プレーオフトーナメント LIXIL CUP 2015ファイナル見どころ(2)

プレーオフトーナメント LIXIL CUP 2015

ジャパンラグビー トップリーグ プレーオフトーナメント
LIXIL CUP 2015
ファイナルプレビュー【2】<直前情報>

ヤマハ発動機ジュビロ vs パナソニック ワイルドナイツ
2月1日(日)14:00 東京・秩父宮ラグビー場
プレビュー

FW戦で優位に立ちたいヤマハ発動機
接点とDFで圧力かけたいパナソニック

1月24、25日に行われたLIXIL CUP 2015 セミファイナルを勝ち上がって同ファイナルに進出したのは2季連続3度目のトップリーグタイトルを目指すパナソニック ワイルドナイツと初優勝を狙うヤマハ発動機ジュビロ。

今季、両チームの直接対決では2戦して1勝1敗。
昨年の9月6日、ファーストステージ第3節では、パナソニックが14-9と接戦をものにし、記憶に新しい今年1月11日のセカンドステージ最終節ではヤマハ発動機が26-18で快勝している。

成長著しいヤマハ発動機HO日野はパナソニックの対面である堀江を凌駕する活躍を見せてチームを優勝に導けるか

「リーグ戦では1勝1敗だから、勝った方がチャンピオンに相応しいということを証明する試合になる」
パナソニックのロビー・ディーンズ監督は両者の立場がイコールであることを強調するが、ヤマハ発動機の清宮克幸監督の見解はやや異なる。
「相手はまぎれもないチャンピオンチーム。
前回の対戦ではプレーオフでヤマハと当たることを考えながら戦っていたと思う。前回とは比較にならないプレッシャーをいろんな面でかけてくるはずだ」

確かに、最終節でディフェンディングチャンピオンから4トライを挙げて勝たなければいけなかったヤマハ発動機と、すでにLIXIL CUP 2015進出を決め、しかも勝ち点1を加えるだけでリーグ戦首位通過も決まる状況だった前年王者パナソニックでは、3週間前の直接対決時のモチベーションが違ったものであった可能性は否めない。
そういう意味でも、前回の対戦で勝ったとはいえ、初のトップリーグ制覇を目指すヤマハ発動機が「チャレンジャー」であることを否定する人はいないだろう。

それでも、清宮監督は「自分たちが勝っている部分も確実にある」とも語る。
「セットプレーではヤマハが上回っている。その強みをしっかり出していく」ことがポイントとなることを隠さない。
FL三村勇飛丸主将も「一番上回っているのはスクラム、モールといったFWのプレー」と、指揮官と同意見だ。
その一方で、同主将は「自分たちのミスにも気をつけないといけないし、ターンオーバーされた時のリアクションの速さも意識」するなど、攻守の切り替えの部分で圧倒的な成熟度を見せるパナソニックの強みをいかに出させないかもポイントだと冷静に分析する。

一方、パナソニックのHO堀江翔太主将は前回のヤマハ発動機に対する敗戦をふまえて「ブレイクダウンとキープレーヤーを押さえるようにディフェンスでしっかりプレッシャーかけていく」ことをポイントに挙げる。
また、ロビー・ディーンズ監督は「チャンスをものにした方が勝つことになる」と、チャンスに取り切る力が勝負を左右するという見解を示す。

ポジションごとの1対1対決も注目

ヤマハ発動機が強力なセットプレーで主導権を握るのか、はたまたパナソニックがブレイクダウンを制し、ディフェンスからのターンオーバーでチャンスに取り切るのか。
キーエリアごと、ポジションごとに楽しみなワン・オン・ワン対決が溢れているのも、今回のファイナルの特徴と言ってもいいかもしれない。

「ほとんどメンバーが変わらないでシーズン通して乗り切ってきている。層は薄いが、伸びしろも一番ある」(清宮監督)というヤマハ発動機の象徴的な存在と言っていいのが、HO日野剛志。
3年目の今季、リーグ戦14試合にLIXIL CUP 2015セミファイナルを加えた全15試合で先発HOを務め、ヤマハ発動機のセットプレーの屋台骨を支えてきた。
「ヤマハのHOの責任」と本人も強く意識している通り、セットの安定こそ一番の仕事だが、その一方で中学まではSHやSOのポジションでもプレーしていたという経験を生かしたボールを持った時のプレーも秀逸。
そういう意味では、「目標にしていた」と語る、ファイナルで対面となるパナソニックのHO堀江主将とも相通じるボールを持った時のプレーにもセンスを感じさせるプレーヤーだ。

「(パナソニック堀江主将は)相手の核の選手なので、最高の舞台で自分が同等なパフォーマンスができれば、こちらの勝利が近づく」と、対面と対等以上のプレーぶりを見せてチームを勝利に導くと宣言。
前回の対戦では先発から外れていたパナソニックの堀江主将が先発復帰することで「スクラムも大丈夫」と、相馬朋和スクラムコーチは太鼓判を押すが、「ひと頃の僕のようなプレーをしている。ジャパンにも入ってきてもらいたい」と日野に対する印象を語る堀江が貫禄を見せるのか、若武者が食らいつくのか注目だ。

パナソニックのDFという意味では、セミファイナルでもタックル数がチーム最多を誇ったCTB林泰基がキープレーヤーのひとりであることも確かだろう。
セミファイナルの神戸製鋼戦で圧倒的なラインブレイク力を見せたヤマハ発動機CTBマレ・サウを「ワークレート高く、がむしゃらにいくだけ」という林が止められるかどうか。

「大田尾さん(竜彦=ヤマハ発動機SO)やゴロー(五郎丸歩=同FB)のキックでしっかり前に出て敵陣でプレーする」(パナソニック堀江主将)

「(パナソニックSOベリック・バーンズは)こちらが自陣でペナルティーをしてしまえば、自動的に3点を失ってしまうような素晴らしいキッカー。リスクマネージメントを考えていかないといけない」(ヤマハ発動機・清宮監督)

そんなふうに双方が警戒するように、お互いのキッカーがどう試合をコントロールして、どうスーパーブーツぶりを見せるかも試合の流れに大きく影響を与えることは間違いない。
「極力、逃げのキックは蹴らないようにしないと。22m内ではスタンドにしっかり入れたり、相手がカウンターできないように工夫していく」(大田尾)

そして、共にたびたび決定的な仕事をしてみせる両WTBのワン・オン・ワンも得点に直結する可能性もあるだけに、目が離せない。
セミファイナルの東芝戦で「その場で」判断して、自ら仕掛けたSOバーンズに寄っていってボールをもらい、40mを快走して流れを決定づけるトライを奪ったパナソニックWTB山田章仁は「コミュニケーションを取れるようになったことで、自分の中の引き出しから、いろんな写真を取り出せるようになった」と、プレーの幅が広がったことを強調。
一方、前回の直接対決でヤマハ発動機の4強入りを決定づけるパスインターセプトによるトライを決めたWTB伊東力もHO日野同様、3年目の今季、14試合で先発出場を果たすなど、完全にライトブルーの14番を自分のものにした。
「山田選手を調子づかせると、相手は乗ってくる」と、まずは対面のスターWTBを止めることを第一の仕事としながらも、「自分の間合いがある。1対1は得意」というアタック面でもビッグプレーを狙う。

その他、日本代表同士のマッチアップとなる、NO8のホラニ龍コリニアシ(パナソニック)対堀江恭佑(ヤマハ発動機)、同じ日本代表同士かつ同期で出身も同じ京都というSH田中史朗(パナソニック)対矢富勇毅(ヤマハ発動機)など、ポジションごとにも見どころの多いLIXIL CUP 2015 ファイナルは2月1日、東京・秩父宮ラグビー場で14時にキックオフされる。

text by Kenji Demura

セカンドステージのヤマハ発動機戦では先発しなかったパナソニックHO堀江主将も万全の状態でファイナルに臨む
パナソニックBKのキーマンはやはりこの人。ヤマハ発動機としてはいかにSOバーンズに圧力をかけていくかもポイントか
両チームのWTBの決定力ある走りも見物。ヤマハ発動機の新鋭・伊東はパナソニック山田との1対1に勝てるか