トップリーグ2021 プレーオフトーナメント決勝レポート(サントリー 26-31 パナソニック)

第58回日本ラグビーフットボール選手権大会 兼 トップリーグ2021 プレーオフトーナメント決勝
2021年5月23日(日)13:10キックオフ/東京・秩父宮ラグビー場
サントリーサンゴリアス 26-31 パナソニック ワイルドナイツ

サントリーサンゴリアス

サントリーサンゴリアスのヘイグ監督(左)、中村キャプテン

サントリーサンゴリアスのヘイグ監督(左)、中村キャプテン

ミルトン・へイグ監督

「ファンの皆様、応援ありがとうございました。良い試合でした。前半は『まぁ』でした。でも、後半は良かったです(ここまでは日本語で)。パナソニックは良いチームで、良いアッタック、ディフェンスをされました。プレッシャーをアタック、ディフェンスともにかけられ、そしてブレイクダウンのときにもかけられ、自分達のテンポでプレーできなかった結果となりました。パナソニックさんは本当に素晴らしいチームだと感じました。ロッカールームで皆、落胆していてがっかりした悔しい気持ちになっていましたが、来年はまた悔しい思いをしないよう、これからしっかりと来シーズンに向けて準備していきたいと思います」

中村亮土キャプテン CTB

「まずは、パナソニックさんの優勝を称えたいと思います。シーズンを通して素晴らしいチームで規律とディフェンス・アタックともに優れたチームだと思います。こういう難しい中でもトップリーグが最後まで運営できたことや、自分達に見えていないところでのサポートなど、運営者の皆様に感謝したいと思います。本当にありがとうございます」

──パナソニックのディフェンスをどのように破ろうと事前に思っていたのでしょうか。実際に戦ってみての感触は?

「今週は、対パナソニックというよりは自分達のアタックをやり抜くところにフォーカスしており、シーズンを通してやり続けたところを出せるような準備をしました。試合の中で味方の勢いが出たところと、パナソニックのディフェンスが勝ったところが出たので、お互いが良いところを出したゲームになったと思います」

──サントリーが19点目を入れて相手に迫った後のキックオフで、自陣から攻めようとして一旦、キックではなくポゼッションを優先した理由は?

「点差がありましたし、アタックすればトライまで行けるというところもあったので、まずはボールをキープするという判断でした。まだ時間はあったので、焦らずにキックする話もしていました。最後、相手にペナルティーを取られたところでなかなか勢いに乗れませんでしたが、そこはパナソニックの強さかなと思います」

──パナソニックのアタックは想定した範囲内でしたか、それとも何か予想以上に良かったところはありましたか?

「想定外だったのはインターセプト位でした。相手の福岡堅樹選手(WTB)が1トライ位は取るだろうとは思っていました。いろんなことに対し準備していたので、そんなに想定外のことはなかったです」

──最高のキックオフでしたが、ボーデン・バレット選手がキックを選んだところは、最後フィニシュまで持っていきたかったのでは?

「最初に取りたかったところを相手に取られて、最初の試合の勢いが相手に行ってしまいました」

──後半はアタックでトライを重ねましたが、前半、なかなか上手くいかなかった要因は? 終盤、あせりはあったのでしょうか?

「冷静に試合を(振り返って)見てみないとわかりませんが、あせりはありませんでした。点差が開いたところで開き直って思いっきりアタックできたと思います」

──前半、ブレイクダウン周りだったと思いますが、麻生レフリーと話をされていました。どのような話をされていたのでしょうか?

「前半、レフリーの基準を見る時間帯があるのですり合わせをしていかないといけないなと思い、毎試合そうですが、特に前半はコミュニケーションを取るようにしました。ブレイクダウンの判断基準は、前半の早いうちに話しながら、後半にかけてすり合わせていく感じです」

──規律の部分は、審判の基準に修正できましたか?

「後半は、ストレスなくゲームは流れたと思います」

──試合後に福岡選手と抱き合っていましたが、どのようなメッセージを送られたのでしょうか?

「『お疲れさま』と『おめでとう』を伝えました」

──福岡選手には、今後に向けてどのようなメッセージを送りたいですか?

「自分がケガをしたときに福岡選手に手術してほしいと思うので、スキルアップをしておいてほしいです」

左から、流選手、バレット選手(撮影用にマスクを外していただきました)

左から、流選手、バレット選手(撮影用にマスクを外していただきました)

流大選手 SH

「パナソニックさんにおめでとうと、まず言いたいと思います。規律高く、ほんとうに素晴らしい、チャンピオンに相応しいチームでした。おめでとうございます。サントリーとしてはうまく行かなかったこともありましたが、それが実力ですし、それがラグビーだと思っています。望んだ結果ではなかったですが、いろいろと大変な中でシーズンを闘い抜いたスタッフやチームメイトを誇りに思います。ありがとうございました」

──前半からボックスキック(スクラムやラック・モールの背後に落す、高く上げるキック)が多かったと思うが、相手の誰に渡らないようにしたとか、留意していた点は?

「(キャッチする)相手の選手ではなく、チームがやるべきことにフォーカスしました。確かに相手のバックスリーは脅威ではあったのですが、コンテストキックを上げて競り合えば、チャンスは充分増えると思っていたので、ロングキックよりコンテストという手法を取りました」

──どういった点がうまくいかなくて、トライに結び付かなかったのか?

「トライになりそうな時にファンブルしたり、ルーズボールが相手に入ったりという場面もありましたが、それも実力ですし、それらに対するパナソニックさんの反応が素晴らしかったと思います。あとはレフリーとブレイクダウンでの解釈――特にノットリリースやノットロールアウェイに関して――が違うところがあったので、最初は苦しみました。ただ、これは徐々に対応できるようになったと思っています」

ボーデン・バレット選手 SO

「流選手が言った通り、パナソニックは凄く強いチームだったので、優勝するべきチームだったと思います。ディフェンスが強かったので、キックを使い、そのままディフェンスで凄く疲れる試合でしたが、最後まで一生懸命やれました」

──パナソニックのディフェンスをどう破ろうとして、実際どう映ったか?

「(パナソニックは)我慢強く規律が高いチームで、ラインスピードも上げてくるので、エッジ(外側)までボールが運べず、真ん中で苦労するイメージです。なので、今日もコンテストするキックを多用し、サントリーとしても我慢してボールを展開していこうとしました。またパナソニックにはジャッカルが得意な選手も多いので、ボールをずっと持っているだけではなく、キックを使っていたという面もあります。ほんとうにパナソニックおめでとうという気持ちです」

──1年契約でこのシーズンを戦って、来年以降についてはどういうプランを持っているのか?

「2年間、ブルーズ(母国NZのクラブ/スーパーラグビー)と契約を結びました。フランスで行われるラグビーワールドカップ(2023年)までブルーズでプレーする予定です」

──日本ではコロナの影響などでいろいろできなかったこともあったと思うが、後悔することもあったか? 日本にまた帰って来るという可能性は?

「チームメイトといろいろ外で遊んだりすることはできませんでしたが、サントリーというクラブが大好きですし、ライフスタイルも気に入っていたので、一切後悔はありません。チャンスがあれば、また帰ってきたい。ソーシャル的にもいろいろ経験したいこともあるので」

──選択したオプション(攻撃の方法・種類)で、思い通りにいったもの、いかなかったものなど、どうだったか?

「最初にトライとPGを決められ、それからミスも起こってしまいました。トライを決められないところが一杯ありましたが、ハーフタイム(7-23)でも勝てると思っていましたし、最後の1分でもまだ返せると思っていましたが、ラグビーなのでこういう結果になることもあります」

──―前半、パスをインターセプトされたが、それによってゲームプランとか変わったところ、意識したところは?

「逆にパスが通っていればトライに繋がっていたと思うので、攻めていくということで全然問題なかったと思います。ライリー選手(パナソニックCTB)がブリッツしてくる(早く前に出てくる)ことも想定していましたが、賭けたチャンスがうまくいかなかったということで、それはしょうがないという結果なのだと思います」

中鶴選手(撮影用にマスクを外していただきました)

中鶴選手(撮影用にマスクを外していただきました)

中鶴隆彰選手 WTB

「トップリーグ最後の試合、チームとして優勝目指して1年間やってきたので、このような結果となり残念です。パナソニックさんが強くて、負けてしまったなぁと、ほんとうに残念な気持ちです」

──堅守が持ち味のパナソニックに挑んでみて、あらためてアタック面でどういったところがうまくいかなかったのか?

「特に最初の方はいいリズムで攻めていたと思いますが、パナソニックさんのディフェンスがしっかりしていたのでターンオーバーを許し、そこから攻め込まれるなど、序盤でリズムに乗れなかったのが、前半で点差が開いてしまった要因だと思っています」

──キックチェイスにフォーカスしていたように映ったが、どう感じていたか? また、福岡選手(パナソニックWTB)に前半1本走られたことについては?

「ハーフやバレット選手に競れるボールを蹴ってもらうというプランがあったので、自分の仕事としては簡単にキャッチされないようにしっかりと競りにいくようにしていました。堅樹(福岡選手)に走られてトライされたところですが、福岡選手をしっかり止めることも自分の仕事だと思って臨んでいたので、1本取られてしまったのは本当に悔いが残る部分ではあります」

──いいボールが外まで回ることが少なかったと思うが、パナソニックのディフェンスをどう予想していたか? 後半よくなったと思うが、ハーフタイムではどんな話があって、後半何を変えたのか?

「パナソニックさんのディフェンスはあまり出て来ないな、とみんなで喋っていて、その印象でアタックをしようとしていたら、ライリー選手や福岡選手らが(各自の)判断で前に出て来てインターセプトされるというシーンがあったので、もっと早く外からのコールで回避できたらよかったなと思っています。点差が離れて後半臨むにあたって、中村亮土や流とかから、点差を考えずに一つずつできることをみんなやって詰めて行こうという話があったので、そうしてフォーカスしたことが結果に繋がったのかなと思います」

──試合後、江見選手(サントリーWTB)がちょっと涙ぐんでショックを受けているように見えたが、何か声掛けは?

「本当にパフォーマンスがよかったので、ナイスプレーだったと言いました。彼の持ち味が出た試合だったと思います」

──数多くのライバルがチーム内にいる中で、どうやって生き延びていくか、今年考えてきたことやその結果は?

「シーズン前から調子がよかったのですが、怪我があって、なかなかチームに合流できませんでした。そういう中でもチームに対して自分に何ができるかを常に考えて、相手の研究だとか、今まであまりしなかった怪我という経験もできたので、よかったと思います。絶対どこかでチャンスは来ると思って準備してきて、こうやって最後プレーオフに出場できたのは嬉しかったのですが、やはり優勝して喜べたらもっとよかったなと思います」

パナソニック ワイルドナイツ

パナソニック ワイルドナイツのディーンズ監督(右)、坂手キャプテン

パナソニック ワイルドナイツのディーンズ監督(右)、坂手キャプテン

ロビー・ディーンズ監督

「非常に素晴らしい1日となりました。最後のトップリーグにふさわしいファイナルだったと思います。パナソニックそしてサントリーさん、両チームともよく戦った試合でした。ゲームの終わり方に非常に満足しています。このような結果になり嬉しく思います。ただサントリーさんの終盤の逆襲は本当にサントリーさんらしい戦いで我々最後まで苦しめられました。今シーズンと去年のシーズン、2シーズンにわたって無敗で過ごすことができました。この結果をとても嬉しく思います。個人的にもこの勝利を嬉しく思います。また、何よりも2人の若い10番の選手を誇りに思います。トップリーグの歴史でもこのように若い2人の10番で優勝を勝ち取ったというのは初めてではないでしょうか? もし間違っていたら教えてください。この2人の10番が優勝を手にしたというのは日本ラグビーにとってもとてもエキサイティングだと思います。今シーズン、坂手キャプテンには本当に感謝しています。(坂手選手の肩に手を置いて)彼は2年間、主将として本当にいい仕事をしてくれました。シーズン中盤で、もしかしたら坂手キャプテンがケガで決勝に出られないのではないかと心配した時期もありましたが、そこから本当に素晴らしいリカバリーをして今日の決勝戦に無事間に合うことができました。本当に誇りに思います」

──今日は福岡堅樹選手のラストゲームでした。福岡選手は一言で言うとどんな選手でしたか?

「ケンキ(福岡選手)の最後を飾るのに本当にふさわしいゲームだったのではないでしょうか。ケンキの才能は本当に類い希で、ラグビーにとっても素晴らしい選手でしたし、人間としてもケンキはすばらしく、彼が残したレガシーというのはチームと共に、ラグビーと共にあり続けると思います」

──キックオフからのプレーでは、サントリーに攻撃権を与えてしまいましたが、最終的にバレット選手がキックの選択をせざるを得なかったところは今年のパナソニックの戦い方を象徴するプレーだったと思います。そこについてはいい感触をもちましたか?

「私たちはサントリーがボールを動かしてくるチームだと事前に認識していました。自陣からの脱出を図ってくるだろうと思いました。我々もプレッシャーを感じましたし、サントリーも敵チームにプレッシャーを与えてくるチームだと思うので、本当に難しい戦いでした。しかし、麻生レフリーという素晴らしいレフリーが今日の笛を吹いてくれました。麻生レフリーはトップレフリーを引退すると聞いていますが、麻生レフリーは必要な存在だと思いますし、彼の引退は早すぎると感じます。彼が今後も日本のレフリーの育成や指導に貢献してくれると期待します。質問への回答ですが、サントリーに多くキックを蹴らせたいというねらいはありました。我々のこの試合への戦略としてサントリーにいいかたちで蹴らせない、プレッシャーを掛けて蹴らせるというところは皆で意識して臨んだ点です。サントリーの準決勝でのパフォーマンスを見てそこにフォーカスを当てこの試合に臨みました」

──CTBハドレー・パークス選手とLOジョージ・クルーズ選手にはどのようなことを求めていますか? 今日のパフォーマンスはどのように評価しますか?

「今日、この2名の選手が体現してくれたことが全てだと思います。今日に限らずハドレー、ジョージの2人はシーズン通して一貫したパフォーマンスを出してくれて、彼等の経験、能力をチームに落とし込んでくれたと思います。チームにとってとてもいい影響があったと思います。2人とも本当に素晴らしい人間で周りに対しても非常にいい影響を与えていて、チームメイトも彼等と一緒にプレーできることを楽しんでくれていることの結果が今日の勝利に繋がってのだと思います」

──『若い2人の10番』について、他のトップ4のチームはベテラン選手や外国人選手をSOに起用していますが、ディーンズ監督は日本人の若い2人を使ったというのは、日本ラグビーのことも考えてのことでしょうか?

「まさにその通りだと思います。我々の仕事はチームと選手のレベルを高めることだと思っていますが、今日も若い日本人選手2人の10番は本当によくやってくれました。この2人の10番は次のワールドカップでプレーできる力は充分にあると思いますし、今日のパフォーマンスを見ていただければ彼等がそれにふさわしいプレーヤーであると言うことを示してくれたと思います」

──トーナメントを勝ち進むにしたがって、次第にチームが強くなってきたと思います。この要因は何だと思いますか?

「チームというのは一緒に時間を過ごせば過ごすほどまとまって、一つになっていきますし、強くなっていきます。トーナメントが進むにつれて、様々な困難であったり、チャレンジがあったりしますが、それらを乗り越えるたびに選手同士の信頼や繋がりが高まってくると思います。今日のピッチ上での選手達は類い希なリーダーシップを見せてくれましたし、困難な状況でもいいプレーを見せてくれることを体現してくれました。我々のチームの選手達は上のレベルに目指しての成長に対して非常に貪欲ですし、それは成長に繋がると思います。今年、トップリーグで優勝することができましたが、これに満足せず、例年もチャンピオンを目指してやっていきたいと思います。今日、ゲームに出場しましたが、ヒーナンダニエル選手はこれまでワイルドナイツというチームの心臓として貢献してくれました。彼のチームに対する貢献は本当に素晴らしいものがありました。毎年、年を重ねても落ちることのない高いパフォーマンスを発揮し続けて、今日も素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれました。私から見てもヒーナン選手は先に進み続ける選手だと思うので今後とも、彼が前に進み続けることを期待したいと思います。彼は次世代の選手達にも本当にいい手本としての姿勢を体現しつづけてくれたと思います」

──2014年からワイルドナイツの指揮を執られてきていますが、これまでトップリーグはどう変わってきたと思いますか? また、日本ラグビーはどう変わると期待していますか?

「2014年と比較してトップリーグは格段に成長したと思います。2014年の当時には現在の光景は全く想像できないといえるほど、レベルが上がりました。レベルが上がった要素というのは全てにおいて上がったと思います。特にブレイクダウンで体の強さ大きさ、ブレイクダウンでのテクニック、選手1人1人のマインドセットは大きく変わりました。ブレイクダウンでアウトサイドバックスが激しい仕事をすることはまさにトップリーグの成長を示しています。今日もバレット選手に大きなラインブレイクさせることなく、試合を進めることが出来たことはまさにトップリーグのレベルの高さを象徴していると思います。これから日本ラグビーはどんどんレベルが高くなっていくと思います。今後、日本代表のセレクションの対象になる選手のレベルは毎年毎年高くなってきています。選手達の成長を感じています。今後も成長し続けていくと信じています」

──試合前の国歌斉唱の時に、パナソニックの選手達が肩を組んでいたのが印象的でした。これについてどう感じましたか?

「おそらく選手達が非常にエキサイティングな気持ちになってのことだと思います。選手達が決勝戦を非常に楽しみにしていたのが自然にああいった行動に繋がったのだと思います。決勝戦のキックオフを迎えるに当たり、これまで1年間、ソーシャルディスタンスやPCR検査などの対策を続けてきたことから抜け出して決勝戦を戦えることになった気持ちが出たのだと思います」

坂手淳史キャプテン HO

「まずはいい天気で、多くのファンの前で素晴らしい大会でサントリーさんと戦うことができ本当に楽しかったです。本当に大変な時期で、お客様が入っていただく人数は少し制限されていましたが、本当に暖かい応援を感じることができました。またテレビの前でも本当にたくさんの方々が応援してくれて僕達の背中を押してくれたと思います。そういったところですごくいいゲームになりました。プレーについては、僕は今、(優勝で)高揚しているところがあるのであまり覚えていないところもありますが、サントリーのすごいアタックを僕たちのディフェンスが止めきった。そして規律よくゲームを締めてくれた。本当に皆のことを誇りに思います。今年1年間、ハードワークして準備してきてくれた選手、スタッフ、そしてファンの皆様を誇りに思います。ありがとうございました」

──今日は福岡堅樹選手のラストゲームでしたが、これはチームにはどのような影響を与えていましたか?

「見ていただいたとおりです。本当に堅樹のプレーは今日もすごかったですし、今シーズンだけではありませんが、シーズン通してすごいプレーを続けてくれていました。グラウンドでの会見でも申し上げましたが、本当に堅樹と一緒のチームでやれてよかったなと思います」

──『若い2人の10番』について、ジャイミージャパンにあの2人の選手がもし定着したら、どういうところで頼りになるかと思いますか?

「僕はあの10番2人をとても信頼していますし、先ほど、外国人選手を10番に使わないとの話も出ていましたが、あの2人が起用されるのはレベルが高いからだけだと思っています。2人は僕より年下ですが、そのような高いレベルでプレーしてくれる2人をすごく信頼しています。ジャイミージャパンにどういったかたちで2人が入っていくかはわかりませんが、十分に通用すると思いますし、今のままのプレーをし続けてくれればワイルドナイツのためにも日本ラグビーのためにも2人は欠かせない選手になると思います。僕自身も成長しながら2人と一緒にプレーできたらと思います。力也(松田選手)はゲームを安定させてコントロールできますし、ヤマ(山沢選手)はキックをうまく使いながらゲームをコントロールしてくれます。2人それぞれ別のところに長所がありますが、2人ともスペシャルだと思います。素晴らしいプレーヤーです」

──試合前の国歌斉唱の時に、パナソニックの選手達が肩を組んでいたのが印象的でした。まるでテストマッチやワールドカップの試合を戦うような迫力がありましたが、どのようなねらいで肩を組んだのですか?

「特にねらいはありませんでした。ガッキー(稲垣選手)さんとシュン(布巻峻介選手)さんと3人が並んだのですが、今日はコロナ対策のため声を出しては歌わないことになっていたので、どうしようかと思い、『肩でも組むか』と言う話になり、内側の選手から順番に肩を組みました。特にねらいはありませんでしたが、『皆で戦うぞ!』ということは表現できたと思います」

左から、稲垣選手、堀江選手

左から、稲垣選手、堀江選手

稲垣啓太選手 PR

──今シーズン、今まで以上にスクラムが安定してスクラムで苦しむようなことがなかったと思います。準備の時間が長かったとおもいますが、どういうところが安定していたと思いますか?

「今年は僕がこのチームでのスクラムリーダーをしていましたが、それほど難しいことはやっていません。シンプルなことを、相手と組み合うときに必ずセンターラインを取るということだけを突き詰めてきたシーズンでした。シンプルなことですがここができれば確実に相手からアドバンテージを取れるので、これをシーズン通して言ってきた結果がうまく出たと思います。今日は(スクラムで)ペナルティを取ることもできましたし、スクラムでチームに貢献できたシーズンだったと思います」

──今季は負け無しで優勝しましたが、どういったところが良くて今年は勝てたと思いますか?

「前回優勝したのが5年前(2015-16シーズン)だったと思いますが、その時は最後の細かなミス=ラインアウトのノックオン=で試合が終わったと思いますが、そういった細かな部分を詰めることを今年はできたと思います。この差が今日は結果に出たと思います。皆、非常に高い意識でそういった部分をこだわって取り組めていましたし、こういったことを継続させていきたいです」

──今日はチームとしてディフェンスでプレッシャーを掛けることができていたと思いますか?

「そう思います。サントリーはアタック主体のチームだと思いますが、アタックでいいかたちを作らせないところが、特にサントリーはセットピースからのファーストフェイズでアタックに高い精度を持っているので、しっかりそこを止めようとセットピース =スクラム、ラインアウト=でプレッシャーを掛けようとやりましたが、そういったところでプレッシャーを掛けることはできたと思います」

──トップリーグの最後のチャンピオンになれたことについての感想は?

「あまり『最後だから‥‥』ということはありませんが、ただ、昨シーズンはコロナ禍によりシーズン途中で終わってしまった分、皆、今季にかける思いは強かったと思うので、今年、しっかり結果を残すことができたことは本当に嬉しいです。チーム皆で勝ち取った勝利だと思うので本当に素晴らしいシーズンだったと思います」

──長いコロナ禍での自粛期間の間にとても体が仕上がっていると感じますが?

「パナソニックの選手は、皆、自粛期間に体が仕上がっていると思います。そういった意識の高さ、限られた状況の中でもしっかりやりきるというマインドを皆、持っていたと思います。その気持ちを持ち続けたことが自分自身も、チームにとっても成長につながったと思います。自分自身の成長については、今シーズンはスクラムを課題にあげてきたので、そういった意味では相手チームにプレッシャーをかけることもできたと思いますし、マイボール、相手ボール問わずプレッシャーをかけられたことは成長につながったと思います。いままでのスクラムでは(ピッチ内での)エリアを選んでここではプレッシャーをかける、ここではいかないという選択をしていましたが、今は、行けると思ったときは全て(プレッシャーをかけて)狙いにいくようになりました。そういったスクラムに対してのマインドセットという部分についても、ひとつ、ステップアップできたと思います。そういったところでは個人的には成長できたシーズンだったと思います」

──今年、代表選手がチームと一緒に長い時間を過ごしたことによって、若手選手が成長したと、ディーンズ監督が言っていましたが、お二人が長期間、チームにコミットしてきた中で若手選手に伝えてきたことなど教えてください。

「正直言って、あまり若手選手とはあまり話をしていないのですが、これは自分から言ってどうにかなるというものではないですし、姿勢の問題だと思います。ただ、そういった中で若手選手からどんどんコミュニケーションを取ろうとしている姿勢は見られたので、僕から話しかけるより、若手選手から僕らに話しかけてくれたほうがやりやすいですが、そういった若手選手が多かったので、そういった姿勢を見せられると、『こうしたほうがいいんじゃないか。一つの考え方として捉えてくれればいい』と助言をしたりはします。皆、対等なライバルのでもあるので、自ら若手に対してアドバイスをすることはあまりありません」

──今日、ラストゲームとなった福岡堅樹選手について?

「『さよなら』というだけです。堅樹は今日もいいプレーをしていましたし、本当に満足できるシーズンだったと思います。出し切ったと思います。最高のかたちで彼を送ることができたと思います。僕らも彼の今後の活躍を応援していますし、ラグビーを続けていれば彼に治療してもらえる日が来るかもしれませんので、そこまでラグビーを続けたいと思います」

──今季は多くの代表選手が(日本代表チームの遠征などなかったため)長い時間、チームと時間を過ごすことができましたが、その良かった面などは?

「代表選手がシーズン前にこれだけの長期間、チームに帯同することは僕が在籍してからは初めてのことだと思います。例年であれば、代表選手が代表活動を終えてから約2週間、チームと活動を共にすることが多かったですが、そのような場合はシーズンの最後にチームが仕上がってくるという印象がありました。今シーズンは長いプレシーズンを代表選手も初めて共に過ごし、チームの仕上がりが以前よりも早くできていると感じます。シーズン初めから非常にいいスタートをすることができました。そういったところではチームにいい影響を与えることができたと思います。取り組み方やプレーに対する理解度での部分では(代表選手から)チームに落とし込むことができたと思います」

堀江翔太選手 HO (16番)

──今シーズン、今まで以上にスクラムが安定したので、スクラムで苦しむようなことがなかったと思います。準備の時間が長かったと思いますが、どういうところが安定していたと思いますか?

「ガッキー(稲垣選手)中心にスクラムをリードしてくれたので、今日はシンプルなこと、ガッキーの言うことその通りに表現してきた結果だと思います。もう一つはロックからの押し、とくに4番側からの押しについてはスクラムを組むたびに話をしてきたので、それも安定した成果が出たと思います」

──今季は負け無しで優勝しましたが、どういったところが良くて今年は勝てたと思いますか?

「アタック、ディフェンスともに質が高かったと思います。僕はディフェンスリーダーでしたが、ディフェンスでいろいろ新しい取組みをしたことが大きかったと思います。この試合では結構、トライを取られましたが、そこは『しゃあないな』といったところも多くて、あまり崩されて取られることはなかったのでそこでのディフェンスの成長は大きかったと思います」

──今日はバレット選手にあまりいい動きをさせなかったと思いますが、ディフェンス全体としてはどうでしたか?

「良かったと思います。『ここではこれだろう』とかキック合戦になるとも話をしました。ミスで相手にボールが行ったとかはありましたが、そこまでディフェンスでのプレッシャーは感じていませんでした。ディフェンスが機能していたと思います」

──トップリーグの最後のチャンピオンになれたことについての感想は?

「どんなことでも勝負事では勝つことは本当に嬉しいことです。結果はすごく大切ですが、そこまでの過程もすごく大切に思います。自分たちが思ったディフェンス、アタックをできていたか、どんなプレーをするか、チームとしてノンメンバーの選手はどうしなければいけないとか、結果しか求めないのではないところがありました。僕が最後のキャプテンだった年が、最後の優勝の年ですが、その時よりも嬉しい思いがあります」

──後半、サントリーにトライを取られた(後半30分)後、サントリーを追い詰めてPGをとったところ(後半33分)の直前のディフェンスでは、両チームとも疲れが出ていたと思いますが、そこでのディフェンスはどのような感じでしたか?

「『プレッシャーを掛けないかん、上がれ、上がれ』と声を掛けました。トライを取られたとしても勝敗関係無しに自分たちがやってきたことを出さないと後悔が残るので、上がってプレッシャーを掛けていくところが結果に繋がったのだと思います」

──堀江選手は三洋電機時代からずっとパナソニックで長い間過ごしてきましたが、今年は群馬県太田市を拠点にする最後にシーズンになりました。群馬県、太田市の地元ファンに向けて是非、一言お願いします。

「(優勝という)嬉しい報告をできることが僕も嬉しいですし、太田で応援していただいた皆さんも喜んでいただけたらいいなと思います。太田でやってきた練習や思い出は一生残ります。僕らが熊谷に(本拠地を)移った後でも引き続き応援していただきたいですし、僕らも太田のことを覚えながら抱えながら熊谷に行こうと思っているので、引き続き応援よろしくお願いします」

──後半、自陣で守る場面が多かったと思いますが、その時にどのようなことにフォーカスされていましたか? とくに自陣ゴール前で小山選手(SH)のジャッカルでピンチを脱したところ(後半22分)では?

「あそこは『やってきたことが出た』という感じです。あまり細かなことは言えませんが、思った通りにできた感じです。良かったと思います」

──ご自身でカウンターラックを仕掛けてターンオーバーができたところでは、ジャッジでは結構、微妙なところだと思いますが?

「パナソニックではクリーンなラグビーをしようと話をしていて、ああいったところでもグレーなプレーではなく、確実に行けると思ってプレーしています。練習で常にクリーンなプレーをしようと、微妙な(グレーな)プレーは絶対やらないようにしています。自信をもってこれは反則じゃないというプレーをしています。ずっとそういう練習をしてきた成果だと思います」

──今年、代表選手がチームと一緒に長い時間を過ごしたことによって、若手選手が成長したと、ディーンズ監督が言っていましたが、お二人が長期間、チームにコミットしてきた中で若手選手に伝えてきたことなど教えてください。

「バックス選手には、(松田)力也、山沢、内田、小山、(野口)竜司らのキーになる若手とは結構、話はしたと思います。あと、福井には『調子に乗らないように』と結構、話をして接しています。竜司は100%応えてくれるので、『代表に選ばれてもおかしくないやろ』と思いながら、ラグビープレーでのお願いを投げかけています」

──今日、ラストゲームとなった福岡堅樹選手について?

「早く医者になって頑張ってほしいと思います。彼のおかげで救われたこともありましたし、僕らも彼の最後をいいゲームで送りたいという、相乗効果でいいゲームができました。もう少しプレーをできたとも思いますが、いち早く医者になってほしいという気持ちもありますので、彼がチームドクターになってくれたら、一番早く選手のもとに駆け付けてくれるドクターになれると期待しています」

──前の3連覇の時はベテランのバーンズ選手や山田選手もいましたが、今回は若いSOが2人で、新しい世代で優勝したと思います。ゲームの中で若手選手の活躍による盛り上がりをどう感じますか?

「若手の選手たちが冷静にゲームをコントロールしていました。若手が冷静にリードしてくれて、チームとしてどうアタックしていくかというところが良かったと思います」

──今季は多くの代表選手が(日本代表チームの合宿・遠征などなかったため)長い時間、チームと時間を過ごすことができましたが、そのよかったことなどは?

「若手選手らには代表選手がやっている練習への取り組みなど、また、アドバイスや情報を与えるもできたことの2点は良かったと思います」

左から、福岡選手、松田選手

左から、福岡選手、松田選手

松田力也選手 SO

──ボーデン・バレット選手と前後半(後半19分まで)、あい対して、事前から覚悟もしていたとは思いますが、実際にやってみていかがでしたか? 交代した山沢選手の時間を含め、バレット選手の持ち味を出させませんでしたが、そこを振り返っていかがですか? また、福岡選手へ贈る言葉もお願いします。

「サントリーとやると決まった時からボーデン・バレット選手を自由に動かすと相手のペースになるとはわかっていたので、チームとしてしっかりボーデン選手が動くのを見よう、そこにしっかりプレッシャーをかけていこうと話をして試合に臨みました。それがしっかり成功したのですが、僕ではなくてチームの皆のディフェンスの意識の高さを見せることができたと思います。ボーデン選手のことは個人的には以前からよく見ていましたし、対戦することを楽しみにしていたので、気負うことなく自分ができることはすべてやろうと思っていました。チームをどういう風にリードするかしか考えていませんでした。やはり、最後にボーデン選手が仕掛けてくるとサントリーの流れになってきていたので、やはり、ボーデン選手一人の力を痛感しましたし、僕もそういうインパクトを与えられるプレーをもっとやっていかなければいけないと感じました。福岡選手に対しては、今まで本当に日本ラグビー界、そしてパナソニックにすごく高いスタンダードを示してくれて、日本ラグビーの発展に一番貢献していると思います。ここで引退してしまうのは悲しいですし、『本当なのかな?』と僕もまだ実感わかないです。また、どこかでラグビーで会うかもしれませんが、本当に感謝しかありません。最後にいいかたちで送り出そうと皆で言っていたのですが、それを有言実行で優勝して送り出すことができてチームメイト全員で嬉しく思っています。パナソニックとしても堅樹さんがいなくてもいい結果を残し続けて安心して見届けられるように頑張っていきたいと思います」

──ディーンズ監督はこの試合での象徴する選手は若い2人のSOだと言っていました。他のトップリーグチームでは外国人選手がSOを務めるチームが多い中で、パナソニックはシーズンを通して10番を日本人2人で乗り切ったところにはどのように思いますか?

「本当に素晴らしい選手がたくさんいる中でパナソニックは僕と山沢をしっかり選んでくれてチームを任せてくれたことに感謝しますし、それに応えたいと思っています。そして、しっかり結果を出してそれを示せたと思いますので、充実感を持っています。ただ、まだまだプレー全般では満足できるレベルには達していないと感じるので、そこは同じチームでもライバルであり、いい刺激をし合いながらさらに進んでいけたらいいと思います。この結果を経てもっと成長したいと思います」

──後半60分頃にキックを蹴った後に足をつってしまったように見えましたが、このゲームはどの程度きつかったでしょうか? また、その直後に交代しなければいけない時にはどのような思いでしたか?

「ゲーム序盤からすごく厳しい試合になることはわかっていました。やっていても、とてもプレッシャーのかかる中での試合でした。足がつってしまったことについては後悔していますし、これからの課題ではあります。ゴールキックを蹴るときにつまずいて足がつってしまったのですが、チームとしてはいい流れで来ていました。これ以上プレーし続けるとチームに迷惑がかかると思い、後ろには山沢選手といういい選手もいましたので、しっかりバトンを渡しました。悔しい思いではありましたが、ピッチの選手を見ているだけでしたので、絶対やってくれると思い安心して見ることができました」

──(前半30分の)福岡選手のトライシーンを振り返って、松田選手のラストパスの直前に、福岡選手は松田選手と目と目が合ったと言いましたが?

「相手のディフェンスが自分のほうに回ってきていないのが分かったので、外のディフェンスがタイトになるなと思い、大外を見たら堅樹さんが僕を見ているのが分かったので、僕がパスを放れば堅樹さんがトライを取ってくれるという信頼関係がずっとあったので、そこは信じて『絶対トライを取ってくれる』と思って(飛ばしパスを)放りました」

──アウトサイドバックスに素晴らしい選手がたくさんいるところで、SOの松田選手とインサイドCTBのパークス選手のセットがラインをドライブするというのはとても良かったと思います。パークス選手と一緒にコンビを組んでどのような印象ですか?

「すごくコミュニケーションを練習の時からとってくれます。僕がどうしたいと言えば、それをするために自分はどう動いたらいいかをわかっている選手で、ラグビーIQが高い選手ですので、一緒にラグビーをやっていて楽しいです。やはり外のいい選手にどうやってボールを運ぶかということはハドレー(パークス選手)もいつも考えているので、(外には)僕たちがいいボールを放ればいい結果を出してくれる選手が多くいるので、そのたびにどうするかといつも喋っていました。シーズン通して一貫していいパフォーマンスを出せたかなと思います」

──去年のシーズンは途中で中断となりましたが、その前シーズン、2018年シーズンの最後の試合はキックが入らずに悔しい敗戦でした。今回優勝できましたが、いろいろな感情が盛り込まれた試合だったと思います。優勝のタイトルを取られた感想と、今日はキックが良かったことについてのコメントをお願いします。

「2018年シーズンの最後のキックは今でもよく覚えています。あの悔しさがあったから今に生きていると思いますし、キックの大事さをとても痛感した試合でもありました。そういうモチベーションを持ちながら毎日練習を続けています。今日も自分らしいキックを蹴れるところがたくさんあったので、チャンスをスコアに生かせたと思います。僕自身、社会人になってからは優勝したことがなく、すごく欲しかったタイトルですし、やはりノーサイドになった瞬間に皆と喜び合えて、すごく嬉しいと思いました。悔しさで終わるより買って終わるほうがずっと楽しいのでこれを継続するために、悔しさを忘れずに常に勝ち続けるチームでありたいと思います」

──今年はコロナ禍で大変でしたが、その中でも特に大変だったことは?

「僕たちが大変というより、支えてくれるスタッフの皆さんがクラブハウスでのコロナ対策を整えていただき、とても感謝しています。僕たちはそれを守るだけでしたが、コロナに感染しない対策を常に考えてくれていたので、僕たちはそれを守って過ごしていただけでした。コロナ対策には自分たちがアジャストしてそれを乗り越えていくしかなかったと考えています。そういう部分ではすごくストレスがかかったとか、大変だったとかという思いはあまりしていませんでした」

福岡堅樹選手 WTB

──今日は会場に福岡選手応援の横断幕もありました。また、地元の福岡市でもかなり盛り上がっていると聞いています。あらためて今、一番ファンの方々にお伝えしたいことは?

「これまで、僕自身、日本ラグビー、また、パナソニックワイルドナイツを応援していただいたことに感謝を伝えたいです。やはり、たくさんの応援があったからこそ、僕自身、自分の夢に向かってポジティブにまっすぐ努力を続けてこられたと思います。これからは自分自身がこれまでサポートしていただいたことを何か別のかたちで恩返しができたらいいと思います」

──最後、優勝して終わり。この試合終了の時はどのようなことを感じましたか? また、どのようなラグビー人生だったと思いますか?

「終わった瞬間は『本当に良かった』と思いました。そのためにこれまで両立しながらやってきて、特に4月に大学に入学してからはかなりハードなスケジュールの中でやってきたので、その努力が実って本当に嬉しかったです。ラグビー人生に関しては、なんかあまり、まだ、『振り返って』ということでは自分自身、引退をするということに実感を伴っていないところもあるので、今後、離れてみて感じることがあるかと思います。今、確実に言えることは、『自分のラグビーとしてやりたいことはすべてやり切れたので後悔はない』と言い切れると思います」

──本当にもうラグビーはやらないですか?

「(笑い)まあ、基本的にはそうだと思います」

──シーズン前から『優勝して最後を終われるように』とは話していましたが、その中で受験があったり、入学後は授業があったりと、ラグビーに専念するには大変だったところがあると思います。どういうことを意識して決勝までプレーして、また、パフォーマンスを上げていったのですか?

「やはり、今まですべてをラグビーにささげてきた生活とはスケジュールとしても大きく変わってきましたし、今までやってきたままではコンディションを調整することは難しかったところはありました。限られた時間をいかに有効に使うかというところに自分としても意識して、例えば移動してすぐに練習という時もありましたが、自分の中でしっかりコントロールしてケガをしないように、しっかりとパフォーマンスできるようにしてきました」

──チームメンバーの選手たちとはもちろん、日本代表選手の選手ともグラウンドに立つのは今日が最後だったと思います。今日は流選手と会話を交わされるシーンもありましたが、今日はどのような思いを込めてプレーしましたか?

「今日、試合をする時点では敵ですので、100%『相手をたたきつぶす』という気持ちで臨みました。いざ終わってからは流選手から『お疲れ様』と言ってくれて、彼とは(同じ福岡県出身の同学年で)選抜チームなどで一緒にはプレーしていませんが、小学校時代からずっとやってきた仲間ですので、最後の最後に優勝というかたちで締められたので『ありがとう』という気持ちを伝えました」

──熊谷で行われた準々決勝の試合後のインタビューで『このスタジアムでプレーするのは最後かもしれません』とおっしゃっていましたが、現役選手としてではなく、今後ラグビーに人生でかかわっていく中でグラウンドに立って挨拶をするような場面が再びあると考えてよいでしょうか?

「はっきりと僕が言い切ることはできませんが、ラグビーでこれまでたくさんの方にお世話になってきましたし、ワイルドナイツにも感謝してもしきれないものもあります。なにかしら、自分が貢献できるところがあれば少しでも貢献したいとは思います。プレーヤーとしてはないと思いますが、そういったところでラグビーの発展に貢献できたらばいいなと思っています」

──グラウンドでのインタビューで『患者さんに向き合えるような医者になりたい』と言っていました。医療技術はさておいて、これからそういう目標に向けて人間としてどんなところを磨いていきたいと考えていますか?

「いろいろと学んでいく中でケガを治す、病気を治すということだけにフォーカスするのではなく、いかにその後の人生というものを考えた治療法を選択できるか、これから機械の導入などで技術は発展していく中でやはり心の部分や診断の精度などではどうしても人間が筆頭になっていくところなので、そういったところはしっかり高めていきたいですし、自分自身、ケガの経験などでは共感できるところはあると思うのでそういったところをしっかりやっていきたいと思います」

──(前半30分の)トライシーンを振り返ってコメントをお願いします。また、ノーサイドの瞬間に左側の一番遠いところにいて、なにかホッとしたような表情を浮かべていて一人の時間を楽しんでいるように見えたのが印象的でしたが?

「(前半30分の)トライシーンでは力也と目が合って、『あっ、こいつは絶対、放ってくれる』というのが分かりました。外のスペースが有効に使える状態で、自分はスピードに乗って(飛ばしパスの)ボールを受け取ることができたので、あとはいつものかたちでトライをとることができました。ディフェンスはいましたが、あのかたちは自分の中でもトライを取り切れる強いかたちだと思っているので、いつも通り走り切りました。試合が終わった瞬間に関しては、『ほっとした』というのが大いにありました。前半あれだけリードしていたのに後半は競った展開になり、最後の最後も何か一つ違えば逆転されていたかもしれないという展開の中で、しっかりリードを守り切って勝つことができたその瞬間は『ああ、良かった』という思いがよみがえりましたし、『ああ、もうラグビーすることないんだな』ということをじわじわと感じる部分がありました」

──表彰式の時に福岡高校での恩師(監督)でもありました森重隆会長と握手されていましたが、森会長から何か言葉をかけられましたか?

「(試合後)まだ、森さんとはお話できていませんのでお言葉というものは掛けていただいていませんが、森さんはすごく男気溢れる兄貴肌で、いつも大きな心で受け入れてくれる方です。自分がここまでラグビーをプレーさせてもらえるその基点を作っていただいたのは森さんによる指導が大きかったと思います。今、森さんが日本ラグビー協会の会長となり、ラグビーを盛り上げる一端として力になれたかと思い、嬉しく思います。

──ディーンズ監督が『アウトサイドバックスのブレイクダウンのレベルが上がったことがトップリーグのレベルが上がったことの象徴だ』と言っていましたが、プレーしていてどう感じていますか?

「ひとつそこは、海外とのプレーする中でも狙われたりするところですが、そこでいかにボールキープできるかが課題だと思いますし、アウトサイドで勢いが出たところでジャッカルされたりして、相手の流れになることがあったりしましたので、そういったところのスキルも練習してきて、それぞれのチームとしてそういったところを取り組んできたところは日本ラグビーの成長につながっていると思います」

──日本一になったトップアスリートから医師の道に行くということ珍しいことですが、アスリートの後輩たちにはどのようなことをつたえたいですか?

「ラグビー界ではプロ化も進んできていますが、セカンドキャリアがネックになってなかなか一歩を踏み出せない選手も多いと思います。その中で、いろいろな道を示すことは新たな挑戦の道を示すことにもなります。いままで前例がないからということで諦めていた選手たちに、僕のような新しい挑戦をした者の挑戦によって、こういう道もあるんだと知って、また新しく自分の挑戦に取り組んでもらえるような可能性の一つになれたら嬉しく思います」

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