トップリーグ2021 プレーオフトーナメント準決勝プレビュー

第58回日本ラグビーフットボール選手権大会兼トップリーグ2021プレーオフトーナメント準決勝プレビュー

5月15、16日の2日間にわたり、大阪・東大阪市花園ラグビー場で第58回日本ラグビーフットボール選手権大会兼トップリーグ2021プレーオフトーナメント準決勝2試合が行われる(無観客開催)。
レッド、ホワイトの両カンファレンスに分かれて争われたリーグ戦を計7節戦ったあと、プレーオフトーナメント2回戦、同・準々決勝と勝ち上がって4強入りを果たしたのは、サントリーサンゴリアス、パナソニック ワイルドナイツ、トヨタ自動車ヴェルブリッツ、クボタスピアーズの4チーム。
15日がトヨタ自動車対パナソニック(14時)、16日はサントリー対クボタ(13時10分)の組み合わせで、トップリーグ最後の試合でもある決勝(23日、東京・秩父宮)の舞台への出場権が争われる。

text by Kenji Demura

トヨタ自動車ヴェルブリッツ(レッド2位) vs パナソニックワイルドナイツ(ホワイト1位)

リーグ戦無敗でホワイトカンファレンス首位通過したパナソニック。
「すべての面で成長している」と、ロビー・ディーンズ監督が胸を張るとおり、プレーオフに入ってからも、2回戦ではトップチャレンジリーグ所属ながら1回戦で宗像サニックスを破っていた近鉄に対して54—7で大勝。
準々決勝でもSO田村優主将率いるキヤノンに主導権を与えずに32—17で貫禄勝ちして、準決勝に勝ち上がってきた。

「アタック、ディフェンスともにいいかたちで戦えている。ペナルティの少なさ、ディシプリンがゲームの中で生きている」
準決勝を欠場するHO坂手淳史主将はチームの現状に関してそう手応えを語る。

リーグ戦7試合での総失点72は、16チームの中で最小。三洋電機時代からのワイルドナイツの伝統と言っていい強固な組織ディフェンス力はさらなる進化を遂げていると言っていい。
キヤノン戦では、自陣22m付近での相手キックの処理からWTB福岡堅樹が一気に走り切るシーンもあったが、カウンターアタックからトライを重ねるのもパナソニックが得意とするスタイルでもある。

パナソニック ワイルドナイツ 福岡堅樹選手

パナソニック ワイルドナイツ 福岡堅樹選手

一方、準々決勝でのNTTドコモとの死闘(33—29)を制して勝ち上がってきたトヨタ自動車としては、パナソニックDFにプレッシャーをかけ続けながら、カウンターアタックに持ち込ませないような戦い方ができるかどうかがトップリーグでは最初で最後となる決勝進出のためのポイントのひとつとなる。

「パナソニックは攻守ともにいいシステムを持っていて、素晴らしいキッキングチームでもあるし、FWで前に出る力もある。特に攻守に切り替えの部分、ターンオーバーからのアタックには気をつけないといけない」
トヨタ自動車のサイモン・クロンヘッドコーチはそんなふうにパナソニックの強さを分析するが、その一方で「ディフェンスからのアタックは自分たちも得意にしている部分」と、同じようなスタイルでパナソニックを上回る自信ものぞかせる。

トヨタ自動車ヴェルブリッツ キアラン・リード選手

トヨタ自動車ヴェルブリッツ キアラン・リード選手

80分間、攻守が入れ替わり続けるようなエキサイティングなラグビーへの期待が高まる一方で、今季での引退を表明している前述のパナソニックWTB福岡、トヨタ自動車NO8キアラン・リード主将、同FLマイケル・フーパーなど、世界のトッププレーヤーたちのプレーぶりにも注目したい。

サントリーサンゴリアス(レッド1位) vs クボタスピアーズ(レッド3位)

今季、唯一の全勝チーム。しかも、リーグ戦1試合平均8.57奪トライという圧倒的な攻撃ラグビーを見せているのがサントリーサンゴリアス。
「しっかりとしたストラクチャーといい判断。練習の中でも、試合を意識しながら状況判断を下すことに力を入れてきた」
ミルトン・ヘイグ監督はチーム全体の状況判断力の向上が今季の快進撃の主要因だと分析する。

準々決勝は対戦予定だったリコーの選手に新型コロナウイルス感染症陽性者が出たため中止となり、試合勘の部分での悪影響が懸念されるが、同監督は「フレッシュな状態で試合に入っていけるし、最後の20分間も元気のいい状態のまま差をつけることができる」と、むしろ優位に働くのではないかと分析する。

クボタとは今季のリーグ戦第6節で対戦し、26—26で迎えた後半38分にSOボーデン・バレットの決勝トライで競り勝つ大接戦を演じている。
「前回の厳しい戦いを経て、お互いのプレースタイルや、やってくることもわかっているので、前回とはまた違った面白さを見せられるのではないか」(CTB中村亮土主将)

サントリーサンゴリアス ボーデン・バレット選手

サントリーサンゴリアス ボーデン・バレット選手

一方のクボタは神戸製鋼との死闘を23—21で制して、マイクロソフトカップ2006以来となるプレーオフトーナメントでの4強入り。しかも、前半29分に司令塔SOバーナード・フォーリーが危険なタックルにより退場処分(レッドカード)を受け、50分間以上を1人少ない状態でディフェンディングチャンピオンと戦うという非常事態を乗り越えての勝利だった。

「あの状況の中でも試合をコントロールできたのは、全員が同じページを見ることができていたから。FWがしっかり戦えたし、14人でもボールを保持してアタックできたことには自信を持っていい」
神戸製鋼戦ではフォーリー不在の中、インサイドCTBからSOのポジションに上がり、見事なゲームコントロール力を見せた立川理道主将は1戦、1戦、成長を続ける今季のクボタのチーム力に手応えを感じている。

準決勝でも、リーグ戦で惜敗したサントリー相手にフォーリーなしで戦わなければいけない状況だが、フラン・ルディケヘッドコーチは「(チームにとっての)いいトライアルになる。先週はハル(立川)が良かったし、岸岡(智樹)もいいパフォーマンスを出せる。この前見せたように、試合の中での対応力は上がっている」と、十分補えるチーム力であることを強調する。

前述のとおり、リーグ戦では試合終了2分前まで同点という接戦を繰り広げた両チームだが、準決勝でもそれを上回るような熱戦が期待できそうだ。
前述のとおり、バレット対フォーリーの司令塔マッチアップはなくなったが、ともに「負けられない」と語るサントリー=中村、クボタ=立川の両主将の直接対峙など、個々のパフォーマンスももちろん見逃せない。

クボタスピアーズ 立川理道キャプテン

クボタスピアーズ 立川理道キャプテン

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