ジャパンラグビー トップリーグ2020 開幕節プレビュー<後編>
王者神戸はキヤノンを迎え撃ち、福岡では宗像サニックス —NEC、
リコー−Hondaと昇格組決戦NTTドコモ−三菱重工相模原は花園で
1月12日に予定されている第1節8試合の見どころを対戦カードごとに紹介する開幕節プレビュー。
後編は兵庫・ユニバ(神戸)、大阪・花園、福岡・レベスタでの4試合について取り上げる。
text by Kenji Demura
<神戸製鋼コベルコスティーラーズ−キヤノンイーグルス(13:00兵庫・ユニバ)>
2018-2019年シーズン、実に15季ぶりのトップリーグ制覇を果たした神戸製鋼は地元にキヤノンを迎えての連覇へのシーズンインとなる。
昨シーズン、ウェイン・スミス総監督とSOダン・カーターというラグビーワールドカップ(RWC)2015を制したオールブラックスの指導者と中心選手が加わり頂点を極めたチームには、今季さらにニュージーランド代表として81キャップを誇るLO ブロディ・レタリックも加入。
今季6シーズン目で共同主将も務めるSHアンドリュー・エリスも含め、要所をオールブラックス勢が占める他、LOトム・フランクリン、LO/FLグラント・ハッティング、SOヘイデン・パーカー、CTB/FBリチャード・バックマン、WTB/CTBアンダーソン フレイザーなど溢れるばかりのタレントや実績を誇る選手が特別枠選手や帰化選手にも揃う。
スミス総監督—デーブ・ディロンヘッドコーチ体制によって徹底された「ボールを動かし続けるエキサイティングなラグビー」(ディロンHC)は、進化することこそあれ、退化することはなさそうだ。
昨季、NO8としてトップリーグのベスト15に選ばれながら、PRにチャンレンジしてRWC2019時の日本代表に欠かせない戦力となり、かつ人懐っこいキャラクターで人気爆発中の中島イシレリの他、同じくRWC2019で圧倒的な存在感を見せたCTBラファエレ ティモシーも新加入(共に帰化選手)。
もちろん、日本人選手もRWC2019でジャパンの最後列の座を守ったFB/CTB山中亮平をはじめ、PR山下裕史、PR平島久照、PR渡邉隆之、HO有田隆平、LO/NO8谷口到、FL橋本大輝、SH日和佐篤など日本代表キャップホルダーたちがズラリと顔を揃える他、ジュニアジャパンやすでに日本代表としての経験も持つ若手選手も多く、戦力は圧倒的だ。
対するキヤノンは今季から日本代表SH田中史朗が加わり、SO田村優と組むジャパンHB団がどんなゲームを見せて王者を脅かすのか。
かつてNTTドコモでもプレーした南アフリカ代表CTBジェシー・クリエルや元神戸製鋼のCTB南橋直哉なども新加入。
2シーズン目となるアリスター・クッツェーヘッドコーチは2015—2016年シーズンに神戸製鋼のヘッドコーチを務めた経験もあり、敵チームに精通していることも確かだろう。
「例年以上に練習量が増えた」(HO庭井祐輔共同主将)
長いプレシーズンで鍛え上げてきたディフェンス面で神戸製鋼のアタックにプレッシャーをかけられるかどうかが、いきなりの大アップセットのためのキーとなりそうだ。
<RWC2019登録選手>
●神戸製鋼=PR/N O8中島イシレリ、CTBラファエレ ティモシー、WTBアタアタ・モエアキオラ、FB/CTB山中亮平(以上、日本)、LOブロディ・レタリック(ニュージーランド)
●キヤノン=SH田中史朗、SO田村優(以上、日本)、CTBジェシー・クリエル(南アフリカ)
<リコーブラックラムズ−Honda HEAT(11:45大阪・花園)>
6位、7位、8位。
ここ3シーズン、中堅どころというポジションを脱しきれない成績が続くリコー。
「トップリーグチャンピオン」(CTB濱野大輔共同主将)という目標達成のため、意識改革にも重点を置いたプレシーズンを過ごしてきた。
10月には、ラグビー道具を持たない八丈島合宿なども行なった結果、「外からの『やれ』という働きかけではなく、自分の内側から、主体性を持って動けるようになっている」と、神鳥裕之監督は選手たちの意識が変わってきたことを強調する。
「ワールドカップを沸かしたような、ピカピカのキャリアを持つ選手はひとりもいない。逆にそこを強みにしたい。全員でハードワークしていく」(同監督)
そんなチームに圧倒的なプラスアルファをもたらす存在として大きな期待がかかるのが新加入のSOベリック・バーンズ。
オーストラリア代表として51キャップを誇り、徹底的に味方を生かせる世界最高水準の司令塔であることは2013年から昨シーズンまで在籍したパナソニックでのプレーぶりで証明済みだろう。
共に、自らのプレーでチームを引っ張っていけるNO8松橋周平、CTB濱野両共同主将のリーダーシップも、上位進出へのポイントになる。
4度目の昇格だった昨シーズン、コカ・コーラ、東芝、宗像サニックス、キヤノン、NECを破り、一気に9位となったHonda。
目標であるベスト8入りのため、FL小林亮太主将がチームの原動力になるような成長ぶりに期待するのが日本代表としてRWC2019でも圧倒的な存在感を見せたPR具智元をはじめとする若いFW第1列。
「自分たちで考えながら頑張っている」(同主将)という23〜27歳のフロントローたちが、百戦錬磨の他チームのベテランたちとどう対峙していくのか。
昨季も開幕カードだったリコー戦で34-39と互角の戦いを見せてボーナスポイントを獲得し、自信を深めた面があったHondaだけに、今季は開幕戦勝利を飾り、一気に勢いに乗りたいところだ。
<RWC2019登録選手>
●Honda=PR具智元、WTBレメキ ロマノ ラヴァ(以上、日本)、LO RGスナイマン(南アフリカ)
<NTTドコモレッドハリケーンズ−三菱重工相模原ダイナボアーズ(14:00 大阪・花園)>
いずれも入替戦を経て、今季トップリーグ復帰を果たした同士の対戦。
当然ながら、「お互いに絶対に落とせない試合」(NTTドコモWTB茂野洸気主将)となる。
降格となった2017-2018シーズンもNEC、キヤノン、豊田自動織機、宗像サニックス、コカ・コーラ、近鉄から計6勝を挙げるなど、トップリーグで十分戦える実力を持っていたと言ってもいいNTTドコモ。
昨年6〜7月に行われたトップリーグカップ2019でも宗像サニックスに33−5で快勝するなど、「レッドハリケーンズなので、トップリーグの台風の目になる」(茂野主将)ポテンシャルは十分だ。
RWC2019でもハードワークが光ったFLヴィンピー・ファンデルヴァルト、同じく日本代表キャップホルダーでもあるCTBパエア ミフィポセチ、サンウルブズでのプレーでもおなじみのFBリアン・フィルヨーンなどベテランのキープレーヤーたちは健在。
前述のカップ戦でチーム内MVPになったLO大椙慎也、CTB小林正樹などの中堅どころの成長もある一方、新戦力としてニュージーランド代表24キャップを誇るFLリアム・スクワイアなども加わり、チームバランスが良くなっていることも確かだろう。
昨季の入替戦で豊田自動織機に31-7で快勝し、実に2007—2008年シーズン以来のトップリーグ昇格を果たした三菱重工相模原。
2012-2013シーズンから6季連続して入替戦でトップリーグの壁に跳ね返され続けてきた苦難を乗り越えての戦いとなる。
「どのチームを食ってやろうか。12シーズンぶりの戦いを楽しむ」
NO8土佐誠主将はそんなふうにチームとしてのモチベーションを語るが、その土佐主将をはじめ、PR川俣直樹、HO安江祥光、LOトーマス優デーリックデニイ副将、LO小野寺優太、FL武者大輔、SH榎本光祐、WTB中濱寛造など、他のトップリーグチームで活躍してきた選手たちも揃っているだけに経験値としても問題ないだろう。
すでにサンウルブズでも世界に通用するプレーぶりで注目を集め、土佐主将も「日本代表最有力候補。日本ラグビーでどう成長していくのか注目してほしい」と期待感を表明するCTBマイケル・リトルがチームを牽引する活躍を見せられるかもポイントになる。
ちなみに、昨季のトップチャレンレンジリーグでは1stステージ、2ndステージ共にNTTドコモが勝利。また、昨年11月29日に行われたプレシーズンマッチ(練習試合)でも54—19でNTTドコモが勝っている。
<RWC2019登録選手>
●NTTドコモ=FLヴィンピー・ファンデルヴァルト(日本)
<宗像サニックスブルース−NECグリーンロケッツ(14:00 福岡・レベスタ)>
開幕節で唯一の九州開催。
地元の宗像サニックス がNECを迎え撃つかたちだが、実はこのカード4年連続でのレベスタでの対戦。ただし、昨季は24—15、一昨季は29—17と、いずれもアウェーチームであるNECが勝利を収めているだけに、「九州から盛り上げていくためにも、いいラグビーをしていく。選手が体を張り続けて、ファンに喜んでもらう」(鬼束竜太アシスタントコーチ)ことを目指す宗像サニックスにとって、是が非でもものにしたい一戦であることは確かだろう。
今季からチームを引っ張っていくことになったLO福坪龍一郎主将は「サニックスのランニングラグビーを復活させる」と宣言。
同主将によると、コーリー・ブラウン新ヘッドコーチは「スマートな人」とのことだが、その一方でランニングラグビーを復活させるため、ひたすら厳しいフィットネスのトレーニングを続けてきたとも。
新戦力もLOマーク・アボット、NO8ラーボニ・ウォーレン・ボスアヤコ、CTB今村雄太、CTBティム・ベネットといったトップリーグでの実績も十分な選手たちに、アルゼンチン代表として41キャップを誇るSO/CTBサンティアゴ・ゴンザレスなど、可能性を感じさせるメンバーが揃った。
一方、3シーズン連続での九州でのアウェー戦勝利を目指すNECは、日本選手権で3度の優勝を飾るなど2000年代の黄金期を支えた浅野良太元主将がヘッドコーチとしてチームに復帰。
「浅野ヘッドコーチの指導の下、春からハードなトレーニングを積み重ねてきた。持ち味である攻撃的ディフェンスを前面に出して戦っていく」とFL亀井亮依主将が胸を張るとおり、こちらも厳しいトレーニングを続けながら、自分たちらしいスタイルへの自信を深めながらのシーズンインとなる。
スーパーラグビーやマオリオールブラックスでのプレー経験を持つFLサム・ヘンウッド、サモア代表主将のNO8ジャック・タファ ラム、ニュージーランド出身で昨季はメジャーリーグラグビーのユタで主将兼司令塔として136得点を記録したSOティム・オマリー、U20代表SO金井大雪、フランスやスーパーラグビーでのプレー経験を持つWTBロラギ・ヴィシニアなどポテンシャルの高い新戦力がどうチームに馴染んでいくかも注目される。
アタックの宗像サニックスとディフェンスのNECという対比が興味深い一戦となりそうだ。
<RWC2019登録選手>
●宗像サニックス=LOジェームス・ムーア(日本)
●NEC=FL /No8ジャック・タファ ラム(サモア)