2月1日、東京・秩父宮ラグビー場で「ジャパンラグビー トップリーグ プレーオフトーナメント LIXIL CUP 2015」ファイナルが行われる。
ファーストステージ7節、セカンドステージ7節の計14節、さらに1月24、25日に行われたプレーオフトーナメントLIXIL CUP 2015 セミファイナルを経て、同ファイナルに勝ち残ったのは、2連覇を目指すディフェンディングチャンピオンのパナソニック ワイルドナイツと初のトップリーグ制覇を狙うヤマハ発動機ジュビロ。
共にセミファイナルではベストパフォーマンスと言っていい内容で快勝してのファイナル進出だけに、日本最高峰を謳うトップリーグのラストステージに相応しい熱戦が期待できそうだ。
「ヤマハでの自分のベストパフォーマンス」
リーグ戦を首位通過した神戸製鋼コベルコスティーラーズとの対戦となったセミファイナルでの自らのプレーぶりをそう表現したのはCTBマレ・サウ。
確かに、ボールを持つたびにラインブレイクを重ねて、神戸製鋼ディフェンスをズタズタにした、サウの走りは強烈だった。
ただ、サウだけではなく、ファーストスクラムを押し込んでペナルティキックを勝ち取ったFW陣をはじめ、先制トライを奪ったSH矢富勇毅、サウに負けず劣らずシャープな走りで相手ディフェンスを翻弄した中園真司、伊藤力の両WTB、試合終了4分前にダメ押し過ぎる6トライを導くキックパスなど常に冷静なゲームメークを見せたSO大田尾竜彦など、ヤマハ発動機の先発15人の多くが神戸製鋼戦でベストパフォーマンスに近い働きぶりを見せたのも確かだった。
「プレーオフという最高の舞台で、一度負けている相手にリベンジする」(FL三村勇飛丸主将)
間違いなく、神戸製鋼とのセミファイナルは、ヤマハ発動機にとって最高のモチベーションで戦える舞台だった。
昨年の12月21日、セカンドステージ第4節。ヤマハ発動機は神戸製鋼に5トライを許して、「これくらい気持ち良くやられたら悔しくも何ともない」(清宮克幸監督)という完敗を喫した(10-40)。
その神戸製鋼に対する完敗によって、LIXIL CUP 2015へ勝ち進むためには残り3試合で勝ち点5を重ねることが至上命令となったヤマハ発動機でもあったが、トヨタ自動車ヴェルブリッツ、東芝ブレイブルーパス、パナソニック ワイルドナイツという強豪との3連戦で見事に計勝ち点15を挙げるパーフェクトフィニッシュを見せて、4強入りに成功した。
わずかに勝ち点1だけ一昨季の王者サントリーサンゴリアスを上回っての4位となったヤマハ発動機にとって、現行のトップ4によるプレーオフTファイナル進出は史上初。
しかも、セミファイナルの対戦相手が1ヶ月前に完敗を喫した神戸製鋼。
「我々は前回の対戦からすべてが変わった」(同監督)という敗者の利点を最大限生かすかたちで最高のリベンジを成し遂げた。
「シーズン終盤、自分たちの武器である五郎丸さん(歩=FB)のキックに頼らず、FW中心に自分たちの力を出し切るということでチームはまとまった」(三村主将)というヤマハ発動機がいま最も勢いに乗っているチームであることは間違いないだろう。
ただし、LIXIL CUP 2015ファイナルで対戦するパナソニックはわずか3週間前、セカンドステージ最終節で勝ち切った相手。
「彼らのヤマハに対する戦い方が変わってくる。そこが難しい」
清宮監督もそう認めるとおり、いかにチャレンジャー精神を維持しながら、「セットプレーと接点で勝つ」(三村主将)というヤマハ発動機らしさを前面に出した戦いで優位に立てるかが初の頂点穫りのキーになりそうだ。
一方のパナソニックのセミファイナルにおけるキーワードも「リベンジ」だった。
「今季、東芝には2戦して2回負けている。優勝どうのこうの抜きに、東芝に1回くらいは勝っておきたい」
HO堀江翔太主将の言葉どおり、セミファイナルで対戦した東芝ブレイブルーパスに対して、ファーストステージ開幕戦(8月22日、東芝 39-26 パナソニック)、そしてセカンドステージ第2節(12月6日、東芝 33-13 パナソニック)の2度の対戦とも完敗していた。
「まずはコンタクトエリアでの攻防がポイントになる」
セミファイナルを前にロビー・ディーンズ監督はそう語っていたが、まさしくその重点ポイントでパナソニックは東芝を圧倒。
「ボールを持っていく選手を止められて、モールも止められて、スクラムも優位に組ませてもらえなかった」
東芝のFLリーチ マイケル ゲームキャプテンがそう脱帽するしかなかったコンタクトエリアでの優位性を生かしてボールを奪った後は、選手それぞれが「その場で」(WTB山田章仁)判断しながら縦横無尽に攻め続けて、計5トライ。
圧倒的な完成度を見せつけて、V2に王手をかけた。
セカンドステージ最終節で敗れたことでリーグ戦首位通過を逃したパナソニックだが、ヤマハ発動機に対してはファーストステージで勝っていること(14-9)も影響してか、セミファイナル前の「東芝へのリベンジ」ほどの雰囲気はそれほど伝わってこない。
「リーグ戦では1勝1敗だから、勝った方がチャンピオンに相応しいことを証明する試合になる」(ディーンズ監督)
「(ヤマハ発動機は)強いランナーでどんどん来るし、大田尾さん(竜彦=SO)やゴロー(五郎丸歩=FB)のキックでしっかり前に出て敵陣でプレーする。スクラムも強い。目の前の判断をしっかりしながら、自分たちの戦い方もマイナーチェンジしていくことが大切になる」(堀江主将)
セミファイナルで見せたように、相手の強みをしっかり抑えるパナソニックらしい戦いができれば自ずと2連覇は近づいてくる。
text by Kenji Demura