トップリーグ2021 第4節レポート(NEC 7-10 日野)

ジャパンラグビー トップリーグ 2021 第4節代替 ホワイトカンファレンス
2021年3月21日(日)12:10キックオフ/東京・秩父宮ラグビー場
NECグリーンロケッツ 7-10 日野レッドドルフィンズ

NECグリーンロケッツ

NECグリーンロケッツの左から、中嶋 共同キャプテン、亀井 共同キャプテン、浅野ヘッドコーチ

NECグリーンロケッツの左から、中嶋 共同キャプテン、亀井 共同キャプテン、浅野ヘッドコーチ

浅野良太ヘッドコーチ

「先週、柏の葉での試合が雷雨で中止になりましたが、この場を借りて、柏の葉の会場を準備していただいた関係者の皆様、また、雨の中、時間を延長して待っていただいた皆様に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。柏の葉でのホームゲームは当初の日程では2試合予定していました。それがトップリーグの日程変更により1試合になってしまい、その試合も皆様の前でプレーできなくなり非常に残念でした。また今日、本来はBYE WEEKで試合の予定がありませんでしたが、急遽試合の準備をしていただいた皆様、また、この雨の中で先週に続き応援に来ていただいた数多くの皆様に感謝したいと思います。今日は悪天候の中でのゲームでしたが、キックの精度、セットプレー、ディシプリンなど、試合がどちらに転んでもおかしくないゲームだったと思います。しかし最後、勝ちに繋げられなかったところは、我々の足りない部分ですので、来週のパナソニック戦に向けてまたしっかり準備したいと思います。また、この場をお借りして、今日の試合でニリ(・ラトゥ選手)がトップリーグ100キャップということで本当におめでとうございます。彼はNECで8年間プレーして、NECではトップリーグの試合以外も含めて110キャップ獲得しています。NECでもキャプテンをやっていたように非常に人格者です。ニリはいったん日本を離れて、また、日本に戻ってきましたが、それで100キャップを取りました、また、他国の代表経験者でトップリーグ100キャップをとったというのは初めてだと聞いています。そういった意味でも日本のラグビーに貢献してくれている一人だと思います。ニリに『おめでとう』とお祝いを申し上げたいと思います」

亀井亮依 共同キャプテン FL

「先週の試合が中止となり、今日、秩父宮での試合開催にご尽力していただいた関係者の皆様に感謝申し上げます。試合に関しては、最後はペナルティで勝負が決まりましたが、前半は風下で我慢する時間が長く、0-0で折り返して、これはプラン通りだったと思います。後半、風上となりましたが、キックの精度だったり、エリアマネジメントだったり、なにかアタック前のところで少しできていないところがあり、最終的にスコアで勝ちきれなかったことになりました。チームとしては非常に厳しい状況になりましたが、これからプレーオフトーナメント戦も含み試合は続きます。今日の雨の中でも応援してくれるようなファンがいる限り、しっかり前を向いて頑張っていきたいと思います」

──最後(後半35分)、NECがペナルティトライをとり同点になり、日野がシンビンで14人になりました。その後、どのように時間を進めて、最後、勝ちきろうと考えていましたか?

「ペナルティトライの後のキックオフのところでは、敵陣に入ってスコアしてというシナリオを選手たちでは描いていました。中盤でのラインアウトではモールを含めて日野さんの流れに持っていかれていたので、そこを修正しきれなかったところ、最後、自陣に入られたのもラインアウトからですので、そこが勝負を分けてしまったと思います」

──ラインアウトでマイボールを取られることが多かったこと、特に日野のLOクリシュナン選手に取られてしまうことが多かったと思います。ラインアウトのどういったところを相手に読まれているとか、修正しようとしたけれどできなかったようなところはありましたか?

「天候を含め、また、ラインアウトの回数が多かったので、準備してきたオプションを含めいろいろ試行錯誤しての結果でした。僕たちとしてはそれほど(ラインアウトで)取れていないとは感じてなかったです。僕が前に立っても、クリシュナンが後ろから高さを生かしてプレッシャーを掛けてきていました。しかし、試合を通してネガティブな感覚はありませんでした」

──ニリ・ラトゥ選手とはポジションがマッチアップしての対戦が多かったと思います。(NECのOBでもある)ラトゥ選手はNECの選手たちにとってどのような存在ですか?

「ニリ選手とはNECでの在籍期間はかぶっておらず、また、対戦するのは今日が2度目ですが、しっかり80分間通して戦えたのは今日が初めてでした。僕が学生時代から、ニリ選手はまっすぐ勝負してくるペネトレーターだという印象でした。近場で競ってくるところではさすがだなと感じるところもありますが、自分から仕掛けることができるところもありました。海外出身の選手でトップリーグ100キャップを取ったということは本当に尊敬できる選手です」

中嶋大希 共同キャプテン SH

「先週今週とファンの方々に来ていただき、また、悪天候の中、足を運んでいただき非常に感謝しています。その中で、コンディション的にもとても厳しい状況でしたが、その中でエリア取りをテーマに掲げて試合を支配しようと臨みました。しかし、キックの精度や、自分たちの規律のなさが課題となった試合でした。それらの課題を試合中修正しきれなかったところがありました。また次に繋げて、次の試合ではいいプレーができるように頑張りたいと思います」

──エリア取りでは前半は風下でキックの距離が出にくい状態だったと思いますが、前後半それぞれどのようなかたちでエリア取りをしようとして、どこがうまくいかなかったのでしょうか?

「前半は強い風下でした。グッディ(グッド選手)からでなくSHの僕からキックを蹴るようにするとか、あえて奥に蹴り込んで相手のミスを誘おうとしました。いいシーンもありましたが、キックの精度やキックをするまでのシナリオがうまくいかないところがあり、そこで流れを掴みきれませんでした。後半は風上でしたが、大きくプランは変えず、終盤にはモールからの仕掛けを多くしていこうとしましたが、キックの精度が上がらず、そこがNECが流れに乗れなかった原因かと思います」

日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズの箕内ヘッドコーチ(右)、堀江 共同キャプテン

日野レッドドルフィンズの箕内ヘッドコーチ(右)、堀江 共同キャプテン

箕内拓郎ヘッドコーチ

「先週の試合が悪天候でキャンセル、再試合となりました。我々としても初めてのことで、準備に苦労したところもありましたが、勝利というかたちで、これまでチームがやってきたプロセスを再度、確認することができました。ここからまた新しい目標に向かって、次の週への準備をしっかりしていきたいと思います」

──最後のペナルティゴールを待つときはどんな気分でしたか? 苦しんで苦しんでの今シーズン初勝利となりました。

「(試合中に)何度か狙うチャンスはあったのですが、最後にチャンスが訪れたというのも80分間、プレッシャーをかけ続けたことも要因だと思います。選手たちがやることをしっかり信じきってやっていたので、それが最後のペナルティに繋がったのだと思って見ていました。チーム全体としてこういうラグビーをしていこうと頑張ってきたので、勝利というかたちで今日試合に出ていないノンメンバーも含めて共に喜びを分かち合えるということは僕としても嬉しいことです。この勝利がチームの結束をより強くするきっかけになると思います。本当に大きい勝利でした」

──ニリ選手の100キャップについてコメントをお願いします。

「他国代表を持つ外国人選手として100キャップは初めてだと思います。途中、イングランドでのプレー期間(注:2015-2018年)を含めると数年のシーズン抜けている中で、彼はファーストキャップの時から一貫性をもったプレーをチームに見せてくれていましたし、若い選手の外国人選手に対するリスペクトという点でも多大なる貢献をしてくれています。NEC含め、日野でも、また日本のラグビーにも彼は必要な存在だったと思います。まだまだ若いですし、これからも楽しみです。(今日の試合では)北川選手(40歳)、久富選手(42歳)もプレーしましたが、北川選手、久富選手らがいることでニリ(39歳)もまだまだ若さを保っているのだと思います」

──昨年は、チームで少し問題もおこりましたが、この勝利を届けることができたことついて、日々、支えてくれている方々への思いはいかがですか?

「去年からの厳しい時間を乗り越えて、チームとしてここまで来ることができたことにはいろいろな方々の支えがあってのことと思います。我々としてはここまでのプロセスの道がしっかりできていたからこそ、今日の勝利のかたちになったと思います。これを継続してやっていきたいと思います」

堀江恭佑 共同キャプテン No.8

「今日も悪天候の中、たくさんのお客様に来ていただきプレーできたことが本当に嬉しかったです。今日は僕たちにとってもニリの100キャップという特別な試合でした。チームとしてここまでなかなか結果が出せず、悔しい思いをしてきましたが、今日、勝ててほっとしています。まだまだトップリーグの試合は続きます。自分たちが成長できると思っていますので、しっかり先を見て、また、練習していきます」

──前半、ショットを狙えるPKでも狙いませんでしたが、どのような狙いだったのでしょうか?

「選手たちの判断でした。フォワードでスクラム、モール、ラックサイドでの手応えはあったので、そのような判断となりました。結果的にはミスがあったり、ボールを相手に取られたりして、なかなかトライは取れませんでしたが、感覚的にはずっと『行ける』という判断はありました。したがって、そんなに不安はありませんでした」

──堀江キャプテンの言うようにフォワードで取れそうだという雰囲気は見ていても伝わっていました。最後、同点になってからのラスト3分では、自分たちの気持ちをどう立て直していこうとしたのか。

「モールやモールサイドでは絶対行けるという自信がありました。最後の3分では敵陣でプレーし続ければ自分たちが我慢勝負で勝てるとの思いを全員が信じてプレーすることができました」

ラトゥ選手の似顔絵と風神雷神を描いた100キャップ記念Tシャツを着たラトゥ選手(左)とプル共同キャプテン

ラトゥ選手の似顔絵と風神雷神を描いた100キャップ記念Tシャツを着たラトゥ選手(左)とプル共同キャプテン

オーガスティン・プル共同キャプテン SH

──苦しんで苦しんでの試合で今シーズン初勝利をとれた気持ちはいかがですか? また、今日の天候についてはいかがでしたか?

「すごく嬉しいです。ニリの100キャップという特別な試合にチームとしてもモチベーション高くこの試合に臨めました。最後ああいったかたちで勝てたのは本当に嬉しく思います。今日の天気については、先週、雷雨で中止になったこともあり、2週間、NEC戦に向けてこのような天気を想定して練習してきました。的確な情報と準備があったので、選手たちで共通認識を持って試合に臨めました」

──試合後、ロッカールームでは皆でどのようにニリ選手の100試合をお祝いしたのですか?

「試合後はNECの選手も一緒に、インドア(練習場)でニリの100キャップを記念しての写真を撮りました。私たちにとってもニリは特別な選手ですが、ニリは日本ではNECで初めてプレーしましたのでNEC選手にとっても特別な存在だと思います。ニリがNECのキャプテンだったときにNECは勝利を重ねていましたし、NEC戦で100試合を達成すると言うことは両チームにとってすごくスペシャルな瞬間でした。100キャップのお祝いに、お花とニリが大好きなKFC(ケンタッキー)をプレゼントされて、ニリは大変喜んでいました」

──後半、先制した後(後半10分)、プル選手のいいジャッカルがありました。

「(あれは)スバラシイ(プレーでした)! あそこでボールを取ったときにはとても安心しました。あそこは私のやったプレーと言うより、その前にタックルを決めてくれた選手(注:⑩クリップス選手と⑫川井選手のダブルタックル)が一発で相手選手を倒してくれたことにより、私がボールに行けるいい状況を作ってくれました。この2週間、コーチ陣がしっかり準備して情報提供してくれました。それがああいったプレーを生み出したと思います」

──最後、後半35分にNECに同点に追いつかれた後のゲームのマネジメントはどのような点にフォーカスしましたか?

「基本的にはゲーム中、ずっと、敵陣22m内で戦おうと目指していました。相手がなかなか脱出できない状況も想定して、しっかりロングキックで敵陣22mに入って相手を外に逃がさない状況というのを意識してやっていこうと話していました。そこで相手にしっかりとプレッシャーをかけ続けることで最悪でもペナルティを得て得点を取ることを想定してプレーしようと話していました。計画通り遂行できたことをとても誇りに思います」

ニリ・ラトゥ選手 FL (マン・オブ・ザ・マッチ、この試合でトップリーグ100キャップ)

「100キャップを達成できたことはすごく光栄です。チームの皆さんの頑張りがあったことでこういった結果になれたと思います。これだけ大きな達成をできたということを本当に光栄に思っています」

──プル選手が試合後のお祝いにケンタッキーのプレゼントを準備していたと。

「ケンタッキーのプレゼントをもらいましたが、これだけ長くプレーできる秘訣はそこです。ケンタッキーを食べることで、これだけの長い期間、体が元気でいることができます。ケンタッキーが私のスポンサーについてくれないかなと願っています(笑い)」

──試合を通して、コンタクトシチュエーションが多かったと思いますが、NECのプレッシャーはどう感じましたか?

「今日の試合はこういったフィジカルティの高い試合になると思っていました。自分たちの求めているものを手に入れるためには、目の前のものにぶつかっていかなければいけないという心を準備して臨みました。オギー(プル選手)も言っていましたが、2週間、コーチを通じて情報をもらいしっかり準備できていました」

──ピンチを脱するところでのニリ選手がNEC吉廣選手へのタックルが印象的でした。NECのジャージに対して戦うときにはニリ選手はスペシャルな気持ちになりますか?

「日本での私のラグビーキャリアの多くはNECでの時間でした。日野も、NECも私のラグビー家族の一員です。過去に一緒にチームメートだった選手たちを的として対戦するというのはすごくスペシャルなことです。今日はそれに加えて対NECで100キャップを達成できたことは、本当に特別中の特別な気分です」

──他国の代表経験のある外国人選手が100キャップは初めてとのことですが、特にいったんイングランドに行かれて戻ってきてのこの記録は素晴らしいと思います。

「100試合を達成できましたが、そのためには毎試合、メンバーに選んでもらえるように信頼を得るためにしっかりしたパフォーマンスが必要でした。ご存じかと思いますが、昨シーズン、日野ではいろいろ問題がありました。昨シーズンを終える時点での現役引退を考えていましたが、箕内ヘッドコーチから『まだもう1年やってくれ』と言葉をいただきチャンスをいただけました。箕内ヘッドコーチがいなければ私の100キャップは絶対達成できなかったので箕内さんへの感謝の気持ちはとても大きいです」

──ニリ選手は『雨男』という言葉を知っていますか? ニリ選手は雨の試合は好きですか?

「私は雨の中での試合はすごく好きです。雨で試合のダイナミックさは欠けますが、フォワード対フォワードの色が強くなり、スピード感が遅くなります。そのためフィジカルティが上がってくるので私は気に入っています。今日も試合前からこの天候は予想していましたので、フォワード対フォワードで勝たなければ勝ちはないとチームの中で言っていました。今後の試合も雨が降ればいいなと思っています」

──ニリ選手がNECでプレーしていた頃と比べてどのようにトップリーグのレベルは上がってきたと感じますか?

「間違いなく、レベルは上がっています。初めて日本に来たのは2006年ですが、トップリーグは今ほどのレベルにはありませんでした。トップリーグに戻ってきてプレーをしながらそのレベルの高さを感じています。長いことトップリーグを見てきて、レベルが上がってきているのを見るのは嬉しいです。前回のワールドカップ日本大会でも日本代表が活躍するという結果が出ていますが、今後、更に楽しみです」

──日野の選手の皆さんが試合後に着ているTシャツにはニリ選手の似顔絵と風神雷神が描かれていますが、ニリ選手は風神・雷神の意味はご存じですか?

「(風神の絵を指して)これは風の神様。(雷神の絵を指して)こっちは勝利の神様ですよね(笑い)」

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