トップリーグ2020 第5節レポート(三菱重工相模原 21-14 NEC)
ジャパンラグビー トップリーグ 2020 第5節
2020年2月16日(日)13:00キックオフ/神奈川・相模原ギオンスタジアム
三菱重工相模原ダイナボアーズ 21-14 NECグリーンロケッツ
気温10℃、小糠雨降るギオンスタジアム。共に4試合を戦い終え、未だ勝利を味わえない両チームとファンから伝わるのは「勝利」への熱気である。
まずスコアしたのはNEC。前13分相手ゴール前のラックサイドを突いたSH吉川のトライで先制した。三菱重工は17分、リトルがモールサイドを鋭く切り込み7-7の同点。その後両チームは相手22m内に入るがミスを繰り返す。逆転したのは三菱重工、前30分CTBヴァエガのインターセプトから80Mの独走トライだ。しかしリードを守れたのはわずかの間、前37分NECのCTBネマニが堅い相手ディフェンスを突破して14-14の同点で折り返しへ。
後半に入り、雨の中両チームのハンドリングが悪くノックオンからターンオーバーを繰り返す展開。お互いペースをつかめないまま20分が経過し、均衡を破ったのは三菱重工だ。相手ゴール前の反則からスクラムを選択しプレッシャーをかけ続け、最後はNO8ベッドウェルカーティスが押え21-14 で7点をリードして残り20分となった。
三菱重工はリードを守るべく残り時間帯にスローダウンプレーを続けると思われたが、守りでは無くキックを選択したが、NECボールとなり残り5分での猛攻が始まった。7点差だがトライを奪えば同点に持ち込めるチャンス、しかし、三菱重工も必死のディフェンス、スタンドからも両チームファンから悲鳴に近い声援が飛ぶ。最後はゴール前の攻防でNECがノックオンしてフルタイム。
両チーム何より欲しかった「勝利」の二文字は三菱重工が獲得した。特に三菱重工は、地元の相模原の地で今シーズンだけでなくトップリーグ昇格後18戦目にして初勝利を飾る事が出きた。
この勝利に、多くのスタッフやファンの目に涙が浮かんでいた。マン・オブ・ザ・マッチには、素晴らしいキックでチームに勝利の流れを作った三菱重工SOウィルソンが選ばれた。なおこの試合で三菱重工FL小林がトップリーグ100試合出場を果たした。
NECグリーンロケッツ

NECグリーンロケッツの浅野ヘッドコーチ(右)、亀井キャプテン
浅野良太ヘッドコーチ
「まず相模原ギオンスタジアム 三菱重工相模原のホームゲームとの事ですが、NECも相模原に事業所があり雨の中たくさんの方にお越し頂き感謝申し上げます。小林訓也選手の100キャップ出場ということですが、チームが変わっても試合に出るということは本当に素晴らしい、おめでとうと申し上げたい。我々開幕から4連敗というスタートをして2週間空き、今日から5連戦の初戦でした。相手も同じ状況で何としても勝ちたかったというのが率直な感想でした。勝つために前半に関してはテリトリーの部分が非常に苦戦したということ。ディフェンス自体は良かった。戦う場所でプレッシャーをかけられていた。後半は大きく改善できていた。あとは取り切る部分や反則しないで守り切る、攻め切る、そこの我慢強さ、フィニッシュのこだわり、チームとして追及していかなければいけない部分ですし、そこが今後の4試合、次のリコー戦につながると思います。チームとしてステップを高められるのが重要だと考えています」
──連敗の中どの部分が改善できないのか。
「連続して起こる反則。よくない連鎖があることが一番の原因かと思う。レイトタックルなど自分たちでコントロールができることをしきれないというのは我々の甘さだと思う。グラウンドでコーチ陣が選手に問題提起をもっとしていかなければならないと思う」
──相手チームにNEC出身のコーチ、選手がいらっしゃいますが‥‥いかがですか?
「トップリーグ6チームに関与しているチームも珍しい。相手ヘッドコーチのクーパーや土佐、小野寺など非常に濃いメンバーがいる。味方であった選手もグラウンドで再会できることや逆に敵であった選手が味方になるというのはラグビーの良さだと思う。彼らの活躍は嬉しいし、刺激にもなる。彼らから私自身も成長しようというマインドにもなる」
亀井亮依キャプテン
「前半からチームとして先制しようと言って臨みました。立ち上がりは良かったんですが、インターセプト、自分たちの中盤でのペナルティでテリトリーが厳しくなった。自分たちのチャンスをものにできなかった。チャンスメイクはできているのだけどそれをものにできる状況判断やコミュニケーション、そこがやはりまだまだ不十分だと痛感しました。ゲームをトータルしまして最後1トライで敗戦となったんですが、この1トライが非常に重かった。まだまだ試合以前に練習の段階で追及していかなければならないことが沢山あるんじゃないかと思います。ここ5試合勝ててなくて厳しい状況ではありますが、メンバー、スタッフなど支えて頂いている方々がいます。まずは1勝を目指します。ありがとうございました」
──現在のチーム状況について教えて下さい。
「チャンスメイクはできている。今日の相手のディフェンスも前へプレッシャーをかけてくることは分かっていました。それに対して裏のスペースへのキックなどで対応しようと準備していました。チームとして判断力・遂行力を練習からレベルアップしていく必要がある。後半選手が代わっても精度を落とさないことが必要」
──両チームとも狙えるショットを狙わなかったのは何故ですか?
「一番はトライを狙っていこうと決めていました」
──後半に入ってスクラムが劣勢になったが理由は?
「瀧澤さんが本職ではない1番から3番になったことや相手もメンバーを変えて対応してきた。真っすぐ組めなかったという点を修正しなくてはならない」
三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのクーパー ヘッドコーチ(右)、デーリックデニイ ゲームキャプテン
グレッグ・クーパー ヘッドコーチ
「とにかく嬉しいですね。ダイナボアーズの新しい歴史をつくった。チームとしてベストウィーク、最高の準備をしましょうというテーマをもっていた。最高の準備と最高の結果を得ることができた。小林訓也選手の100キャップ出場記念、チームスタッフやサポーター、ファンの皆さんに勝利を届けられて嬉しいと思います」
──クーパーヘッドコーチにとってNECからの勝利に運命的な思いがありますか?
「NECは長い歴史のあるチームで以前コーチではありました。偶然ですが初勝利は嬉しく思います」
──TL経験者の西舘選手はチームにとってどんな影響を与えましたか?
「この2週間チームとして最高の準備をしようとテーマを掲げてきた。その中で苦労したのはチームストラクチャーを80分間続けること。西舘選手のように経験があり、冷静さがあることはストラクチャーを遂行できると思います」
──何度もショットできるチャンスがあったがトライを狙いにいったのは何故ですか?
「ショットなのかタッチキックなのか、指示は伝えますが、ゲームをしている選手たちの感覚やゲームキャプテンの判断に任せています」
──三菱重工相模原ダイナボアーズHC就任時、トップリーグで勝てると感じていましたか?
「今週面白かったのがスターティングメンバーではない選手のチャレンジがすごかった。そういうチャレンジ精神は大事だと思うし、チーム状況は良い。私は選手全員に自信を持っている」
トーマス優デーリックデニイ ゲームキャプテン
「寒い中、ファンの皆さんが足を運んでいただいて我々のパフォーマンスと勝利をご覧頂いて有難い気持ちでいっぱいです。試合に関しては最高の2週間を過ごして、この試合我々のかたちで、しっかり80分間できるように準備をしてきました。選手、コーチ、スタッフが一体となって勝利することができました。三菱重工相模原ダイナボアーズの歴史を変えて、これからも勝利できるように頑張っていきたい。
──今日勝てた喜びを教えてください。
「あともう少しで勝てた試合は何回かありました。出れないメンバーも責任をしっかり持っていたし、試合に出たメンバーも出れないメンバーへの思いをもって、最後まで集中して勝利を掴めたのだと思う」
──試合終了後、スタンドで手を振っていたファンに一言お願いします。
「雨でも雪でもどんな天候にも関わらず、我々の応援をして頂いている事に本当に有難いです。勝利した喜びがチームとファンをより一つにしてくれたと思う」
──最高の準備とは具体的にどうされましたか?
「目の前のひとつひとつの仕事を100%・全力で行う。ひとりひとりが自分の仕事をするということに準備ができた」
──何度もショットできるチャンスがあったがトライを狙いにいったのは何故ですか?
「フィールド上でトライをとれるという意識があった。トライをとれない時もポジティブに考えていた」

初勝利の瞬間に喜ぶ三菱重工相模原ダイナボアーズの選手たち

三菱重工マイケル・リトル選手の突破

三菱重工マット・ヴァエガ選手のインターセプト

三菱重工ジャクソン・ヘモポ選手の突進

三菱重工司令塔ジェームス・ウィルソン選手

マン・オブ・ザ・マッチはジェームス・ウィルソン選手

TL100試合出場の小林訓也選手