トップリーグ2010-2011特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
今シーズンより、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第1節(9/3 - 9/4)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
09/03(金) 19:30 東芝ブレイブルーパス 7−12 三洋電機ワイルドナイツ 秩父宮
09/04(土) 17:00 豊田自動織機シャトルズ 17−16 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 豊田ス
09/04(土) 17:00 近鉄ライナーズ 30−14 リコーブラックラムズ 長居ス
09/04(土) 18:00 ヤマハ発動機ジュビロ 29−14 NECグリーンロケッツ ヤマハ
09/04(土) 19:00 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 18−10 サントリーサンゴリアス 豊田ス
09/04(土) 19:00 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 34−3 クボタスピアーズ 長居ス
09/04(土) 19:00 コカ・コーラウエストレッドスパークス 17−22 福岡サニックスブルース レベスタ

マッチレポート

アグレッシブに"超攻撃ラグビー"を封じたヴェルブリッツ

ほとばしるような緊張感の漂った東芝ブレイブルーパス-三洋電機ワイルドナイツの開幕戦から一夜明けた9月4日、全国各地でトップリーグ第1節、残り6試合が行われた。

愛知・豊田スタジアムでは昨季のセミファイナリスト同士のサントリーサンゴリアスとトヨタ自動車ヴェルブリッツが対戦。18-10でトヨタ自動車がリーグ戦では初となるサンゴリアス戦勝利を収めて好スタートを切る一方、豊田自動織機シャトルズがNTTコミュニケーショズ シャイニングアークスに際どく逆転勝ち(17-16)。記念すべきトップリーグ初陣を勝利で飾ることに成功した。

その他、大阪・長居スタジアムでは近鉄ライナーズ、神戸製鋼コベルコスティーラーズの関西勢がリコーブラックラムズ、クボタスピアーズの関東勢に快勝。福岡・レベルファイブスタジアムで行われた九州ダービーは福岡サニックスブルースがコカ・コーラウエストレッドスパークスに競り勝ち、静岡・ヤマハスタジアム(磐田)では“新生"ヤマハ発動機ジュビロがNECグリーンロケッツを退けた

■トヨタ自動車ヴェルブリッツ 18-10 サントリーサンゴリアス(前半10-0)──9月4日

先発メンバーの顔ぶれを見るだけで、両チームの首脳陣の意図は明らかだった。

サントリーは、本職はSHながら7人制W杯でも活躍するなど、爆発的なスピードを誇る成田秀悦を右WTBに起用。

「キックも少しは使うよ」

試合前にエディ・ジョーンズ新監督はそう打ち明けていたものの、“トライ王"小野澤宏時をFBに下げてまで“走り屋"としての成田に期待して先発させたあたりに、「攻め続けて勝つ」という今季のサントリーが目指すスタイルがうかがえた。

一方のトヨタ自動車のSOはオレニ・アイイ。番場美喜男、黒宮裕介、そして新加入の文字隆也と、他にもそれぞれ持ち味の違う指令塔を抱えるトヨタだが、朽木泰博新監督は「最も攻撃的なスタイル」の持ち主であるアイイに重要な開幕戦のゲームメイクを任せる決断を下したのだった。

「サントリーという攻撃的なチームに対して、こちらも攻撃的にいきたかった」

昨季も揃ってセミファイナルに勝ち残るなど、リーグテーブルの上位に名を連ねることの多い両チームだが、過去のトップリーグでの対戦ではサントリーが6戦全勝と圧倒してきた。

いわば“チャレンジャー"のトヨタ自動車が、超攻撃的を標榜するサントリーに対して、最も攻撃的な指令塔を起用して臨んだのは、非常に興味深い選択肢と言えた。

「ある程度、DFの時間は長くなる」(朽木監督)ことを想定しながらも、チャンスにはアグレッシブに攻める。

 ボールを持てば、重心が低く、かつシャープな動きで前に出て、DFでもサントリーのキープレーヤーであるCTBライアン・ニコラスやSOトゥシ・ピシを仰向けになぎ倒すようなビッグタックルを決める。

「前半の10分で、アイイのアグレッシブなプレースタイルを前面に押し出して主導権を握れたことが、80分間を通して優位に戦えた要因」(朽木監督)

 立ち上がりから、攻守に期待どおりのアグレッシブさを披露したアイイの存在に代表されるように、トヨタのひとりひとりの前に出る圧力は、サントリーの超攻撃型ラグビーを狂わせるに十分な迫力のあるものだった。

激しいプレッシャーにミスを重ねたサンゴリアス

「トヨタの激しいプレーにミスが多くなり、リズムが作れなかった」

試合後、NO8竹本隼太郎主将がそう振り返ったとおり、サントリーは高温多湿(この日の豊田市は日中38℃まで気温が上がった)でボールが滑りやすかったこと、そして何よりもトヨタのひとりひとりの前に出る圧力の前にミスを重ねた。

「まずは1対1でもっと前に出ないと」(CTB平浩二)

キックを使わず、ボールをどんどんつないでいくスタイルは、まだまだ消化不良というのが正直な印象だった。

 この日、トヨタが記録した2本のトライも、激しいプレッシャーからサントリーに出たミスからのターンオーバーから一気のカウンターで奪ったもので、「ずっと練習を重ねてきたとおり」(WTB遠藤幸佑)。

 前半28分には、昨季まで主将を務めていたSH麻田一平がFW陣の獲得したボールを足にかけ、サントリーSH田中澄憲に競り勝ってトライ。

後半9分には、自陣深くまで攻め込まれながら、サントリーCTBライアン・ニコラスがこぼしたボールを素早くBK展開。WTB水野弘貴からパスを受けたSH麻田が再び足にかけ、今度は水野が拾ってサントリーゴールに飛び込んだ。

「去年までと一番違うのは、ひとりひとりが責任感を果たそうという意識」

今季、新主将となったFL中山義孝がそう指摘するとおり、すでに勝負が決していたと言っていい後半38分までサントリーにトライを許さなかった堅守に象徴される、これまでのトヨタに垣間みられていた淡白さは減り、チーム全体から粘り強さが感じられもした。

約1万人という昨季の愛知県での開幕ゲームの2倍近くの大観衆。その中のひとりとしてトヨタ自動車の豊田章男社長が初めてラグビー部の応援に駆けつけるという歴史的な一戦で、トップリーグ史上初となるサントリーからの勝利をもぎ取ってみせたヴェルブリッツ。

今年も日本一を争う一角を担うことは間違いなさそうだ。

一方、トヨタ自動車-サントリーに先立って行われた昇格組同士の対戦、豊田自動織機シャトルズ-NTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦も手に汗握る展開で大観衆を沸かせた。後半32分、6点差を追っていた豊田自動織機がSH吉田正明主将のトライとSOマリー・ウィリアムスのゴールで逆転。最後はトライラインに迫ったNTTコムCTB山下大悟にWTB筒井敏光が強烈なタックルを決めてノックオンを誘い、豊田自動織機が記念すべきトップリーグ初勝利をものにした。

(text by 出村謙知)

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主将の座を離れ「いちプレーヤーとしてラグビーを楽しんでる」というトヨタSH麻田は1トライ+"1アシスト"の活躍。左はWTBとして先発したサントリー成田
(photo by Kenji Demura)
サントリ-CTBニコラスを2人がかりのタックルで吹き飛ばすトヨタSOアイイとLO谷口。トヨタは前に出る圧力で上回った
(photo by Kenji Demura)
トヨタ自動車-サントリー戦前に豊田スタジアムで行われた"昇格組ダービー"は豊田自動織機が17-16で際どくNTTコミュニケーションズを下した
(photo by Kenji Demura)

 

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2010-11年度ジャパンラグビートップリーグが、3日、東京・秩父宮ラグビー場で開幕した。カードは前年度プレーオフ決勝の再現、ディフェンディング王者の東芝ブレイブルーパス対三洋電機ワイルドナイツ。宿命のライバル同士の激突は、終始ディフェンスで重圧をかけ続けた三洋がFB田邉淳の4PGで12-7と競り勝ち、勝ち点4を獲得。敗れた東芝も、7点差以内の負けに与えられるボーナス・ポイント1を獲得した。

■東芝ブレイブルーパス 7-12 三洋電機ワイルドナイツ(前半0-9)──9月3日

 試合開始を告げる相田真治レフェリーのホイッスルと同時に、スタンドを埋めた13,840人の観客が「ウオォー」という物凄い雄叫びを挙げた。
 東芝のサポーターも三洋のサポーターも、待ちかねていたシーズン開幕に、期待と喜びを爆発させたのだろう。そして、観客の期待は最後まで裏切られることがなかった。
 そう、極論すれば、勝敗よりもラグビーの本当の面白さがひときわ印象に残った試合だった。
 猛暑のなかで真冬と同じような運動量の多い激しいゲームを80分間貫き通した両チーム44名の選手全員が、この試合のヒーローだろう。
 コンディションが厳しかった分、レベルの高さがよけいに際立った試合だった。

 東芝のキックオフで始まった試合は、両チームともに粘り強い防御で相手にトライを許さないまま、時間だけが経過する。
 東芝は、持ち味の立った状態でボールをつなぐ「スタンディング・ラグビー」で三洋防御を破ろうと試みるが、三洋は一人ひとりのタックルが強く、東芝に思うようにボールをコントロールさせない。そして、タックル後のボール争奪局面(ブレイクダウン)では「相手より低く強い姿勢でラックに入って」(飯島均監督)東芝の反則を誘い、FB田邉淳が3つのペナルティ・ゴール(PG)を決めて前半を9-0とリードした。

 後半は、打って変わってボールが大きく動く展開に。
 10分過ぎには、三洋がHO堀江翔太の突破から東芝をゴール前に釘付けにして連続攻撃。この猛攻を粘り強く守った東芝は、ゴール前でボールを奪うや一気に逆襲し、三洋陣内深く攻め込む。が、今度は三洋が驚異的なカバーディフェンスでじっと耐え、東芝からボールを奪ってピンチを脱出。
 両チーム必死の、切り返しにつぐ切り返しはおよそ6分間に及び、ボールの動きがようやく途切れた16分に早くもウォーター・ブレイクが入ったほどの激しさだった。

トライを生んだベテランの妙技

 以後は、ボール支配率で圧倒する東芝が再三再四、三洋のゴールに迫るが、あと一歩のところでパスがつながらず、トライを奪えない。逆に三洋は20分に田邉が4本目のPGを決めて12-0と突き放す。
 東芝は、29分にFB立川剛士に代えてベテランの松田努を投入。松田はこれで、かつてチームメートだった村田亙(現・7人制日本代表監督)の持つ40歳8日のトップリーグ最年長出場記録を破ったが、この起用が最後の最後に功を奏した(「松田は、これから毎試合最年長出場記録を更新し続けるでしょう」=試合後の東芝・瀬川智広監督談)。
 後半39分、中央付近でボールを受けた松田は、見事なスワーブで三洋の防御を抜くと、ディフェンスを自分に引きつけたまま隣を走るサポートの豊田真人(途中出場NO8)に絶妙のタイミングでパス。これで決定的な2対1の状況を作り出し、豊田が外側に待つSOデイビッド・ヒルにボールをつないでついに待望のトライが生まれた。
 ヒルはそのままドロップキックでゴールを決め、スコアは7-12。最後のキックオフに逆転勝利の望みを託したが、渾身のアタックもハーフウェイ・ラインまで攻め返したところで三洋にボールを奪われて万事休す。
 三洋が12-7で昨シーズンのプレーオフ決勝戦の雪辱を果たした。

「最後は昔、神戸製鋼に逆転で優勝をさらわれた悪夢(第43回全国社会人ラグビー大会決勝=90年度)がよみがえりましたよ」と胸をなで下ろした三洋・飯島監督は、「非常に暑い、熱い試合。チーム全員の一歩でも前に出ようという姿勢が東芝のラグビーを狂わせたのでしょう」と試合を振り返った。
 敗れた東芝・廣瀬俊朗キャプテンは「今後につながるいい試合ができた」と総括した後でこう付け加えた。
「これでまた、シーズン最後のプレーオフでリベンジというシナリオができました」
 開幕前から「2強」と言われた両チームが、噂に違わぬ強さをラグビーファンに見せつけた開幕戦だった。

(text by 永田洋光)

   
試合終了間際に1トライを返したものの、三洋の強固なDFの前に東芝のアタックは不発。ブレイクダウンでの三洋の巧みさも目立った
Photo by Hiroyuki Nagaoka (RJP)
三洋はノートライながらFB田邉(写真)のPGで優位に試合を進め、昨季ファイナルのリベンジを果たすことに成功した
Photo by Hiroyuki Nagaoka (RJP)
昨季は開幕戦で負けた東芝がファイナルで三洋にリベンジ。今季も両者はプレーオフで再び顔を合わせることになるのか?
Photo by Hiroyuki Nagaoka (RJP)
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