ジャパンラグビー トップリーグ2020 開幕節プレビュー<前編>

3シーズン連続での開幕節での対決となるパナソニックとクボタ photo by Kenji Demura

3シーズン連続での開幕節での対決となるパナソニックとクボタ
photo by Kenji Demura

秩父宮では日野がNTTコムに挑戦し、東芝-サントリーの熱き府中ダービーも
パナソニックが熊谷にクボタを迎え、磐田ではヤマハ-トヨタの昨季3決再現

平成最後のリーグチャンピオンが決まってから、実に393日。
トップリーグが再始動する。
「これが本来のかたち」(太田治チェアマン)という総当たり方式のリーグ戦によって令和初のトップリーグ王者の座が争われることになったジャパンラグビー トップリーグ2020の開幕を前に、1月12日に予定されている第1節8試合の見どころを対戦カードごとに前・後編の2回にわたって紹介する。
前編では、埼玉・熊谷、東京・秩父宮、静岡・ヤマハ(磐田)での4試合について取り上げる。

text by Kenji Demura

<パナソニック ワイルドナイツ−クボタスピアーズ(13:00 埼玉・熊谷)>

3季連続となる開幕節での対戦となる両チーム。パナソニックが連勝中だが、2018年8月31日に行われた昨シーズンの開幕戦では15—11、さらに2018-2019のトップリーグカップ3位決定戦(19年1月19日)での再戦でも24—21という接戦を演じている。
また、直接対決はなかったものの、2019年6〜8月に行われたトップリーグカップ2019ではプール戦敗退となったパナソニックに対して、クボタは決勝まで勝ち上がっているだけに、後者に勢いがあると言えるかもしれない。

通算4度、トップリーグ覇者となっているパナソニックだが、過去3シーズンは優勝を逃しており、特に昨季は6位という低空飛行と言ってもいい成績に甘んじただけに、巻き返しを図るシーズンとなる。
新たに主将に指名されたHO坂手淳史主将は「伝統的な、激しいディフェンスから点数を取っていくスタイルを復活させたい。ディフェンスに注目を」と、かつて2013-2014シーズンから3連覇を果たした黄金時代に顕著だった守りで相手ボールをターンオーバーし、カウンターアタックからのトライを量産していくスタイルを取り戻してのタイトル奪還を宣言する。

その坂手主将を筆頭にRWC2019で活躍した日本代表選手の数=6人はトップリーグ中最多。
さらに、CTBダミアン・デアリエンディ(南アフリカ)、LOサム・ホワイトロック(ニュージーランド)、FL/NO8デービッド・ポーコック(オーストラリア)など、世界のスーパースターたちも加わったキラ星軍団がチームとしてどんな融合ぶりを見せるのか注目される。

対するクボタは昨季のリーグ戦では前述のとおりパナソニック、そしてヤマハ発動機(18—20)の上位陣にいずれも惜敗。さらに、1〜8位決定トーナメント初戦(準々決勝)でもサントリーを追い詰めるなど(26—28)、「トップ4以上」(CTB/SO立川理道主将)という目標を達成できるだけの実力を持つチームに成長していることは確かだろう。
圧倒的な存在感を見せる立川主将に加えて、FW陣にはRWC2019で日本代表のゲームキャプテンを務めたFLピーター・ラブスカフニもおり、リーダーシップという面でも盤石。
NO8/FLドウェイン・フェルミューレン(南アフリカ)、SOバーナード・フォーリー(オーストラリア)、CTBライアン・クロッティ(ニュージーランド)と、こちらもRWC2019で活躍したスーパースターが揃うだけに、世界トップレベルのプレーの連続となること請け合いだ。

<RWC2019登録選手>
●パナソニック=PR稲垣啓太、PRヴァル アサエリ愛、HO堀江翔太、HO坂手淳史、SO/CTB松田力也、WTB福岡堅樹(以上、日本)、LOサム・ホワイトロック(ニュージーランド)、FL/NO8デービッド・ポーコック(オーストラリア)、CTBダミアン・デアリエンディ(南アフリカ)

●クボタ=FLピーター・ラブスカフニ(日本)、NO8/FLドウェイン・フェルミューレン(南アフリカ)、SOバーナード・フォーリー(オーストラリア)、CTBライアン・クロッティ(ニュージーランド)

パナソニックHO坂手主将とクボタCTB/SO立川主将 photo by Kenji Demura

パナソニックHO坂手主将とクボタCTB/SO立川主将
photo by Kenji Demura

<日野レッドドルフィンズ−NTTコミニュケーションズシャイニングアークス(11:30 東京・秩父宮)>

昨季、トップリーグ昇格後の最初の試合でいきなり宗像サニックスブルースを33-3で圧倒し、初勝利を挙げるセンセーショナルなデビューを果たした日野。リーグ戦での勝利はその1勝にとどまったものの、入替戦で近鉄ライナーズを破って残留を果たした。
今季の目標は「トップ8」(FL/LO村田毅共同主将)
「ワールドカップに出た選手はいない。その分、チームとしてどうあるべきかを考えてきた」と、結束力で勝負する。
その村田共同主将をはじめ、41歳のPR久富雄一を筆頭に元日本代表組など、昨季も経験豊富なベテランが揃っていた日野だが、今季はさらにPR浅原拓真、LO北川俊澄、LOディネスバラン・クリシュナン、NO8堀江恭佑など、トップリーグでの戦いを知り尽くす新戦力が加入。
それでも、「自分たちは無印」と強調する細谷直監督が8強入りのポイントとして挙げるのも「個ではなく、チームとしてゲームプランどおりに規律を守って戦えるか」だ。

一方、昨季、過去最高の成績である5位となったNTTコムにとっては、当然ながら「しっかりトップ4を狙う」(FL金正奎主将)シーズンとなる。
HOマルコム・マークス(南アフリカ)、SOクリスチャン・リアリーファノ(オーストラリア)と、RWC2019で活躍した外国人選手が新加入し、「ワールドカップでの経験なども惜しみなく共有してくれて、いい影響しかない」 と金主将。
日本人選手も、すでに昨年6〜7月のトップリーグカップ時にお披露目を済ませた大物WTB山田章仁や韓国代表WTB張容興、さらにPR齊藤剣、SO松尾将太郎、CTB前田土芽、WTB安田卓平といった大学時代にU20日本代表や中には日本代表キャップホルダーでもある有望な新人も多数加わった。

昨季は第4節(9月22日)に対戦し、NTTコムが前半18分までに4トライを挙げるなど45—28で日野を退けた。
「新戦力の加入により、チームの勢いは加速している」(ヒュー・リース・エドワードヘッドコーチ)というNTTコムが再度、トップリーグ上位チームのスタンダードを見せつけるのか。
「コンタクトエリアの強度をもうワンランク上げていければ、十分戦っていける戦力は整っている」(細谷監督)という日野としては昨季同様、いきなりのアップセットを成し遂げて、勢いに乗りたいところだろう。

<RWC2019登録選手>
●NTTコム=NO8アマナキ・レレイ・マフィ(日本)、HOマルコム・マークス(南アフリカ)、SOクリスチャン・リアリーファノ(オーストラリア)

日野SHプル共同主将、FL/LO村田共同主将とNTTコム金主将 photo by Kenji Demura

日野SHプル共同主将、FL/LO村田共同主将とNTTコム金主将
photo by Kenji Demura

<東芝ブレイブルーパス−サントリーサンゴリアス(14:00 東京・秩父宮)>

いきなりライバル心がむき出しとなる“府中ダービー”での開幕となる両チームだが、今季は共に新指揮官に導かれるかたちで王者奪還を目指すシーズンとなる。

サントリーと並んで通算5回のトップリーグ優勝という輝かしい歴史を誇る東芝だが、昨季はまさかの11位に沈んだ。
10年間、トップリーグタイトルから遠ざかっている名門チームの再建のために白羽の矢が立てられたのがトッド・ブラックアダーヘッドコーチ。元オールブラックス主将で、現役引退後はスーパーラグビーのクルセイダーズやイングランドの名門バース(プレミアシップ)などで指導にあたってきた。
「東芝の伝統であるフィジカルなプレーとハードワークをベースにしつつ、うまくボール使いながら、スペースをクリエイトしていく」
そんなふうに、王座奪還に向けて目指すべきラグビースタイルを語る新HCだが、共同主将を務めるSH小川高廣によると「厳しいですけど、いままで(の東芝の指導者)に比べらたら、そうでもない」とか。
いずれしても、東芝復活を印象付けるためには、開幕戦の“府中ダービー”で是が非でもいいスタートを切りたいところだ。
「サントリーをボコりたい(NO8/FL徳永祥尭共同主将)というのが、偽らざるメンバー全員の気持ちかもしれない。

一方、昨季のファイナルでは、神戸製鋼に5—55というまさかの大敗を喫して、王者の座から引き摺り降ろされたサントリーの新たな指揮官となったのはミルトン・ヘイグ監督。
RWC2019まではジョージア代表監督を務めていたニュージーランド出身の指導者だ。
RWC2019の日本代表に計5人を輩出したサントリー。
ヘイグ新監督も「マツ(FB松島幸太朗)はワールドカップのベストプレーヤーのひとりだったし、流(大=SH)も素晴らしいリーダーシップを発揮していた、亮土(CTB中村)のソリッドなプレーぶりも良かった」と、ジャパン組がキープレーヤーであることを隠さない。
もっとも、同監督によると「サム(CTBケレヴィ=豪州代表)も含めて、インターナショナルプレーヤーたちがチームファーストに徹したプレーができるかどうか」が、サントリーがチャンピオンチームに返り咲くためのポイントだという。
PR祝原涼介、FL/NO8テビタ・タタフという大学出のルーキーも12月に行われたプレシーズンマッチに全試合出場するなど、即戦力として期待がかかる。

<RWC2019登録選手>
●東芝=NO8/FLリーチ マイケル、NO8/FL徳永祥尭(以上、日本)、FL/NO8 マット・トッド(ニュージーランド)

●サントリー=HO北出卓也、FL/NO8ツイ ヘンドリック、SH流大、CTB/SO中村亮土、FB松島幸太朗(以上、日本)、CTBサム・ケレビ(オーストラリア)

東芝 NO8/FL徳永共同主将、SH小川共同主将とサントリーSH流共同主将 photo by Kenji Demura

東芝 NO8/FL徳永共同主将、SH小川共同主将とサントリーSH流共同主将
photo by Kenji Demura

<ヤマハ発動機ジュビロ−トヨタ自動車ヴェルブリッツ(13:00 静岡・ヤマハ)>

2季連続で3位決定戦を戦っている同士の対戦。
共に今季、選手やコーチ陣に大きな変化があった。
4強入りはするものの、優勝までは届かないここ最近の現状を打破するため、それぞれのラグビースタイルも変化するのか。
両チームのキャプテンは、今季目指すそれぞれのラグビースタイルに関して以下のように説明する。
「自分たちのスタイルを貫いて、限界を超える」(ヤマハ発動機LO大戸裕矢主将)
「強みであるフィジカルにニュージーランドスタイルのパススキル加えて、トップリーグ優勝を狙う」(トヨタ自動車FL姫野和樹主将)

ヤマハ発動機には日本代表のFWコーチとしてジャパンが世界に誇るスクラムを作り上げた長谷川慎コーチが復帰。
一方、トヨタ自動車にはNO8キアラン・リード(ニュージーランド)、FBウィリー・ルルー(南アフリカ)というRWC2019でも活躍」した大物外国籍選手が新加入。
それぞれが目指すラグビースタイルの具現化に大きなプラス要因になることは間違いなさそうだ。

当然ながら、まずはどちらがコンタクトエリアで優位に立つのかが試合のポイントになる。

<RWC2019登録選手>
●ヤマハ発動機=FL/LOヘル ウヴェ(日本)、FL/NO8クワッガ・スミス(南アフリカ)

●トヨタ自動車=PR木津悠輔、NO8/FL姫野和樹、SH茂野海人(以上、日本)、NO8キアラン・リード(ニュージーランド)、FBウィリー・ルルー(南アフリカ)

ヤマハ発動機LO大戸主将とトヨタ自動車NO8姫野主将 photo by Kenji Demura

ヤマハ発動機LO大戸主将とトヨタ自動車NO8姫野主将
photo by Kenji Demura

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