昨年8月22日の開幕から5ヶ月。
ファーストステージ7節、セカンドステージ7節の計14節に渡るリーグ戦を戦い終えたジャパンラグビー トップリーグ2014-2015がクライマックスを迎える。
プレーオフトーナメント LIXIL CUP 2015セミファイナルに勝ち残ったのは、神戸製鋼コベルコスティーラーズ(セカンドステージ1位=勝ち点29)、パナソニック ワイルドナイツ(同2位=勝ち点29)、東芝ブレイブルーパス(同3位=勝ち点28)、ヤマハ発動機ジュビロ(同4位=勝ち点27)の4チーム。
LIXIL CUP 2015セミファイナルはリーグ戦1位の神戸製鋼 対 同4位のヤマハ発動機(24日 14:00 大阪・近鉄花園ラグビー場)、同2位のパナソニック 対 同3位の東芝(25日 14:00 東京・秩父宮ラグビー場)の対戦カードで行われる。
「キープレーヤーがチームプレーヤーに徹しているのがやっかい。試合に出ている選手は日本人も外国人もみなポテンシャルは高い。間違いなく横綱というイメージ。そういうポテンシャルを持ちながら個が目立たない、素晴らしいチームプレーをしている」
リーグ戦1位通過を果たした神戸製鋼に関して、そう印象を語ったのはヤマハ発動機・清宮克幸監督。
この両チーム、今季は1ヶ月前のセカンドステージ第4節で対戦。神戸製鋼が40-10という大差で勝利を収めている。
ただ、神戸製鋼のギャリー・ゴールド ヘッドコーチは、そのヤマハ発動機戦に関して「今シーズンの中でも最も厳しい試合のひとつだった」と言い、スコア以上に苦戦した印象を持っているようだ。
「(ヤマハ発動機は)とても強いFWパックを持っている。そこをベースにグラウンドを広く使ったラグビーを展開してくる。決定力のあるランナーがボールを前に運び始めると危険」(同HC)
神戸製鋼FL橋本大輝キャプテンは「セットプレーが強く、まずFWで勝負してくる。その相手の強みを消して、しっかりテリトリーを取って、自分たちの得点パターンに持っていきたい」と、対ヤマハ発動機戦のポイントを語る。
一方、神戸製鋼に大敗した後、最後の3節でいずれも勝ち点5を挙げて、8シーズンぶりとなる4強入りを果たしたヤマハ発動機FL三村勇飛丸キャプテンは、「(前回の神戸製鋼との対戦は)いなされた。神戸製鋼戦大敗後、残り3試合、勝ち点5を取らなければトップ4に上がれない状況から強みのFWを生かして毎試合4トライ以上取って勝ってきたことは自信になっている。
これからは1点でも多く取ったほうが勝ち。でも、やっぱりFWで行きたい」と、再び自分たちの強みを前面に出したFW戦真っ向勝負で神戸製鋼に挑むことを宣言する。
前回の対戦こそ大敗したものの、サントリーサンゴリアス時代も含め「神戸製鋼に対して相性がいい」と語る清宮監督は「トーナメントは前回負けているほうが楽。勝ったチームは次の試合で変われない。こちらは変われる。常に勝負ごとはそういうもの」と、チャレンジャーとして臨める精神的な優位性も強調。
一方の神戸製鋼としても、「ちょうど、20年前の先週末、震災があった。苦しんでいる人たち、悲しんでいる人たちに、いいニュースを届けたい。神戸の人たちにみんな花園に来てもらい、大きなセレブレーションをしたい。我々にはそういう使命もある」(ゴールドHC)と、やはり特別に高いモチベーションで臨む試合となるだけに、どこまでヒートアップするかわからない激しい内容の一戦が期待できそうだ。
パナソニックが8季連続8回目(三洋電機時代を含む)で東芝が9季連続9回目。
共にプレーオフでの戦い方を知り尽くしているチーム同士の対戦だが、今季のリーグ戦では2度対戦していずれも東芝が快勝している(39-26=ファーストステージ第1節、33-13=セカンドステージ第2節)。
「今季、東芝には2戦して2回負けている。優勝どうのこうの抜きに、東芝に1回くらいは勝っておきたい」
パナソニックHO堀江翔太キャプテンはディフェンディングチャンピオンとしてタイトルを守ること以上に、ライバルにやられっぱなしでシーズン終えるわけにはいかないというリベンジの思いを強調。
セカンドステージ第6節まで神戸製鋼に勝ち点5差をつけて首位を走っていたパナソニックだが、最終節でヤマハ発動機に敗れて同ステージ2位となった点に関しても同主将は「むしろ引き締まっていい」と、プラス材料として捉えている。
ロビー・ディーンズ監督も「(最終節での敗戦は)絶対必要なものではなかったが、チームがショックを受けているようなことはない。むしろ、プレーオフ前に厳しい試合ができたので、いい準備になった」と、同意見だ。
逆に、昨季の覇者にリーグ戦で2連勝したことに関して東芝の冨岡鉄平ヘッドコーチは「(精神的には)むしろ、邪魔」と率直に漏らす。
やはり、負けているほうがチャンレンジャー精神を発揮しやすいということなのだろう。
「ただ、リーグ戦で勝っていなければ、我々はこのプレーオフにたどり着けていなかったので。そういう意味では、もちろん我々のほうがチャレンジャー。向こうはチャレンジャーと言っても、実際にはチャレンジャーではない。ディフェンディングチャンピオンなんだから。
ディフェンディングチャンピオンで勝つのは本当に難しい。もう1個上に行かないと勝てないから。そういうメンタリティをチームで共有してこれるかどうか。
我々はチャンレンジャーなので、パナさんよりもモチベーションを上げやすい」(同HC)
昨季は今季とは逆にリーグ戦でパナソニックが東芝に2連勝。
「同じ相手に3回負ける訳にはいかない」(LO大野均)と、東芝が高いモチベーションで臨んだセミファイナルでもパナソニックが55-15という大差で完勝している。
そういう意味では、東芝にとっても2年越しのリベンジ戦という側面があるのは確か。
「ブレイクダウン、セット、コンタクトエリアがキーになってくる。そこで上回れるか」(パナソニックHO堀江主将)
「大事になるのは総じてワンオンワンの部分。そこで負けているようでは、我々がしたいアタックも、パナソニックがしてくるアタックを止めることもできない」(東芝SO/CTB森田佳寿主将)
両主将が試合のポイントに挙げる通り、まずは最もラグビーらしい部分と言っていいFWを中心としたフィジカルコンテストでどちらが優位に立てるかが試合の流れにつながっていくことは間違いなさそうだ。
text by Kenji Demura