トップリーグ2010-2011特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
今シーズンより、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第10節(12/11 - 12/12)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
12/11(土) 12:00 東芝ブレイブルーパス 21-12 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 秩父宮
12/11(土) 13:00 クボタスピアーズ 11-33 リコーブラックラムズ 小瀬陸
12/11(土) 13:00 NECグリーンロケッツ 19-24 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス フクアリ
12/11(土) 13:00 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 57-28 豊田自動織機シャトルズ 豊田ス
12/11(土) 14:00 三洋電機ワイルドナイツ 15-17 サントリーサンゴリアス 秩父宮
12/12(日) 13:00 コカ・コーラウエストレッドスパークス 27-26 ヤマハ発動機ジュビロ ベアスタ
12/12(日) 13:00 福岡サニックスブルース 35-31 近鉄ライナーズ 徳島球

マッチレポート

攻撃ラグビーを80分間貫き、サントリーが三洋の無敗神話に終止符

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80分間攻め続けたサントリーがCTBニコラス(写真左から3人目)の劇的なPGで三洋電機に逆転勝ち
(C)2010,JRFU(photo by Hiroyuki Nagaoka RJP)

11日、トップリーグ第10節。秩父宮ラグビー場では3位のサントリーサンゴリアスが首位を行く三洋電機ワイルドナイツに劇的な逆転勝ち。一方、王者.東芝ブレイブルーパスは"大畑大介フィーバー"に惑わされずに神戸製鋼コベルコスティーラーズの挑戦を退け、2位の座を守った。
その他、トヨタ=豊田ダービーは4位のトヨタ自動車ヴェルブリッツが9トライを奪う猛攻で順当勝ちし、9位リコーブラックラムズも12位に沈むクボタスピアーズを破ったが、8位のNECグリーンロケッツはNTTコミュニケーションズシャイニングアークスに足元をすくわれ、5敗目を喫した。

サントリーサンゴリアス ○17-15● 三洋電機ワイルドナイツ(前半0-15)──12月11日

プレーオフ以降に再登場の可能性があるとはいえ、レギュラーシーズンでは、大畑大介の勇姿を首都で見られる最後のチャンスということもあり、開幕戦の1万3840人に肉薄する1万3251人が駆けつけた秩父宮ラグビー場。

第1試合の東芝-神戸製鋼戦後に、大畑自身がグラウンドを1周しながらサインボールをスタンドに投げ入れ、ファンと握手……。
どことなく"大畑セレモニー"の余韻が残る中、全勝で首位を走り続ける三洋電機と2敗で3位につけるサントリーの注目の一戦がキックオフされた。

東芝-神戸製鋼の後半、神戸が風上に立った時だけ、やや風が収まったものの、この日の秩父宮はポールに掲げられた旗が真横に激しく揺れ続けるほどの強風が吹き続けた。
今季、アタッキングラグビーを掲げ、とにかく攻め続けるスタイルを追求してきたサントリーは、前半あえて風下を選択。
「今季、最後の20分間で総得点の45%を取ってきた」と、エディ・ジョーンズ監督が胸を張るとおり、キックによるエリアマネジメントに優れる三洋に対し、前半は攻めながらもある程度DFで我慢しつつ、後半に勝負を持ち込むゲームプランが描かれていた。

前半は三洋の北川智規、山田章仁という新旧WTBが1トライずつを奪って15-0とリード。
風下とはいえ、前半からサントリーがボールを持って攻める時間帯が長かったが、「対三洋ということで意識過剰になった」(NO8竹本隼太郎主将)ことが響いたのかミスも多く、三洋の懐深いDFを完全に破るまでには至らず、結果的には零封されるかたちで前半を終了した。

度重なるアクシデントも響いた三洋

攻めのサントリー対守りの三洋。
後半、サントリーが風上に立ったことで、その図式はさらに顕著になる。
「ほとんど、アタックの機会がなかった」
前半18分からトニー・ブラウンに代わって三洋の指令塔を務めることになったSO野口裕也の言葉どおり、後半開始のキックオフ直後だけは、三洋がサントリー陣内に攻め込んだものの、それ以降はほぼ一方的にサントリーが攻め続ける展開に。
しかも、三洋は後半早々いきなりつかんだPGのチャンスをFB田邉淳が外す。
風の影響もあったのか、田邉は前半5分にもいつもなら入れておかしくないPGを外しており、結果的にはそのキックミスが命取りともなった。

個々が強く、しかも組織としても懐の深い三洋DFにはね除けられ、いつの間にかターンオーバーされ、あるいはミスでチャンスを潰しても、とにかく自分たちのスタイルにこだわってしつこく攻め続けたサントリーが、とうとうワイルドナイツの鉄壁の守りを完全に崩してみせたのは後半11分。

三洋ゴール前のスクラムからSOトゥシ・ピシ、CTB平浩二と、連続してタテを突いて三洋DFを内側に集めた後のラックからSH日和佐篤が左へ持ち出し、FL佐々木隆道、WTB小野澤宏時とつないで、トライ王が左隅に飛び込んだ。
これで勢いに乗ったサントリーは、続く14分にも「今日はCTBの日本代表コンビが素晴らしかった」とジョーンズ監督を喜ばせる活躍を見せたライアン・ニコラス、平浩二のCTB陣とSOピシの3人が絡むサインプレーで三洋DFに穴を開け、「前が空いたのが見えた」という平があっさり三洋ゴールを陥れた。

三洋・田邉とは対照的に、ニコラスが2本ともゴールをしっかり決めて、試合は一気に1点差に(三洋15-14サントリー)。
その後、もう一度、秩序を取り戻した三洋DFの前にサントリーも決定的な場面は作れなくなるが、終了2分前にニコラスが「普通よりちょっとプレッシャーがあった」というPGを決めて17-15と逆転。4年ぶりとなる三洋戦勝利をものにした。

「自分たちのラグビーを貫けば、三洋に勝てることが証明できたのは大きい」(マン・オブ・ザ・マッチに輝いたCTB平)
「今年のシーズンで重要な試合になった」(PR畠山健介)
サントリーにとっては、序盤戦で2敗するなど躓きながらも、自分たちの新たなスタイルを信じて攻め続けた末に三洋を倒しただけに、チームを大きくステップさせる勝利になったことは間違いないだろう。

一方、レギュラーシーズンでは2年ぶりの黒星となった三洋だが、サントリーにほぼ一方的に攻められながらもトライ数ではイーブン。
前述とおり、SOブラウンが前半早々に退き、後半開始時点でCTB霜村誠一主将も左足を痛めて交代。リザーブに入る予定だったSO/FBサム・ノートンナイトに至っては、試合前のアップで太ももに違和感を訴えて急遽メンバー落ちする始末。
最終的には、WTB山田章仁がCTBのポジションに入らざるを得ないなど、「いろんなアクシデントがあった」(飯島均監督)状況でも、若手中心のメンバー構成でサントリーと最後まで競った試合ができたことは、三洋の底力の証明と見ることもできるだろう。

ともに、シーズン終盤に向けて、さらなる進化の予感を漂わせつつ、この日、最後の最後に勝利の女神に振り向いてもらえたのはサントリーであり、恐らく、その事実に異を唱える人は1万3000人の大観衆の中にはいなかっただろう。

(text by 出村謙知)

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2年前の最終戦以来のレギュラーシーズンでの敗戦を喫した三洋だが、若手にとってはいい経験となった一面も
(C)2010,JRFU(photo by Hiroyuki Nagaoka RJP)
大観衆の注目を一身に集めた神戸製鋼・大畑。プレーオフ以降に再度の秩父宮リターンはあるのか?
(C)2010,JRFU(photo by Hiroyuki Nagaoka RJP)
MOMに輝いたFB吉田大(写真)のトライなどで、神戸の挑戦を退け2位をキープした東芝
(C)2010,JRFU(photo by Hiroyuki Nagaoka RJP)

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近鉄の猛攻をしのぎ、サニックスが4強挑戦者に名乗り

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近鉄を破ったサニックスが5位に浮上。試合終了と同時にSO小野とFB古賀は抱き合って歓喜の表情を見せた
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

12日、トップリーグ第10節の残り2試合が行われ、ともに接戦の末、福岡サニックスブルースが近鉄ライナーズに、コカ・コーラウエストレッドスパークスがヤマハ発動機ジュビロに、それぞれボーナスポイントを加えたかたちで勝利。この結果、サニックスは神戸製鋼と入れ替わって5位に浮上し、4強入りが現実味を帯びてくる一方、コカ・コーラウエストにとっても、トップリーグ残留に向けて価値ある1勝となった。

福岡サニックスブルース ○35-31● 近鉄ライナーズ(前半23-19)──12月12日

第9節終了時点で、6位と7位につけていたチーム同士の対戦。
前日に東芝に敗れた5位神戸製鋼との勝ち点差は6位サニックスが「3」で、7位近鉄が「5」。
勝った方が4強へのチャレンジ権を手にすると言っていい状況で行われた一戦は、立ち上がりから、今季のトップリーグを盛り上げてきた両チームの攻撃力がぶつかり合う、見どころの多いゲームとなった。

先制したのはサニックス。
前半、風上に立ったこともあって、この日はSOの位置に入った小野晃征、あるいはFB古賀龍二などが、効果的なキックを散りばめる。
「ウチはそんなにたくさんキックを使うチームじゃない」(サニックス藤井雄一郎監督)とはいうものの、攻撃的なキックによるゲームコントロールでは、サニックスに分があったよう見えた。

開始2分に小野が狙ったDGは外れたものの、4分のPGは決めて3-0。
9分に近鉄がラインアウトからモールを押し込んで逆転したが、13分には逆にサニックスがラインアウトからのBK攻撃でラインブレイクし、FB古賀が飛び込んで再逆転。
以後、サニックスはCTBシリバ・アヒオのインターセプトからのトライに小野が2PG、1ゴールを追加。近鉄も23分に再びラインアウトからのモールで、さらに37分にはCTBジェフリー・イエロメの個人技で、計2トライを加え、前半は23-19とサニックスの4点リードで終了した。

軽率なプレーでのシンビンが痛かった近鉄

サニックスが4点リードしての折り返しとはいえ、近鉄は後半風上。それでなくても、今季のライナーズは5勝のうち4勝が後半に逆転勝ちを収めたもので、終盤に力を発揮する傾向のあるチーム。
「前半最後の5分間は相手にプレッシャーをかけ続けることができたし、ハーフタイムで4点リードされていたとはいえ、もちろん逆転は可能だと思っていた」
そんなピーター・スローン ヘッドコーチの言葉どおり、近鉄は後半4分にLOルア・ロコツイがトライを奪って逆転に成功する。

一気に勢いに乗るかと思われたが、直後にSH金哲元が、相手ボールを故意に殺してシンビン退場。
試合の流れをつかみかけていた局面だっただけに、結果的にこのやや軽率なプレーは近鉄には痛かった。
「ひとり少ない状態で戦わなければいけないわけだし、当然影響はあった」(近鉄FLトンプソンルーク主将)

ひとり多くなったサニックスは、10分に途中出場していたHO永下安武のトライで三たびリード。
さらに22分には、例によって後半投入されていた切り札WTBカーン・ヘスケスが4試合ぶりにトライを奪って、リードを広げた。
近鉄も24分に、直前のヘスケスのトライの起点となるノックオンをおかしたCTBイエロメが、「自分のミスは自分で取り返す」とばかりに再びパワフルな走りを見せつけて4点差に追い上げ、得意の逆転勝ちモードに。
最後の10分間は近鉄がサニックスゴール前に攻め込むシーンが続き、瀬戸内海を渡って、徳島市球技場に駆けつけていた近鉄ファンの歓声も一段と高くなったが、「攻め込まれても、みんな落ち着いて、自分たちがやるべきことわかっていた」(FL管藤友主将)というサニックスDFを打ち破ることができず、この日ばかりは『近鉄特急・大逆転号』も不発のまま、試合は終了した。

トップ4へのチャレンジ権を得たかっこうのサニックスは、次節、三洋電機を破って勢いに乗るサントリーと沖縄で対戦する。
「ここのところ、ゴール前で簡単にトライを与えてしまっていたが、今日は粘れた。選手たちは練習でやってきたことを生かしてくれたと思う」(藤井雄一郎監督)
粘りのDFから、チャンスには一気にトライを狙いにいく独自のスタイルで、「チャレンジする気持ちを前面に出して、プライドを持って戦う」(SO小野)サニックスの挑戦はまだまだ続く。

(text by 出村謙知)

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後半21分、近鉄DFを引きずるようにして右隅に決勝トライを決めるサニックスWTBヘスケス(左から2人目)
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)
粘りのDFでボールを獲得した後はどんどんボールをつないでトライを狙うスタイルで次節サントリーにチャレンジ(写真はPR申)
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)
CTBイエロメの2トライなどで追い上げた近鉄だが、今回はあと一歩で逆転勝ちならず。ベスト4入りはかなり厳しい状況に
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

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