トップリーグ2010-2011特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
今シーズンより、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第4節(10/1 - 10/3)

特集トップへ戻る

試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
10/01(金) 19:30 NECグリーンロケッツ 3-47 東芝ブレイブルーパス 秩父宮
10/02(土) 12:00 リコーブラックラムズ 29-27 コカ・コーラウエストレッドスパークス 秩父宮
10/02(土) 13:00 ヤマハ発動機ジュビロ 26-50 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 松本アルウィン
10/02(土) 14:00 サントリーサンゴリアス 92-8 豊田自動織機シャトルズ 秩父宮
10/03(日) 13:00 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 10-50 三洋電機ワイルドナイツ 熊谷
10/03(日) 13:00 福岡サニックスブルース 36-36 クボタスピアーズ 本城
10/03(日) 13:00 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 22-25 近鉄ライナーズ 加古川

マッチレポート

近鉄ライナーズ、劇的な逆転勝利

 

最後の7分間で3トライを挙げての劇的な逆転勝ちに喜ぶ近鉄フィフティーン。神戸に対する勝利は22年ぶり
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

順位争いの行方が見え始める第4節、負ければ今後の展開が苦しくなるチームが踏ん張り、熱戦が相次いだ。土曜日は秩父宮ラグビー場でリコーブラックラムズが29-27でコカ・コーラウエストレッドスパークスを退け、日曜日は、福岡で福岡サニックスブルースとクボタスピアーズが引き分け。そしてトップリーグ初開催となった兵庫県の加古川では、試合終盤、まさかの展開に客席が沸いた。

■神戸製鋼コベルコスティーラーズ ●22-25○ 近鉄ライナーズ(前半12-3)──10月3日

ともに3節まで1勝2敗。アグレッシブにボールを動かすラグビーを標榜しながらミスで攻撃がつながらないという、もどかしい戦いが続いた第4節での対戦である。神戸製鋼は、ベテランの伊藤剛臣をNO8に据え、近鉄はHB団を今季初のSH佐久間隆、SO大西将太郎に組み替え流れを変えようと試みた。

降りしきる雨の中、キックオフ直後から積極的に仕掛けたのは近鉄だった。「キックの応酬につきあいたくなかった」(今田圭太コーチ)。ピーター・グラント、正面健司らキック力ある選手が揃う神戸製鋼と蹴り合えば、地域的に押し込まれ、神戸製鋼が得意のスクラム、ラインアウトからのモールで苦しめられる。できるだけボールをキープして攻め、神戸製鋼の得意の形を作らせない。それがコンセプトだった。

しかし、神戸製鋼はその攻撃を粘り強いディフェンスで封じると、近鉄のミスに乗じて攻め込み、前半36分には、大畑大介が相手のキックをチャージしてそのままトライを奪う。シーズン終了後の引退を表明している大畑の今季初トライで神戸製鋼ファンで埋まった客席は大いに沸いた。前半は10-5と神戸製鋼リードで終了。後半も、神戸製鋼は相手ボールのスクラムを奪ってトライするなどして20分までに22-8とリードを広げた。誰もが神戸製鋼の勝利は間違いないだろうと思う展開だった。

控え選手の投入が流れを変えた。そして…

ところが、近鉄は諦めていなかった。ベンチに座っていた控え選手の一人、SO重光泰昌は、「この試合を決めるのは俺たちだっ!」とチームメイトに声をかけた。前半からのアグレッシブな攻撃で疲れが出始めた先発メンバーに代わって、後半18分、HO太田春樹、SH金哲元、25分、重光、WTB田中優介が投入されると、試合は大きく動き始める。「とにかくどんなボールでも素速くさばいて、テンポアップ」、重光の指示を受けた金は、どんどんパスを出した。この攻撃に神戸製鋼は防戦一方になり、思わずオフサイドなどの反則を繰り返し、後半30分、FB正面がシンビン(10分間の一時退場)となる。

BKのキーマンを欠いて、神戸製鋼の組織ディフェンスが乱れる。近鉄はそこを見逃さず攻めた。まずは33分、WTB田中がCTBリコ・ギアのパスを受けてインゴール右隅にトライ。13-22と9点差とする。キャプテンのトンプソン・ルークは、「息をするのも苦しいくらいだった」という疲労困憊の中で、「このまま行こう、攻め続けろ!」とチームメイトに声をかけ続けた。37分、自陣10mライン付近のスクラムから近鉄がBKのサインプレーを仕掛ける。重光のパスを受けたギアに、大畑が猛然とタックル、つぶされるかと思われた瞬間、ギアは体勢を崩されながら、回り込んで来た重光にふわりとしたパスを放った。一人少ない神戸製鋼のディフェンスラインにぽっかり穴が空いた。「元気な自分が走るしかない」、重光は思い切ってインゴールを目指した。約60mの独走トライで、20-22。瞬く間の2点差である。

残り時間は2分ほど。神戸製鋼が時間を上手く使えば、逃げ切ることも可能だったが、その力は残っていなかった。近鉄の攻撃中、時間切れを告げるホーンが鳴る。プレーが途切れれば試合終了である。攻めきるか、守りきるか。PG一本でも逆転という状況で、ミスのできない近鉄が攻め、反則のできない神戸製鋼が懸命に守る白熱の攻防が続いた。ラストパスを放ったのは、またもギアだった。重光の縦突破でできたポイントから出てきたボール受けたギアは、神戸製鋼ディフェンスが届かない左タッチライン際にいたWTB松井寛将にロングパス。キャッチした松井はそのままインゴールにダイブし、決着をつけた。歓喜の近鉄フィフティーンの横で、大畑大介が、伊藤剛臣が、呆然と空を仰ぐ。最後まで諦めなかった近鉄の気持ちのこもった逆転劇だった。

(text by 村上晃一)

1   2   3
雨が降りしきる悪条件の中、積極的にボールを動かし続けたライナーズ(写真は効果的なラインブレイクを見せたCTBギア)
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)
今季初先発でフル出場したSO大西の攻撃的なゲームメイクも劇的な逆転勝利の要因となった
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)
前半36分のCTB大畑のトライ(写真)で試合を優位に進めた神戸製鋼だったが、まさかの逆転負けで早くも3敗目を喫した
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 

完全復調の王者・東芝、上昇気流に乗るNECを退ける

  0

マン・オブ・ザ・マッチに輝いたNO8望月(写真)の2トライなど計7トライを奪って"完全復調"をアピールした東芝
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

1週間のショートブレークを経て再開されたトップリーグ第4節。
10月1日には、NECグリーンロケッツと東芝ブレイブルーパスによる"港区ダービー"が行われ、
王者・東芝が7トライを奪う猛攻を見せ、47-3で圧勝した。

■東芝ブレイブルーパス ○47-3● NECグリーンロケッツ(前半12-3)──10月1日

 開幕戦で三洋電機ワイルドナイツに敗れた後、第2節では昇格組のNTTコミュニケーションズシャイニングアークスにも、「たまたまスコアでは上回った(33-28)だけで、負けに等しい内容」(瀬川智広監督)という大苦戦。
 序盤戦、いまひとつ波に乗れなかった東芝だったが、ショートブレークを挟んで迎えた"宿敵"NECとの対戦では、とにかく激しく、そして重厚に、テンポよく前に出て行く本来の姿を取り戻して、王者らしい存在感を見せつけた。
 この日はブレイブルーパスにとっては、今季3度目となる秩父宮でのナイトゲーム。猛暑真っ盛りだった前述のワイルドナイツ戦およびシャイニングアークス戦時と比べて、気温は10度ほど下がっていたはずだ。
 ようやくラグビーをプレーしやすい気候となったことも影響したのだろう。
 立ち上がりの5分間だけややキックが多い印象を受けた以外は、双方とも激しい局地戦で獲得したボールを積極的に動かして攻め合う、見応えある展開となった。

 前節、札幌でサンゴリアスを撃破した勢いに乗って、2節連続でのアップセットを狙うグリーンロケッツは、この日もSOにブライス・ロビンスを入れて、守りだけではなく、もちろんFWプレーだけでもないトータルラグビーで、王者を慌てさせる場面も確かにあった。
それでも、「80分間通しての完成度という点では、東芝の方が良かった」と、NECの岡村要ヘッドコーチが「完敗」を認めたとおり、ひとりひとりの前に出る激しさ、あるいはひとつのプレーに対するまわりの選手たちの反応、そしてセットプレーの安定やモールの迫力——どれをとっても、王者・東芝が一枚も二枚も上だった。

ピンチを救った廣瀬主将の好守が転機に

 前半15分に敵陣深くのラインアウトからモールを押し切って、東芝が先制。
 その後、NECが1PGを返して5-3となった24分、試合の流れを決定づける"ビッグプレー"が飛び出す。
 NECがNO8土佐誠の突破からチャンスをつかみ、CTB森田茂希がフォローした後、FLセミシ・サウカウが東芝陣内深くまでゲインした後、SOロビンスにラストパス。
 このパスが通っていれば逆転トライという場面だったが、この日、今季最後のフライデーナイターに集まった7299人の観客の6割以上という感じだったグリーンロケッツファンの歓声は、一瞬にしてため息に変わることに。
 最後のディフェンダーだった東芝WTB廣瀬主将がこれしかないタイミングとコースどりでブライスの前に割って入って、パスカット。
 キャプテン自らがチームのピンチを救って勢いづいたブレイブルーパスは直後にSOデイビッド・ヒルのブレイクからフォローしたWTB宇薄岳央がタテにグリーンロケッツDを切り裂いて2トライ目。

 この計1分にも満たない攻防で、試合の流れを完全に自分たちのものにした東芝は、後半に入るとさらに自分たちの強みを前面に出して5トライを追加。
「笠井(建志=PR)が意地を見せてくれた」(瀬川監督)
「雨宮(俊介=LO)がラインアウトをとりまくってくれたのが大きかった」(LO大野均)
共に、今季開幕2戦目までは先発メンバーから外れていた新旧2人のFWが持ち味を発揮したこともあってセットは終始優勢。
ブレイクダウンでも「プレッシャーをかけられ続けたのが敗因」(ニリ・ラトゥNEC)と敵将も脱帽の圧倒ぶり。
SH三井大祐の素早い球出し、SOデイビッド・ヒルのエリアマネージメントも、FWの頑張りもあって冴えまくり、CTBニール・ブリュー、WTB宇薄といったスピードも迫力もあるランナーがどんどんゲインを切っていく、いかにも東芝らしいアタックのオンパレード。
「東芝らしく一体感のある攻めのラグビーができた」(2トライを奪いマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたNO8望月雄太)と、9月の不調から一転、10月は一気に上昇気流に乗っていきそうな勢いを感じさせる、王者の完全復調ぶりだった。

(text by 出村謙知)

1   2   3
序盤の3試合ではミスの目立った東芝SOヒルも、この日は自在なゲームメイクでチームを勢いづけた
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)
今季初の会心の勝利に試合後、安堵の表情を浮かべる東芝WTB廣瀬主将(右)。ピンチを救う好守で勝利に貢献した
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)
NO8での起用となったNEC土佐は何度も東芝DFを突破するなど成長ぶりを見せたが、勝利には結びつかず
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

 

ページの先頭へ
本サービスの全てのページは、著作権により保護されています。
本サービスに含まれている全ての著作物を、著作権者の事前の許可無しに複製、変更することは禁じられております。
Copyright © (財)日本ラグビーフットボール協会 All rights reserved.