トップリーグ2021 プレーオフトーナメント決勝プレビュー

第58回日本ラグビーフットボール選手権大会 兼 トップリーグ2021 プレーオフトーナメント決勝プレビュー

text by Kenji Demura

5月23日、第58回日本ラグビーフットボール選手権大会兼トップリーグ2021プレーオフトーナメント決勝が行われる。
2003年にスタートし、計17シーズンにわたって日本のラグビーを盛り上げてきたトップリーグの最後の一戦ともなる特別な試合に勝ち残ったのは、サントリーサンゴリアスとパナソニック ワイルドナイツ。

今シーズンはともに無敗(リーグ戦ではレッドカンファレンス首位のサントリーが7勝、ホワイトカンファレンス首位のパナソニックが6勝1分)。
歴史を紐解いても、過去5回王者に輝いているサンゴリアスと、同4回のワイルドナイツという、まさしくトップリーグの歴史を締めくくるのにふさわしい顔合わせとなった決勝戦は、両者が幾度となく熱闘を繰り広げてきた日本ラグビーのホームグラウンド、東京・秩父宮ラグビー場にて13時10分にキックオフされる。

アタックのサンゴリアス対ディフェンスのワイルドナイツ。
もちろん、攻守の切り替え(トランジション)の優劣も、ラグビーにおいて勝敗を決定づける要素のひとつであることも確かではある。
それでも、19年間にわたりトップリーグを牽引してきた両チームには、大まかに言えばそんなイメージがあることを否定する人はいないだろう。

パナソニック ワイルドナイツ 福岡堅樹選手

パナソニック ワイルドナイツ 福岡堅樹選手

ところが、5月15、16日、ともに大阪・東大阪市花園ラグビー場で行われた準決勝で見せた両チームの戦いぶりは、そんなイメージをいい意味で裏切るものだった。
NO8キアラン・リード(ニュージーランド)、FLマイケル・フーパー(オーストラリア)というラグビー大国の代表チームで主将を務めてきた大物外国人選手も揃うトヨタ自動車と対戦したパナソニックは、いきなりWTB福岡堅樹のノーホイッスルトライでリードしたものの、その後は前半だけで3トライを奪われる苦しい展開となった。
「相手の強みのフィジカルや、いいランナーに走られて、流れを渡してしまった」(SO松田力也)
それでも、後半に入ると、HO堀江翔太、FL福井翔太、SO山沢拓也といった豪華すぎる途中出場組の流れを変えるプレーもあって一方的に攻めまくり、終わってみれば48—21というダブルスコア以上の差をつけて決勝戦へ名乗りを上げた。

サントリーサンゴリアス ボーデン・バレット選手

サントリーサンゴリアス ボーデン・バレット選手

一方のサントリーは、今季のリーグ戦で1試合平均4.7トライを奪ってきたクボタをノートライに抑える一方、SOボーデン・バレットが1DG/6PGを決める堅実な試合運びで26—9で6度目のトップリーグ制覇に王手をかけた。
リーグ戦7試合で計60トライ、420得点という他のチームを圧倒する攻撃力を披露してきたと言っていいサントリーだが、CTB中村亮土主将は「今シーズンスタートの時点で、アタッキングラグビーを掲げるためにも『トップリーグで一番のディフェンスチームになろう』という目標を掲げた」といい、クライマックスを前にまさしく理想のチームに近づいている手応えを感じている。
準決勝で奪ったトライは1本のみだったものの、「毎試合の課題修正しながら、ベストの試合ができた」と胸を張った同主将の感触はチーム全体に浸透しているものでもあるだろう。

両チームの過去のトップリーグでの対戦成績(含/プレーオフ、除/カップ戦)はワイルドナイツの12勝9敗。ただし、プレーオフでの直接対決ではサンゴリアスが3勝2敗と上回っている。
企業チームとして日本ラグビーの屋台骨を支え、世界に名だたる存在へと牽引してきた両雄同士の熱すぎるファイナルバトルとなる。

「プレーオフはリーグ戦とは異なる。アタックでもディフェンスでも今までなかったようなイノベーティブなプレー、違うベースのプレーが飛び出す」(パナソニック ロビー・ディーンズ監督)

「(クボタ戦で)いつもと違ったスタイルで勝利できたことはとてもよかった。グラマラスなラグビーがいつも勝つわけではない。決勝は難しい試合になる」(サントリーSOボーデン・バレット)

もちろん、準決勝でも快走を重ねてハットトリックを決めたパナソニックWTB福岡、プレッシャーを楽しむかのように平然とクォリティの高いプレーをし続けるサントリーSOバレットなど、スーパースターたちの妙技が堪能できることも間違いない。
最後の最後にどんなドラマが待っているのか。日本のラグビーファンにとって、永遠に記憶しておきたい80分間になるはずだ。

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