トップリーグ2010-2011特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
今シーズンより、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第3節(9/17 - 9/19)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
09/17(金) 19:30 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 26-14 クボタスピアーズ 秩父宮
09/18(土) 17:00 リコーブラックラムズ 35-29 福岡サニックスブルース 秩父宮
09/18(土) 17:00 豊田自動織機シャトルズ 7-40 東芝ブレイブルーパス 瑞穂
09/18(土) 18:00 コカ・コーラウエストレッドスパークス 20-15 近鉄ライナーズ レベスタ
09/18(土) 19:00 三洋電機ワイルドナイツ 49-10 ヤマハ発動機ジュビロ 秩父宮
09/18(土) 19:00 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 16-7 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 瑞穂
09/19(日) 13:00 サントリーサンゴリアス 20-25 NECグリーンロケッツ 月寒

マッチレポート

ヤマハ発動機、三洋電機に屈す

 第3節は、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスがクボタスピアーズに26-14と快勝。嬉しいトップリーグ初勝利を挙げた。
 三洋電機ワイルドナイツはヤマハ発動機ジュビロを破り、神戸製鋼コベルコスティーラーズを退けたトヨタ自動車ヴェルブリッツとともに全勝をキープ。福岡サニックスブルースはリコーブラックラムズに敗れて連勝がストップした。
 その他、東芝ブレイブルーパスは豊田自動織機シャトルズを、コカ・コーラウエストレッドスパークスは近鉄ライナーズを、それぞれ破った。

■三洋電機ワイルドナイツ 49-10 ヤマハ発動機ジュビロ(前半23-3)──9月18日

 立ち上がりの20分間は、ボールが大きく動く緊迫した展開だった。
 ともにPGを決めて3-3ながら、流れは徐々に三洋に傾く。
 決め手となったのは、相手防御をどう破るかという、ラインブレイクにかける工夫の多さ。
 たとえば、4分の三洋のPGに至るきっかけを作ったのは、SOトニー・ブラウンの絶妙のチップキック。ロングキックに備えて深く下がったヤマハのバック・スリーと防御ラインの間に絶妙なコントロールで小さくボールを蹴り上げ、自らキャッチして一気に攻めの流れを作った。
 26分には、自陣で相手キックを受けたラックから果敢に攻撃し、ハーフウェイ・ラインを越えた辺りからHO堀江翔太が抜け出してチャンスを作る。ゴール前で倒されるとサポートが殺到してボールを確保。SH田中史朗からボールを受けたブラウンがインゴールを陥れた。
「三洋はハイパントの蹴り合いからできたポイントからすぐに攻めてきた。仕掛け負けですね」と振り返ったのは、ヤマハFB五郎丸歩。
 堀江は、32分にも左側の狭いサイドを駆け抜けた霜村誠一主将からパスを受けて、WTB三宅敬のトライをアシストした。

細部にこだわった、自在なラグビー

 後半、立ち上がりにヤマハはSOマレ・サウからパスを受けた五郎丸が大きく抜け出して三洋ゴールに迫るが、仕留めの攻撃でパスミス。
 対照的に三洋は、ラックからボールを受けた堀江が横に走りながらヤマハ防御を引きつけてCTB大澤雅之のトライをアシスト。あっさりと追加点を記録した。
 このトライの場面でも、横走りからタテに切れ込んだ堀江に対して、左に大澤がつくと同時に右に三宅が走り込み、きれいなサポート態勢を整えていた。
「相手の防御を見ながら、ランにするかパスにするかキックにするか、選手が自信を持って判断している」と飯島均監督。
 1対1の状況で、相手の弱い肩に向かって当たる練習を繰り返すなど、細部にこだわったチーム作りが大量得点に結びついた試合だった。

 もう1試合のリコーブラックラムズ対福岡サニックスブルースは、開幕から連勝で秩父宮に乗り込んだサニックスに期待が集まったが、リコーが奮起。
 素早く強く前に出るディフェンスでサニックスにプレッシャーをかけてミスを誘い、前半に3トライ2ゴール2PGをたたみかけて25-5と大きくリードした。
 後半に、前節の神戸製鋼戦で衝撃を与えたWTBカーン・ヘスケスが登場し、サニックスの反撃ムードが盛り上がる。そして、10-32で迎えた後半9分に、力強い走りでトライを奪って期待に応えた。サニックスは最後まで攻撃の手を緩めずに後半だけで4トライを奪い、29-35と敗れはしたもののボーナスポイントを2つゲット。
 一方のリコーも、3試合目にして嬉しい今季初勝利を4トライ以上のボーナスポイントとともに挙げた。

(text by 永田洋光)

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卓越したランニングでチャンスを作り出した三洋HO堀江翔太。試合後は、ラインアウトでのスローイング・ミスを反省することしきりだった
photo by RJP
チーム内での激戦区、CTBでトップリーグに初先発。初トライも挙げた大澤雅之は「メンバー発表の時に、自分が一番ビックリした」と振り返った
photo by RJP
ヤマハは三洋の巧みなボディ・コントロールにタックルの芯を外されて、1対1の局面で徐々に劣勢になった。「単純にタックルが高かった」とヤマハ堀川隆延監督
photo by RJP

 

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"らしさ"取り戻し、レッドスパークス今季初勝利

開幕初戦で福岡サニックスブルースに競り負け(17-22)、前節トヨタ自動車戦では、相手FWの前に出る圧力の前に自分たちのペースを失い完敗(5-50)。次週小休止となる前の第3節で、是が非でも今季初勝利をものにしたかったコカ・コーラウエストレッドスパークスが福岡で近鉄ライナーズと対戦。DFからリズムをつくっていく本来の姿を取り戻して、嬉しい地元でのシーズン初白星を挙げた。

■コカ・コーラウエストレッドスパークス 20-15 近鉄ライナーズ(前半10-0)──9月18日

 今季は「オールアタック」というスローガンを掲げて、より攻撃的なラグビーにもチャンレンジしてきたレッドスパークスだが、前2節の反省を経て取られた方針は"原点回帰"。
「もう一度、『まずはディフェンスからペースを作ろう』ということを意識し直した。元々自分たちの得意な分野だったのに、ちょっと忘れかけていた部分があったので」(向井省吾監督)

 激しく、低く、しつこく守っていくスタイルを前面に出しながらリズムをつくっていくことを再認識したレッドスパークスにとって、あるいはライナーズこそ、自分たちのラグビーをぶつけて立ち直るためには「かっこうの相手」(NO8山口智史ゲームキャプテン)だったかもしれない。
「パワフルな外国人の多いチームに対して、日本人のプライドを見せたかった」
 そんな前主将の言葉どおり、立ち上がり目についたのは、レッドスパークスDF陣がライナーズが誇る“大駒"たちを、小気味いいテンポでタックルをくり返しながら、止め切るシーン。
近鉄はジェフリー・イエロメ、リコ・ギアのCTB陣、さらにLOトンプソン ルーク主将やFLタウファ統悦などがラインに入って、タテに切り裂こうとするが、赤いジャージの働き者たちの抵抗の前にことごとく跳ね返された。

「フラストレーションの溜まる試合だった」
 試合後、そう振り返ったのは近鉄トンプソン主将。
 "レッドスパークス"の名のとおり、次から次へと湧き出てくるようなタックルの連続の前に、時間の経過とともに、ライナーズが誇る大駒たちがリズムを失っていったように見えた。

数少ないチャンスにフェイズを重ねず2トライ

「いまのジャパンというチームのことではなく、"日本代表"というものを意識した戦い方を考えたい」
 そう語る向井監督の目指す方向性は、確かに日本チームが海外のチームと戦う場合の、ひとつのロールモデルとなる要素が含まれたものであることは間違いないだろう。
 この日は、早く(速く)、低く、しつこいDFでペースをつかんだ後のアタックでも、"らしさ"は十分に発揮された。

 前半29分。自陣から突破をはかった近鉄CTBギアにDFでプレッシャーをかけてノックオンを誘い、さらにラックで近鉄が反則。
十分PGを狙える位置だったが、レッドスパークスはタッチキックからゴール前ラインアウトを選択して、マイボールをキープ。モールをドライブするのと同時に、NO8山口ゲームキャプテンがモールの動きとは反対のサイドにボール持ち出して、ラインアウトスロワーだったHO蔵憲治にパス。
「練習でやっていたとおりにトライがとれたので嬉しかった」(PR西浦達吉)というチームワークが実るかたちで、この日、両チーム合わせて初となるトライを奪い、主導権を握った。

 さらに、13-8と追い上げられた後半22分にも、敵陣22m付近での相手ボールのラインアウトが乱れたチャンスから、NO8山口ゲームキャプテンがタテにゲインを切った後、途中出場していたSH香月武からいいタイミングで走り込んできたFB松岡元気にパスが通り、松岡が近鉄DFのギャップを切り裂くように走り抜けて、再び流れを引き戻した。
「例えば、日本が海外の強豪チームと対戦するとして、そんなに多くのラックを重ねて、トライが取れるのか」(向井監督)
低く、早く(速く)、しつこく、DFで粘りながらペースをつかみ、チャンスには少ないフェイズで取りきってみせる。
 個々のインパクトでは劣ると言わざるを得ない集団が、15人(22人)で勝つための"コーラ・スタンダード"、いや、あるいは"ジャパン・スタンダード"とさえ言っていいかもしれない、明確なスタイルを見せつけて、本拠地・福岡で今季初白星をものにしたレッドスパークス。
 FL/NO8豊田将万、SO/FBショーン・ウェブといった主力を故障で欠きながら、若いメンバー主体のチームで、"らしさ"を再確認しながらの勝利は、シーズン中盤から終盤にかけてのチームの進化につながっていく可能性を十分感じさせるものだった。

(text by 出村謙知)

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photo by Kenji Demura(RJP) photo by Kenji Demura(RJP) photo by Kenji Demura(RJP)
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