かったと思います。試合全体として神戸の方が上でした。神戸が強い意志を持ってプレーしていました。サントリーがリアクションでも負けていました。次の試合はNEC戦ですが、次戦にこの負けをどう生かすかだと思います。今日の試合がトーナメント戦だったらこの敗戦でチャンピオンになれなくなったという意識を強く持って、NEC戦に臨みたいと思います」

──後半、何度も敵陣ゴール前に攻め込みながら、トライを取りきれませんでしたが?

「いつも試合であることですが、レフリングへの対応がしっかりできなければいけません。2人目がボールに行ってしまっています。これはリーダーのミスです。しっかりレフリングに対応してボールキープしていかなければいけません。また、トライを取りきれなかったのは、今日の試合では神戸のパッションが素晴らしかったためだとも思います」

──流選手は選手としてダン・カーターと対戦してみて、どう感じましたか?

「素晴らしかったと思います。常にオプションを2つ・3つ持っていて、ちょっとギャップがあればそのギャップを突いてきます。すべてにレベルが高い選手です」

──今日の試合では神戸製鋼のファンの方の声援が多く、秩父宮での試合なのにアウェイ感がすごかったのでは?

「そうなるのはわかっていました。大観衆の中で試合ができるのは選手にとってもうれしいことです」

──今日の試合では前半に大きく点差をつけられて、後半、追いかける試合展開になりましたが?

「こういう経験は何回かやっています。第1節のトヨタ戦もそうでした。絶対にあきらめない気持ちが大事だと思っています。自陣でプレーすることを避けてプレッシャーを掛けて敵陣に入りたいと思ってやりましたが、今日はうまくいきませんでした」

──今日の試合の反省から今後に改善するべき点は?

「我慢強くなることです。フェイズを重ねたところでは相手とのボディ・コンタクトがしんどくなりますが、そこを我慢強さで耐えなければいけません。そのうえで、サントリーのアタックでの強みの意識を持ってやっていきたいと思います」

──流選手としては、昨季までサントリーで一緒だった日和佐選手とのマッチアップとなりましたが?

「日和佐選手には、今日はかなりプレッシャーを掛けられました。よくボールに働きかけてきていました。こちらからも日和佐選手に対してもっとプレッシャーを掛けないといけないと思った試合でした」

神戸製鋼コベルコスティーラーズ

神戸製鋼コベルコスティーラーズのディロン ヘッドコーチ(右)、橋本ゲームキャプテン

神戸製鋼コベルコスティーラーズのディロン ヘッドコーチ(右)、橋本ゲームキャプテン

デーブ・ディロン ヘッドコーチ

「今日は勝つことができて良かったです。神戸として狙っているラグビーができていました。サントリーは今日の試合からさらにレベルアップしてくるでしょう。次にサントリーと対戦することになったら、さらにレベルアップしたサントリーに勝たなければいけないと思います」

──狙っているラグビーができていると言いましたが、どのくらいゲームプランを遂行できましたか?

「フェイズを重ねた時に相手のディフェンスをよく読んで正しいオプションを使えていました。これからこのような試合の経験を重ねればもっとチームが成長できると思います」

──(他の記者は)皆、ダン・カーターについての質問が多いのですが、今日はフォワードの頑張りも良かったと思います。特に前半、6番ハッティング選手の動きが良かったと思いますが?

「私はFWコーチ出身なので、これはうれしい質問です。スターターの1番から8番の選手達も、リザーブの選手達も皆、いい仕事をしてくれました。セットプレーでも強く、また、アタック・ディフェンスでもフォワード選手がいい仕事をしてくれました。選手達がレギュラー争いの中で成長してくれています。ハッティング選手はチームにとっては特別な存在です。スピードもバックス選手並みですし、彼のいいパフォーマンスを他の選手も見習ってほしいです。こういったことをプライドにしてもらいたいと思います。今日のハッティング選手の入替は、ケガをしたためではありません。シーズンを続けていいパフォーマンスを続けられるように、前半だけで交替させました」

──今日の試合で課題として出た点は?

「規律の部分で良くないところがありました。前半の終盤10分と後半のはじめは、ブレイクダウンでの規律面でよくなかったところがありました。今後の課題としたいと思います」

橋本大輝 ゲームキャプテン

「今日はどうもありがとうございました。今日はサントリーにチャレンジしようと覚悟を決めて試合に臨みました。試合ではいい『入り』ができました。ダン・カーターがいい流れを作ってくれました。オールブラックスはやはり伊達ではないなと思いました。多くの観客が観戦に来ていただいて、試合を楽しんでくれたと思います」

──今日はダン・カーターにとっての初めての神戸製鋼での試合でしたが、ゲームに入る前はチームとして不安などありませんでしたか? チーム内でのトークはどんなものでしたか?

「神戸製鋼では今年は特にいい外国人選手が多くいます。ゲームメイクは外国人選手に任せています。ダン・カーターは細かなコミュニケーションに優れています。練習の時だけでなく、試合中にも細かな動きの中でコミュニケーションをとってくれることによって他の選手にとってプレーがやりやすくなっています。」

──今日は秩父宮での試合なのにまるでホームのように神戸のファンが多く見に来ていましたが?

「こんなに多くの観客が入った試合は初めてだと思います。本当にダン・カーターはすごいと思います」

──ダン・カーターが細かなコミュニケーションをとってくれていたと言いましたが、どういうコミュニケーションをとっていたのですか?

「動きの中で『誰を見ろ!誰を見ろ!』とチームメートに声を掛けてくれていました。次にやらなければいけないことをよく指示してくれて、大変助かりました。ダン・カーターは一スポーツ選手として尊敬に値する選手です。私生活でも練習時も、それへの取り組みや言葉からプロ意識を感じます。どうやるか、ということでチームの皆を引っ張っていい影響を与えてくれています」

──前節の札幌での試合が地震の影響で延期になり、2週間、ゲームが空いてしまいましたが?

「自分達ではコントロールできない地震、停電という出来事でした。選手としては1週間休めたことをむしろポジティブにとらえてこの1週間の練習をしてきました。ダン・カーターがどういうプレーをするか、チームへのコネクトロードが上手くいくか、という面でも少し不安もありましたが、試合が始まって5分から10分経過したらそのような不安は全くなくなりました」

──サントリーのアタックへ粘り強いディフェンスを見せていましたが、練習での生タックルが効果ありましたか?

「今日のサントリー戦では『Win the Set』を課題にしました。相手より早くセットする。それができたのでディフェンス面でもいいディフェンスができたと思います」

ダン・カーター 選手

ダン・カーター 選手

ダン・カーター 選手

「コンニチワ。今日はチームにとっても私にとってもスペシャルな試合でした。昨年度のチャンピオンチームに対して大きなチャレンジでした。神戸はここ数年しばらくサントリーに勝っていないと聞いていましたが、今日は勝てて良かったと思います。個人的には、やっとトップリーグの試合に出ることができて良かったと思います。神戸製鋼の試合に出たくて試合が楽しみでした。今日はたくさんの観客の中でプレーできてよかったです」

──日本のラグビーにアジャストするのは難しくはありませんでしたか?

「特に難しいことはありませんでした。来日後、これまで2か月いろいろな方に助けてもらいチームに慣れることができました。夏合宿では試合も見ていたし、ウォーターボーイ(キックティー係)もやり、チームには慣れてきました。今日の試合ではチームメートが皆よくやってくれていました。私がマン・オブ・ザ・マッチをもらいましたが、マン・オブ・ザ・マッチは神戸のどの選手がもらってもおかしくなかったと思います。チームメートに感謝します」

──トップリーグの試合はスーパーラグビーと比べてどうでしたか?

「日本のラグビーのスタンダードは毎週のように上がっていると思います。日本のラグビーはとても速いプレーです。今日、私は80分間やるのかな? 交替があるかな? と思っていましたが、80分間プレーすることになりました。後半は、雨が降り始めたこともありプレーがスローになったため、少し助かったと思います。私にとって今日は約4か月ぶりのラグビーの試合になりましので、すこし緊張しました。プロラグビー選手になって16年もたつのになぜかまだ緊張してしまいます。新しい国に行き、新しいチームに加入しての初めての試合でしたので自分のプレーをリスペクトしてもらえるように心がけてプレーしました。まだ、スタートしたばかりです。毎週、ひとつひとつ改善していかなければいけないと思います」

──来日時の会見で、日本であまりラグビーを観戦していない方々がダン・カーター選手のプレーを見てラグビーを面白いと思ってラグビーを見るようになってほしいと言っていましたが?

「今日は最初の試合でもありプレッシャーもかかりましたが、自分のプレーでスキルも出すことができいい自信になりました。これまで練習でハードワークをやったおかげだと思います。チームメートの選手達も私がやりやすいようにしてくれています。今日は自分の仕事ができて良かったと思います」

──今日は21得点の活躍でした。最初のゴールキックはそれほど難しい位置ではなかったのに外してしまいましたが?

「すこしプレッシャーはありました。自分のキャリアとしてこれまで何千回もゴールキックを決めてきましたが、思い通りにはいきませんでした。経験により、次の仕事ではよくできるようになりました。今日は、前半にトライも取れてとても嬉しいです。神戸に帰ったらキックの練習をしっかりしようと思います」

──今日のゲームキャプテンの橋本大輝選手が先ほど、『チームがダン・カーターとうまくコネクトできるかどうか心配だったが、試合開始5分から10分でその不安は無くなった』と言っていましたが?

「橋本選手はすばらしいリーダーです。いいリーダーのお蔭で不安は無くなりました。神戸にはリーダーが務まる選手が多くいるのはチームの強みです。橋本選手とは何度も食事に行きましたが、(日頃は英語が苦手と言っていますが)ビールを一杯飲むとすぐにコミュニケーションが取れるようになります」

──神戸製鋼のチームを強くするには何が必要だと思いますか?

「神戸製鋼としては毎週、試合が続く中で成長を続けなければいけません。試合では最初の30分いいプレッシャーをかけることができると、次の30分はあまりうまく行かないこともあります。80分間理想的な時間を続けることでチームとしての強みをキープしていくことが大事だと思います。今日も必ずしも継続的にいいプレーはできなかったので、しっかり80分間いいプレーを続けられるようになることが課題です。神戸に帰ったらPCとiPadでチームのプレーを振り返って、次の練習に入りたいと思います。来週はトヨタ戦ですが、トヨタのジェイク・ホワイト監督からも見習うところを得たいと思っています。来週のトヨタ戦に備えてしっかり練習して、毎週毎週成長していかなければいけません。神戸にとっては優勝という目標へのハードルはまだまだ多いと思っています。
今日の記者会見はまるでテストマッチのあとの記者会見のように多くの記者が参加しており驚きました。ワールドカップ2019日本大会まであと12カ月しかありません。マスコミの方々には、ますます、多くのラグビー情報を発信してほしいと思います」

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